プレゼンが伝わらないのは、原因がある

「トップが何度も大事な話をしているのに、社員がぜんぜん覚えてくれない」
「会見をしても、こちらのメッセージをメディアが記事にしてくれない」

こんな広報さんのお悩みをよくうかがいます。

これは理由があります。
人は自分が見たいもの、聞きたいものしか覚えてくれません。
覚えられる許容量が限られているからです。

人が同時に覚えられるのは最大7つまで。
しかもたった20秒で忘れると言われています。

経営学者・野田稔氏の著書「組織論再入門」にて、人の特性に関する論述があったのでご紹介します。

・・・・以下、引用・・・・

人間はいらない情報をカットして、自分が大切だと思った情報だけを意図的に入れることができる。ただ、逆に言うと本当に大切なものもカットしてしまう可能性があるということになる。
(中略)
作業記憶はフィルタリングされた情報が入ってくるだけでなく、許容量が限られている。記憶の単位はチャンクと言う。これはひとかたまりの意味のある文字列のようなものである。ハーバート・サイモンは、人の作業記憶は7プラス・マイナス2チャンクしかないと言う。5つから9つ覚えておくと、作業台が一杯になる状態である。
(中略)
保持能力は20秒、あまり褒められたレベルの話しではない。
(中略)
インタビュアーは、ゲストの答えを聞きながら、次の質問を考えている。相手の言っていることの中で、どうせこんなものは聞かなくてもいいという時に考える。相手の話を予測し、「この話は聞かなくてもいける」と選択的な記憶を使っているのだ。ひっかかる単語以外は聞き流し、もっとひどいと、今日行くレストランのことまで考えている。

・・・・以上、引用・・・・

しかし多くの人が「ちゃんと覚えてもらおう」と考えて、大量の情報を伝えようとします。
これはまったく逆効果。

もしプレゼンで確実に覚えて帰ってもらいたければ、やるべきことは1つだけ。

「自分が伝えたくて、自分しか話せない、聴き手が欲しがっている情報」

これをできるだけ早く伝えることです。

情報が多いほど、かえって伝わらないということです。
ビジネスプレゼンでは、資料は勇気をもって徹底的に絞りこむこと。
そうすれば、より確実にメッセージが伝わるようになるのです。

 

プレゼンを爆速で上達させる方法

「プレゼンが出来るだけ速く上達する方法はありますか?」
こんな質問を受けることがあります。

人前で自信を持って話せるようになるまでは、ある程度の時間が必要ですが、もしも爆速で上達したければ、1つだけ方法があります。
それは、本番の場数を踏むこと。
厳しい聴衆の前で話せば、さらに加速します。

「厳しい聴衆を前に、本番に臨んだ回数がどれだけ多いか」で、上達スピードに差がつくのです。

厳しい聴き手を相手に本番の数をこなすので、当然、失敗する回数も多くなります。できれば恥をかきたくないというのが人情というもの。加えて人から厳しい評価を下され、落ち込むこともあります。

しかし、一人で部屋にこもって長時間マジメに練習するだけでは、上達のスピードはなかなか上がりません。

最近、企業のマネジャーさんとお話した時、「部下がなかなかお客さんのところに行きたがらない」とぼやいておられました。自信が出るまで作りこみ、じっくりと完璧なものが出来てからお客さんのところに行きたいのだとか。しかし、他人はこちらの想像とは全く違う考えをしていることも多いものです。せっかく時間をかけて作り込んだものが的外れということも少なくありません。
もちろん、まったくダメなものを披露するのは論外ですが、ある程度まで出来たら、思い切って「人の目に晒してしまう」ことが大切なのです。
批評され、お客さんがどう感じたか知り、「どうすればもっと良くなるか」を考えながら改善していくことが欠かせません。

「ハーバード・ビジネス・レビュー 2015年5月号」にピアニスト・作曲家の松永貴志さんの記事が掲載されていました。松永さんは、音大にも行かず独学でピアノを勉強した方です。

・・・・(以下、引用)・・・・

ほとんど独学だ。派閥もない。楽しいという思いだけを原動力に、自由な気持ちで、ただひたすら鍵盤と向き合い続けた。
独学だからこそ練習にはさまざまな工夫を施した。道場破りのようにライブハウスに飛び込んでは、「1曲だけ弾かせてください」とお願いして回った時期もあった。数え切れないほどの門前払いも受けたが、常に誰かの視線を感じる環境で演奏したことで、圧倒的なスピードで上達しているのを実感した。

・・・・(以上、引用)・・・・

プレゼンも同じです。
より厳しい聴衆の洗礼を受けて磨かれるからこそ、上達していくものなのです。

 

前置きが長いプレゼンは、やめよう

「え〜、私どもの事業でございますが、こちらのグラフを見ていただいても分かるとおり、北米、アジアでの売上を合わせますと、グループ総売上〇兆円、営業利益〇千億円と大変大きな成長をさせていただくことがおかげさまでできました。感謝申し上げます。さて、今日本国内では…」

新商品の記者発表会に伺ったときのことです。プレゼンテーションの冒頭で会社の業績説明が延々と続きました。
商品の紹介はいつまでたっても出てきません。商品についてやっと話し始めたのが10分後。ついしびれを切らしてしまいました。

企業にとっては業績が大事なことはよく分かります。しかし、聴き手は新商品発表があるという案内をもらって会場に来ています。速報を上げるために、プレゼンを聴きながらその場でパソコンで記事を書く記者も大勢います。

こちらのコラムでも書きましたが、人の集中力は、
1分…100%、3分…80%、5分…50%、10分…35%、20分…25%と下がっていきます。

会見の目的は、聴き手である記者に、出来る限り多くの記事を書いてもらうことです。聴き手が集中力が最も高い時間帯に、本題から話すべきです。良い内容の記事を数多く出してもらいたければ、単刀直入にテーマから入ることが最も効果的です。

結局、会見後の記事はプレスリリースのコピペのようなものが数件に留まりました。
しかしこの会見は例外ではありません。このように本テーマから入らないプレゼンは、世の中にはとても多いのです。

プレゼンをすると決まったら、最初に考えるべきは「プレゼンをする目的は何か」
これをまず考え抜いてみてください。
プレゼンは、テーマから最速で入ることで、最も高いアウトプットが出せるのです。

 

ぶれないミッションがプレゼンを骨太にする

 

「すごくプレゼンの練習したのに、スルーされてしまうんです」

プレゼン技術は努力して上手になったのに、説得力が向上しないというお悩みをよく聞きます。

じつは、ある大事なことがボヤけてしまっているために、プレゼンの説得力が上がらないことがとても多いのです。

それは「ミッション」です。

ビジネスのプレゼンは、必ず企業のミッションが土台にあります。そこを忘れてしまい、製品の機能性ばかりを強調しているプレゼンがとても多いのです。

ミッションが明確なプレゼンは、たとえ話し下手でも内容が骨太な印象になり、人の心を動かします。

先日、取材をさせていただいたパタゴニア・辻井隆行社長のプレゼンは、ミッションが明確な上、そのミッションをありとあらゆるシーンで首尾一貫しているものでした。

パタゴニアのミッションは「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というものです。プレゼン内容はもちろんのこと、会場は緑に囲まれた環境で、提供する商品はすべてオーガニック・再生可能なもので統一していました。

ミッションとは、いわばプレゼンに魂を入れるのと同じです。

プレゼンでは、技術を学んだ上で、ミッションが明確になっているか今一度内容構成を見直してみると、説得力が格段に高まると思います。

宣伝会議デジタルマガジン8月号にパタゴニア・辻井隆行社長の「プレゼン力診断」執筆記事掲載いただきました。
ご興味ある方はぜひご覧下さい。

パタゴニア日本支社長のプレゼン「首尾一貫したブランドミッションを体現」

 

プレゼン舞台に歩いて出るための、3つのコツ

 

プレゼンの舞台に出てくる様子は意外に目立つものです。

なぜなら聴き手は「どんな話しになるのだろうか」「この人はどんな人なのだろうか」と、集中して見ているからです。

聴き手の集中力は、あくまで感覚的なものですが、

1分…100%、3分…80%、5分…50%、10分…35%、20分…25%と下がっていきます。

だから、舞台に現れる冒頭というのは、最も聴き手の集中力が高い時間帯なのです。

その大事な冒頭で、落ち着きなく出てきたり、猫背でやる気が感じられなかったり、変に虚勢を張りすぎていたりすると、聴き手に与える印象が悪くなり、聞いてもらえません。もちろん耳では聞いていると思いますが、心から聞いてみようという気持ちが下がってしまうのです。

ちょうどよい加減で歩いてでるには、コツがあります。

(1)心拍数と同じ速さで歩く

歩く速度が決められず、ノソノソ歩いてしまったり、逆に早足すぎたりすることがよくあります。直前に自分の心拍数を測ってその速さに合わせてでると丁度良い歩調で出られます。心拍数が遅い人も、はやい人も、その人らしく出られます。

(2)人混みを歩くときの感覚

意識し過ぎて不自然になってしまうケースです。硬くなってしまい左足と左手が同時に動いたりするケースも見られます。この原因は、自分に意識が向きすぎているためです。
こういうときは、駅の人混みを歩くときの感覚を思い出すとうまく行きます。
人混みでは向こうから歩いてくる人を避けながら歩きますよね。そのときは意識が前から歩いてくる人に向きます。
普段、駅を歩くときに、プレゼンのときはこう歩こうと考えながら試すと、本番でも自然に歩けるようになります。

(3)「どう話そうかな」と考えながら出る

ちょっと上級者向き。歩くことを意識するのではなく、話すことが決まっていたとしても「どうやって話そうかな」と思索しながら出る。もちろん「話す事はバッチリ決まっている」のが大前提です。これが出来ると、自然で、かつプレゼン慣れして見えます。

今日は、3つのコツをお伝えしました。

ぜひ普段から「今度のプレゼンはどうやって出ようかな」と考えながら行動してみてください。

 

プレゼンが素晴らしく見える最後の決め手

 

プレゼンが素晴らしい女性は誰ですか?」

女性から、こういう質問を受けることがあります。

もし一人挙げるとすれば、それはIMF専務理事・クリスティーヌ・ラガルドさんです。
(※2019年7月3日加筆:このコラムを書いた翌日2019年7月2日、ラガルドさんは欧州中央銀行(ECB)総裁に就任しています)

ラガルドさんの男性に媚びることがなく、だからといって女性らしさを失わないふるまいは、社会で活動していこうとする女性の良いお手本となる存在です。

凄いのは、低い声で、しっかりと迷い無く言葉を発するところ。ラガルドさんご自身が、腹の底から信じているので言葉に力が宿り、聴き手の不安が消え、「大丈夫だ、出来る」と思えてきます。

ただ、言葉だけではありません。

まず、ファッションセンスも見事です。黒やグレーのスーツでも色味のあるスカーフをあしらい、顔周りを華やかに演出をしています。さりげなくフランスのブランド、ルイ・ヴィトンやエルメスのバーキンを持っているのを見ると、こういう方こそふさわしいと思ってしまいます。

加えて、姿勢が良いのも、素敵に見えるポイントです。ラガルドさんは、1971年にシンクロナイズドスイミングのフランス選手権で二位を獲得した経歴の持ち主です。だから姿勢が良いのでしょう。

そして大きな強みになるのは、シンクロを高い領域まで究めた経験ではないでしょうか?これが彼女に黙っていても伝わる品格や教養を与えています。

高い技術を持つピアニストである米国の政治家、コンドリーザ・ライスさんも同様でしょう。

「日経ビジネス」2014.12.29 No.1772「遺言」にて元首相の細川護煕さんがが興味深いことをおっしゃっていましたのでご紹介します。

・・・・(以下、引用)・・・・

教養は数値でははかれませんが、重要なものです。トルーマンは原爆投下時の米大統領ですが、英国のチャーチルは当初、彼を軽蔑していて敬称に「ミスター」を使っていた。それがある晩餐会後にトルーマンは得意なピアノを披露し、それ以降「プレジデント」に変えたそうです。
トルーマンはピアニストを目指すほどの腕前。チャーチルもそれを解して、敬意を示したんですね。
ピアノでも本でも何だっていい。にじみ出る教養は人を引き付けます。日本では政治家も経営者もハウツーものばかり読んで、そこが不得意ですね。でもこれからはそういう人が
必要でしょう。

・・・・(以上、引用)・・・・

教養とは、長い経験と年月を経て蓄積され、内側からにじみ出るもの。それがプレゼンでは最後の決め手となるのです。

環境がプレゼンの満足度を落とす理由

 

「会場が寒かった」「会場が暑苦しかった」

こんなコメントを聞くことがあります。

実は、プレゼン会場の環境は、満足度にダイレクトに関係します。

今日は、プレゼンでお客様をお招きするときの、環境についてお伝えいたします。

プレゼンは、聴き手の「知覚」でも判断されます。
知覚とは、人の主観的な判断によるものです。
つまり、寒すぎたり、暑すぎたりと環境が良くないと判断した場合、いくらプレゼンが良くても満足度も確実に下がってしまうのです。
他には、周囲条件である、温度、空気環境、騒音、音楽、匂いなども含まれますので注意が必要です。

私が、ある屋外イベントを取材したときのことです。

当日は2月半ば。最低気温1.8度となっており、特に寒さの厳しい日でした。加えて、場所が高架下で日陰。体感温度は1度くらいだったのではないでしょうか?屋外との情報も事前に知らされていなかったため、その場であわてて携帯用カイロを買いに走りました。
イベントでタレントさんが、こたつに入って熱燗を飲んでいるのを見ると余計に寒さが身に染みます。

取材では、寒さはもちろんですが、2月の極寒の時期に「なぜ屋外開催するのか?」という意図が明確に伝わってこなかったところも残念な点です。
これは想定ですが、屋外開催でタレントを呼ぶことで、見物客を集めようという狙いが主催側にあったかと思います。しかし日陰で寒いために、それほど足を止めて見る人は多くなかったような印象です。

タレントさんが、面白いネタをいくら話してもまったくウケず、しまいには「すみません、こんなにウケなくて…」と謝っていました。あまりに寒いと、人は笑う余裕がなくなるのだなということがよく分かった会見でした。

寒さというと、これからの季節は冷房の空調コントロールも難しい季節になってきますね。

ぜひ、プレゼンだけではなく、知覚される環境についても注力していただくことをおすすめします。

 

 

プレゼンの空気を作る言語の扱い方

「空気を読む方法はありますか?」

という質問をよくいただきます。

プレゼンでは、あえて空気を読んではいけません。

なぜなら、話し手が空気を読んで話してしまうと、主張がブレて説得力が落ちるからです。

プレゼンは、時間をかけてジワジワとコミュニケーションするものではありません。プレゼンは一回限り。しかも限られた時間で伝え、聞いた人が動くことが目的です。空気を読む行為は、主張が明確に伝わらないというリスクが伴います。

つまり、空気は読むものではなく、「作るもの」なのです。

物事の流れは「空気」で左右されます。

何度も協議を重ねてきたのに、ある「空気」のもと、突然計画をひっくり返されたり、しつこく努力しても全く芽が出なかったことが、ある「空気」をきっかけに認知されたりするという経験をされた方も多いのではないでしょうか。

今日は、プレゼンの空気を作る上で有効な1つのテクニックをお伝えしましょう。

「コードスイッチ」です。

通常は「です・ます」で話すことが多いかと思います。そこに、「だ・である」または「体言止め」(名詞や代名詞などで終わること)を混ぜながら話すことです。

ここで冷泉彰彦氏の著書「『関係の空気』『場の空気』」より引用します。

元首相である小泉純一郎という人の、「空気」の扱いでは天才的で、構造改革、抵抗勢力との抗争、拉致問題の使い方、靖国問題、郵政民営化、日米関係、イラク派兵、何から何まで「空気」を巧みに操って政治生命を保ってきた。

「いいですか。改革っていうのは重要なんだ。わかりますか。この選挙の結果で日本の将来が決まるんです。大変だ。・・・」という言葉づかいである。

これは「です・ます」と「だ・である」を混ぜることで、硬い感じと柔らかい感じ、間接的なイメージを直接的なイメージといったメリハリをつけて言語表現としては、反論を許さないとでもいうような一方的なものとした。

ビジネスであれば、

「よろしいですか。今回の新規事業はなんとしてでも成功させなくてはいけない。わかりますか。我が社の社運をかけているんです。このままでは将来はない」

というような話し方をすることもできるでしょう。

空気は読むものではなく、作るもの。
空気を作るための方法の1つとして、コードスイッチを用いてみることをお試し下さい。

 

アイコンタクトをすればプレゼンが上手くいく理由

「アイコンタクトをとりたいけど、緊張してお客さんと目を合わせるなんてとんでもない!」

そんなお悩みをよくうかがいます。

じつは緊張していても、プレゼンを成功させるためにはアイコンタクトが必須なのです。

ターゲットは、話し手に目線を投げかけてくれている方や、うなずいて熱心に聞いてくださっている方です。「そんな人いないよ」と思うかもしれませんが、私の経験では、そういう良い方は必ずいらっしゃいます。初めて聞く話しにワクワクしたり、ドキドキしながら聞いてくれていることもあるんですよ。

マラソンで「ラビット」と呼ばれる人がいるのをご存知でしょうか?
レース前半でペースメーカーの役割をする人です。プレゼンでも、ラビットになってくれる方を見つけて話しかけることで、リズム感がつかめて流れを自分のペースに引き入れることができます。

さらに激しい緊張を和らげる効果も期待できます。たとえばカラオケで歌うときに、仲間に手拍子を打ってもらったり、ニコニコしながら歌のリズムに合わせて一緒に身体をゆすってもらうと歌いやすくなりますよね。それと同じです。

私が今まで見てきた素晴らしいプレゼンをする方々は、必ずアイコンタクトを取っていました。
とくに、トップの場合はオフィシャルな記者会見が多いのですが、記者は仕事で来ているのでなかなか温かいアイコンタクトは期待できません。それでも、アイコンタクトする人を探しているトップをたくさん見てきました。

私が今まで経験した中で最もすごいアイコンタクトは、ある製造業のトップのアイコンタクトです。私にギュッと目線を合わせてきて、なんと私を指さしながら「今の会社嫌やろ?ウチに来なさい。今、課長職以上、大募集しとるから!ほら、皆さんも来なさい」。

トップはこの瞬間、場の空気を完全に掌握してしまいました。

もちろん、ここまで出来なくても大丈夫です。

必ずあなたの話しを聞いてくれている人はいます。勇気をもってアイコンタクトを行って自分のペースを作ってみてください。

 

最初の3分ですべてが決まる理由

 

「とにかく会見の印象を良くしたいんですよ」

広報担当者さんからの切実なご相談をいただくことがあります。
会見の印象を良くするために、注意すべき最重要ポイントをお伝えします。

ある有名な外資系企業の発表会に取材に行ったときのことです。

米国本社から役員が来日し、プレゼンを行いました。

プレゼン冒頭での出来事です。
足元を見ると、靴の先がパックリと割れて靴下の先が見えていました。靴を買い換える資金が無いわけではないでしょうから、気にしない性格なのかもしれません。確かにプレゼンは場慣れしたものでしたが、なぜか話すことすべて印象が良くありません。(「まさか米国本社役員が…。話を盛っているのでは」と思われるかもしれませんが、事実です)

逆もあります。
最初の印象が素晴らしいと、その後多少のミスがあっても会見全体の印象が良いのです。

これは”認知的不協和の解消”で説明ができます。
人は、「自分の判断は正しかったのかな?」と、内心不安を抱えています。

例えば、マンションなど高額な買い物をしたとき、「正しい買い物だったのかな?」と内心不安を抱えています。これが認知的不協和です。そして「やはり良い買い物だった」と自分を納得させるために他のマンションの広告を眺めて比較します。これが「認知的不協和の解消」です。人は認知的不協和を解消するために、自分が正しいと証明する理由を探し始めるのです。

プレゼンの聴き手も同じです。
もし最初がダメだと、その後いくら素晴らしいプレゼンをしたとしても、聴き手はダメな理由を探し始めています。もう間に合わないのです。

だから、印象づけるためには、最初が一番大事なのです。人間ですから、長時間のプレゼン全てを完璧にすることはなかなか難しいと思います。でも、最初の3分なら完璧にこなせる可能性は高まります。

つまり、プレゼンの印象を良くしたければ、最初の3分だけは何が何でも「手抜かり無く」行うことです。

 

プレゼン成功のための冒頭3分攻略法

 

プレゼンを成功させるコツがあります
最初の3分を攻略することです。

冒頭の3分は、聴き手が聞くか聞かないか決めるタイミングです。ここを逃してはいけません。聴き手が聞く姿勢になれば、その後も聞いてもらえます。

またプレゼンは、どんな人でも大なり小なり緊張するものです。
緊張する人にとって、冒頭3分を乗り切ることはとても大事なポイントになります。

「手足が震える、声が震える、身体が硬直する」などという極度な緊張は永遠には続きません。大抵は最初の3分がピークです。最初の3分を成功させれば、その後も気持ちが切れずに維持できます。緊張する人は「最初の3分間は、魔の時間」と覚えておいてください。

ではどうすればいいのか?

冒頭の3分だけは、飛行機のオートパイロットと同じように、何があっても話せるようにしておくことです。

冒頭3分をオートパイロット化するための練習方法は以下になります。

(1)冒頭3分はできるだけ自分が話しやすい内容にすること。

(2)自宅でリハーサルするときは、冒頭3分だけはスマホで録画して見直すくらいの準備をしておくと安心です。

(3)冒頭3分を、自宅から駅まで歩きながらしゃべってみることです。意外に話しにくいことが分かります。この歩きしゃべりができるようになれば、どんなプレッシャーがかかる状況になってもオートパイロットで話せるようになります。

いつもいまひとつの出来で悩んでいる方はぜひ、冒頭3分をオートパイロットにしてみてください。

 

首を動かさず話すだけで説得力が上がる理由

 

あるワークショップでのこと。

「首を動かさないで話してみましょう」

という課題に対して、30人中、ほぼ100%の人が首を動かして話してしまいました。

参加者のコメントは、

「首を動かさないと、話せない…」
「え?首を動かしてないつもりだったけど…」

ほとんどの人は、首を動かすことは無意識に「自分のリズムをつくるため」にやっています。意識しなければ、人は無意識に身体がフラフラ揺れたり、首を振ったりしています。
動きは自分のためだけであって、聴き手ためではないのです。

では逆に、意識して頻繁に首を振りながら話してみるとどうなるでしょうか?

落ち着きなく、自信のない印象を受けてしまいます。この人と真剣なビジネスをしたいと思うでしょうか?

じつは、聴き手に対して正面を向き、動かずに姿勢やポーズを決めてみると、圧倒的な自信と説得力が生まれることに気がつきます。

歌舞伎でも、「見得を切る」というのがありますよね。そこに特別な存在感が生まれ、観客は引き込まれるのです。

プレゼンの場合は、首は固定し、手振りで表現していくのが安定感と存在感を感じさせます。

首を動かさずに話すことは、いざやってみると、簡単なようでいて、実行するのはなかなか難しいものです。今まで、いかに自分の話のリズムを作るために首をコクコク振っていたかということに気がつきます。プレゼンで、「意志を持って動かない」ということは、とても大事なことです。無意識に首を振っていることも多いので、ぜひ一度スマホで録画してみることもおすすめします。

 

不機嫌な顔は、しっかり印象に残る

 

10万円の指輪と100万円の指輪が飾ってあったら、「100万円の方が高級」と思う人が多いはずです。人は「高い商品は、高品質」と考えているからです。

だから高級品の値付けにはコツがあります。最初から高い値段にすることです。一度「安物」と思われてしまうと、後から値上げしたら「高い」と思われてしまうのです。
第一印象は大事なのですね。

このように最初に良い印象を与えることは大事ですが、その逆もあります。特にプレゼンでは注意が必要です。

ある年の「行く年来る年」で、名優と言われる俳優のNさんが司会をしていました。
途中で段取りの手違いがあったようです。Nさんは、カメラが向いてないと思い込んでいたのでしょう。「何やってんだよ!」とスタッフに対して怒っている姿がテレビに映りました。しかしある瞬間、Nさんはカメラに撮られていると気がつきました。さすが名優。即座に感じの良い司会者に見事に変身しました。

でもこのときの印象があまりにも強烈で、Nさんが映画やドラマでどんな素晴らしい演技をしていても、「スタッフに怒っていた気難しいNさん」というイメージが蘇ってしまうのです。

これは、私が俳優Nさんに対して、マイナスイメージが印象づけられてしまったためです。

メディアを集めたプレゼンのときも、スタッフの手違いに対して立腹したり不機嫌になる方をよくお見かけします。また、そもそもやる気があまり感じられなかったり、緊張感の無い方もいらっしゃいます。

でもその姿は確実にお客様に強い印象を残しています。そしてその印象をぬぐい去る機会は、なかなかありません。
これってとっても損ですよね。

プレゼンで不機嫌な顔は、強く印象に残ります。気をつけたいですね。

 

誰でも伝わるプレゼン構成のコツ

 

「子供たちにプレゼンする機会が多いのですが、子供でも伝わるコツってありますか?」

3月27日、ITmediaエグゼクティブ様講演の質疑応答で、このような良いご質問いただきました。

解決策は、結論から先に話すことです。

ありがちなのが時系列でお話しすることです。

時系列は話しが長くなりがちで、聴き手は「要は何なのかな?」と思って退屈してしまいます。結局、話しが伝わりません。ですので、ぜひ結論から話してください。冒頭で意図が明確になり聴き手は「聞いてみたい」という姿勢が瞬時にできあがり、話し手も話しやすくなります。

多くのプレゼンは「起承転結」で話しています。
もし多くのプレゼンを「桃太郎」に例えると、よくあるパターンはこうなります。

【起】桃から生まれた桃太郎が大きく育った
【承】村人は鬼ヶ島の鬼にいじめられていた
【転】桃太郎は村娘と恋に落ちたが、心機一転
【結】桃太郎は手下を従え、鬼をやっつけた

特に注意いただきたいのが【転】「桃太郎は村娘と恋に落ちたが、心機一転」の部分です。
もし映画や小説だと美味しいところです。ついつい語りたくなってしまいますが、ここはお客さんにとってはノイズになりやすいのです。

勇気を持って【転】は外して、【結】【承】【起】で話します。

【結】桃太郎は手下を従え、鬼をやっつけた
【承】村人は鬼ヶ島の島の鬼にいじめられていた
【起】桃から生まれた桃太郎が大きく育った

【結】桃太郎は手下を従えて、鬼をやっつけた、から開始して良いのです。

聴き手はウルトラマンだと思いましょう。
ウルトラマンは3分が経過するとカラータイマーが切れて地球をオサラバしなければなりません。聴き手の集中力は、長くても3分しか持ちません。まず結論から入れば、聴き手は聞いてみようかなという姿勢が出来上がり、最後まで集中して聴いてもらえます。

もしビジネスならば、結論・主張から話し、「なぜならば…」と話していくと、聞いてもらえます。

現代のビジネスパーソンは忙しいものです。子供だけではなく、ビジネスでも同じような考え方が必要になると考えます。

 

プレゼンの出来が冒頭15秒で決まる理由

 

プレゼンは、スタートで出来の善し悪しが決まります。

映画や小説は、クライマックスは最後のほうに来るものですが、プレゼンだけは違います。

特に、最初の15秒はゴールデンタイムです。

出だしの15秒は、聴衆が一番興味と関心を持って見ているところです。
ここでしっかりとお客さんのお気持ちをつかんでおく必要があります。
すべってしまったり、つまらないことを話してしまい、一度離れてしまったお客さんの気持ちは二度と取り戻しがききません。

特に危険なのは、「自己紹介」「時事ネタ」「自慢話」の『3J』(スリージェイ)です。

ビジネス・プレゼンの聴衆が興味があるのはテーマです。話し手にはほとんど興味がありません。だから、できるだけ早くテーマに入ることです。他のことは後からゆっくり説明すればいいのです。

この事のことに気がついたきっかけは、2つあります。

1つ目は、「広報会議」さんの連載で、50人以上の社長さんのプレゼンを取材してきて、気がつきました。

最初の15秒が素晴らしいと、プレゼンの結果は確実に良いのです。

2つ目は相撲です。

相撲は、「立ち会い」で勝負がつきます。

お相撲さんは、何度も水を飲んだり、タオルで汗を拭いたり、身体を叩いたりしながら、時間をかけて気合を高めていき、立ち会いに集中します。それほど、立ち会いとは大事なものなのです。

プレゼンも、話す内容を深く考え抜き、本番当日は集中力と気持ちを高めて冒頭15秒に臨みたいものですね。

 

ボタンダウンシャツでスーツを着てはいけない

 

これまで数多くのプレゼンを取材してきて、トップのファッションでとても気になっていることがあります。

それは、正式な場のプレゼンにもかかわらず、スーツにボタンダウンを合わせる方が多いことです。

ボタンダウンシャツはポロ競技に使われるようになって広まったシャツです。もともとはスポーツ用です。一般ではカジュアルな場面で着るものとされています。

ビジネスマンでもスーツにボタンダウンを着る方がいますが、スーツにネクタイでは合わせないのがルールです。こんなちぐはぐな格好をするくらいなら、スーツではなく会社のユニフォームの方が断然潔く見えると思います。ホンダの八郷社長が、たまに作業着でメディアの前に出られることがありますが、とても格好良く見えます。

(ボタンダウンではドゥエボットーニという襟の高いシャツがあり、これは正式な場でもOKとされています)

スーツに合わせるなら、ごく普通のYシャツを着ればまったく問題ありません。

正式なプレゼンをスーツで臨まれるとき、どんなシャツを着るか確認してみてください。

 

トッププレゼンは自分の強みで勝負

「ウチのトップには、あの会社の〇〇社長みたいに会社のことを力強くPRしてほしいのですが、あまり人前に出たがらないんですよね」

広報担当者さんからこんなご相談を受けることがあります。

確かに人には向き不向きがあります。しかし、会社のメッセージはトップが言うことで強い訴求力を発揮します。やはりどんどん人前に出て話してほしいものですよね。

先日、ユーシーシーフードサービスシステムズ株式会社の上島成介社長のプレゼンを取材してまいりました。

1933年創業のコーヒー専業老舗であるUCCは、UCCグループ会長・上島達司氏のもと、グループCEO兼社長を長男の豪太氏が、海外事業を統括するUCCインターナショナルを次男の昌佐郎社長が務めています。この日登壇した成介氏は三男。

実は私が当日会場に到着した時、入り口を間違えてしまいました。すると、成介社長が出てきて「入り口はあちらになります」といってご案内してくれました。また、私の背後に花壇があることに気がつき「あ、後ろが花壇になっています。お足元にお気をつけください」との気遣いもいただきました。

ちょっとしたことなのですが、会場でトップ自ら道案内する姿勢から、「すべてに責任を持つ」という創業家ならではの覚悟が感じられました。

成介社長はプレゼン前、緊張している様子が伝わってきました。しかし、舞台に出ると覚悟を決めたように集中。華やかに舞台慣れした姿ではなく、どちらかというと地味で内向的な姿でしたが、私をご案内していただいたような優しさと上品さに溢れて好感度の高いものでした。
プレゼン内容も、本格派コーヒーの老舗らしく、コーヒーの深い世界観を呼吸するように説明し、ご自身の強みを活かした「強みの土俵」で勝負する説得力の高いものでした。

トップになれば、人前に立つ立場も多いもの。そこでご自身のタイプや強みを活かしてプレゼンすれば、強い訴求力を発揮できるのです。

広報の皆さんにも、トップには理想とする「こうあるべき」というスタイルをお勧めするのではなく、トップのタイプを見極めてプレゼンを構成することを考えてみてはどうでしょうか。

詳しくは、「広報会議4月号」に記事が掲載されています。ご興味ありましたらご覧下さい。

 

聴き手との対話を深めるプレゼン

 

先日、ある記者さんから取材を受けました。

ストレートで本質的な質問をいくつもいただきました。
そうすると、こちらも考えるのですよね。
そしてまた新たな質問をいただき、対話が深まる面白さを感じました。

このような深い質問を受けると、私はその後も考え続けてしまいます。

「あの質問は本当はどういう意味だったのだろうか?
私の答えはあれでよかったのだろうか?」

考え続けていくと、気づきがあったり、新しいアイデアが生まれたりします。

立場を変えて自分が質問するとき、いつも質問の難しさを感じています。
対話が深まらず「つまらない質問をしちゃったなぁ」と反省することもよくあります。
聞くだけなのに難しいのですよね。

ですので良い質問を投げかけてくださる方の力量には敬服しています。

良い問いを投げかけると、相手は深く考える。
その答えにより、さらに新しい問いが生まれる。
そしてまたさらに深い答えが返ってくる。
この良い循環が生まれることが、対話の醍醐味ではないかと思えます。

これは一対一の対話ですが、この対話を不特定多数の方々と行うのが、プレゼンではないかと思います。
聴き手の方々は、黙って聞いているだけでも目や気で問いかけてきます。
それを感じるようになれれば、聴き手との深い対話が生まれてきます。

プレゼンで対話の深まりを感じられるようにしたいですね。