ヤフー!川邊社長から学ぶ「なすべきことをなす」

経営者のプレゼンを見るとき、大事にしているポイントがあります。

それは、「その会社にとってなすべきことをなす」ことを考えているかどうかです。

2019年11月18日、衝撃のZホールディングスとLINEの経営統合が正式に発表されました。そのとき、川邊健太郎ZHD代表取締役社長CEOはプレゼンで、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指す」と、GAFAに対抗し世界第三極を狙う決意を発表しました。このままヤフー単体では国際的なプラットフォーマーの中で埋没し、規模の小さい日本同士で戦っても業界全体が再編されない限り会社自体も埋没する、と考えたからです。

そのとき、川邊社長の言葉で最も印象に残ったメッセージがあります。

「日頃から、経営者は自分がやりたいことではなく、その会社にとって今、なすべきことをなすべきだ、と考えている。東アジアからもう一極作れる展開を、社長として成すべきことの最大の一つとして取り組む」

アウシュビッツの強制収容所の体験記『夜と霧』でも知られる、オーストリアの神経科医、ビクトール・フランクル(Frankl,v.e.1905-97)は「生きる意味」の問題を追求した人です。
フランクルは、言います。
「どんな時も、人生には、意味がある。どんな人の、どんな人生にも、なすべきこと、満たすべき意味が与えられている。私たち人間の『なすべきこと』『満たすべき意味』『この人生でなしとげるべきテーマ』、これらはすべて今も、また今も、あなたの足元に送り届けられてきている」

人生は自分のしたいことや欲望をかなえていく場、つまり人生の中心を自己に置きがちです。しかし欲望にはキリがありません。昨今、経営の意思決定において、経営者のエゴイズムが勝ってしまい、企業の価値を落としてしまう会社が多くみられます。
経営者は、社会からの為すべきことを為せという要請に対して虚心に耳を傾け、持続的な生き方を求めているからこそ、動じないリーダーシップを発揮できるのではないかと思います。

川邊社長は、自身のなすべきことの意味と使命を実現していくことが人生だと考えているのです。今後、さらに素晴らしくなっていく経営者だと思います。

詳しくはこちらの記事をご覧下さい

ヤフーとLINE緊急会見 川邊健太郎社長のプレゼンを分析

 

最後まで首尾一貫したプレゼンとは

プレゼンで大切なことは、質疑応答も含めて、話している内容をブラさずに、首尾一貫させることです。

しかし、質疑応答で聴き手から突っ込まれると、しどろもどろになってしまったりして一貫性を欠いてしまう例を多く見てきました。

2019年9月12日に、ストライプインターナショナルの石川康晴社長の会見を取材してきました。石川社長の素晴らしい点は、KPIがとても明確で、話しにまったくブレがないことです。

記者からのあらゆる質問に対しKPIをもとに数字で明快に回答していました。囲み取材も、通常は10分程度で終わるものを、石川社長の意志で30分に延長しました。囲みは、時間が長引けば記者はどんどん突っ込んだ質問をするものです。
しかし骨太な戦略を立てた上で、事実に基づいて明確なKPIを設定して発表に臨んでいるので、どんな質問を受けても最後まで一切のブレがありませんでした。

明確なKPIで一切のブレがない上、聴き手をその気にさせる説明は、25年以上のアパレル業界での接客経験を持っている石川社長ならでは。さらにファッションも「こなれ感」があり、まさに達人のプレゼンでした。

今後の活躍が楽しみな経営者です。

詳しい記事はこちらです。お読みいただけましたら幸いです。

ストライプ石川社長のプレゼン分析「説明力とロジックで業界の地殻変動に対峙」

 

 

業界第一人者の講演なのに、7割の人が寝る理由

業界第一人者であるA氏の講演を聞いていたときのこと。他では聞けない貴重なお話しなのですが、聴き手の皆さんは次第にフェイスブックを見たりやラインをやり始めました。ウトウト寝ている人もいます。後方から拝見していますと、ほぼ7割の方は聴いていません。

こうなってしまった理由は、余分な言葉が多すぎるためです。
・「後ですねー、実はXXXXということもありまして…」→もっと正確に伝えなければと思うあまり、思いつきの付け加えが多くなる。しかし、初めて聞く話しばかりの聴き手は理解がついていかないため迷子になる。
・「定義づけしてます…あっ、義務づけしてます」→言葉の正確さを重視するあまり言い直しが多くなり、聴き手は混乱する。
・「それで〜」「あのですね〜」「え〜と」→間違いがないか吟味する時間をとるため間に入る言葉を多用する。それが聴き手にとってはノイズとなり、聞き難くなる。
・「XXXって知ってますか?(皆さんが)知ってないこと自体問題でして…」など、回りくどい説明をして物事をストレートに言わないため、もどかしさを感じる。

これらは全て「ノイズ」です。

さらにチャートの情報過多。「あれもこれも伝えなければ」とチャートには小さな文字がぎっしり。チャートを台本代わりに読み上げていました。
文字ぎっしりの画面が出たとたん条件反射的にあくびをする人たちが多発していました。(ちなみに聴き手を眠らせる最短の方法は、この文字と数字がぎっしり書いたチャートを出すことです)

正しい内容を話しているのに、分かりにくいトーク展開をすることで、聴き手が混乱し、聞いてもらえなくなってしまったのです。
そもそも難しい専門分野で情報がギッシリなのに、さらにノイズを加えている。これで眠くならないわけがありません。
せっかく素晴らしい内容を話しているのに聞いてもらえないのではもったいないですよね。

間違ったことを話すのはもちろんNGです。でも余分な言葉や情報を減らせば、ずっとわかりやすくなるし、聴き手も集中力を持って聞いてくれるようになります。
話し手は、聴き手であるお客さんが何を求めているのかを、常に考え続けたいものです。

アンケートは「人の鏡」

コンサルティングを行う際に、私は講演会やプレゼンで必ず聴き手にアンケートを取ることをお勧めしています。

プレゼンの目的は、プレゼンを聞いた聴き手に、良い方向に動いてもらうこと。
プレゼンは「他人に影響を及ぼし、望ましい行動を起こさせる」というリーダーシップを発揮する場なのです。

一方で聴き手は無言で聞いています。自分の言葉が伝わっているのかがなかなか分かりません。アンケートは、どのように伝わっているかを知り、改善する手段。ここから学ぶことで、より的確に望ましい行動を起こさせることが可能となります。

職位が高い人は「アンケートなんていらない」と言いがちですが、実はそんな人ほど、アンケートは必要です。
リーダーになると、周囲に本当のことを言ってくれる人が少なくなるもの。役職が高くなったり、年齢が高くなれば尚更です。

『貞観政要』でリーダーは、「三鏡(銅の鏡、歴史の鏡、人の鏡)」という3つの鏡を持たなくてはならないという教えが書かれています。

三つ目の「人の鏡」は「リーダーは耳の痛い厳しい諫言を受け入れなければならない」と言っています。
耳の痛い言葉は自分にとって辛いこと。しかし唐朝の第2代皇帝の太宗は、自分が傲慢にならないよう、魏徴を始め、厳しい直言をしてくる人物を側近として任用していました。あえて批判に耐えて自らをリーダーとして成長させていったのです。

プレゼンのアンケートで積極的に厳しい意見を受け入れれば、自分の良い鏡となってくれます。特に忌憚のない意見が書かれる匿名のアンケートは宝の山です。
ぜひアンケートをとってみることをおすすめします。

 

 

「早口で甲高い声の人は、信用されない」

 

人前に出ると早口になる方、意外と多いですね。
これは、伝える内容に自信がないと思われてしまうので損をします。自信がないのを補おうするあまりあせって話しているような印象を与えるからです。

早口は舌の動きが話すスピードについていかず滑舌が悪く聞こえます。このため内容が聞き取れず、大事なことが伝わらなかったり、何度も聞き返す必要があり、聞き手に迷惑をかけます。

私の体験ですが、銀座の伝統あるお店で買い物をしたとき、対応してくださった店員さんがあまりに小さい声で早口だったので、聞き取りにくくストレスがたまってしまったことがありました。何を聞いても「聞いて参ります。少々お待ちください」と他のスタッフに確認していましたので、自信がなかったのでしょう。

プレジデントオンライン記事「有能な秘書が見抜く『信用してはいけない人』の特徴」に、早口の人は信用できないという内容がありました。

・・・・(以下引用)・・・・

不自然に早口な人は、伝える内容に自信がないといえる。アメリカの心理学者ポール・エクマンによると、人間は恐れると早口になるとされている。それに加え、あわてると声が高くなる。自分の魂胆を隠して、企業トップや政治家を利用しようと思っている人は、嘘がばれることをひそかに恐れているため、無意識に早口になるのだ。

・・・・(以上引用)・・・・

実際には、人間は自信があっても人前に出るとテンションが上がり、いつもより声が甲高くなり、早口になるという傾向もあります。

早口だからと言って、その人が「信用できない」「自信がない」とひとくくりに決めつけるのは、ちょっと難しいかもしれません。

しかしこの記事の通り、甲高い声で早口は、一般的には信用できないと受け取られてしまいがちです。

ゆっくりと良く響く低い声で話した方が、確実に、安心感があり信頼されやすくなります。

人前で話すときは、できるだけゆっくり堂々と話すように心がけたいものです。

 

 

何度言っても意外と伝わらない。だから繰り返す

 

「『これは大事だ』と思っていることを、ミーティングでメンバーにいつも同じことばかり話している。でも退屈されてないだろうか。ちゃんと聞いてくれているだろうか。何か良い方法があれば教えてほしい」

こう心配するリーダーからの質問をいただくことがよくあります。

答えは「同じメッセージを繰り返して大丈夫です」。

特にリーダーが強い意志を持って組織を良い方向に変革しようとするならば、同じ内容を繰り返すことが必須です。
メッセージの内容を変えれば組織は混乱し、進むべき方向を見失ってしまいます。
そもそも人は、一回言っただけで内容を理解して行動に移すことはありません。

新しいことを始めようとする場合はなおさらです。古い習慣が身についてしまった組織の人たちは、リーダーの言う変革で目指す姿をなかなか頭でイメージできません。だから何度でも、しつこく繰り返すこと。そして、毎回心をこめて話すことです。

最近、「米海軍で屈指の潜水艦艦長による『最強組織』の作り方」(L・デビッド・マルケ
著)を読みました。
これは、アメリカ海軍でダメな艦として有名だった潜水艦「サンタフェ」の乗組員を、わずか1年で海軍トップのチームに生まれ変わらせたリーダーシップの話しです。

中でも、組織開発を行うために、艦長が同じメッセージを繰り返す場面が印象に残りました。

・・・・(以下、引用)・・・・

それからは、くる日もくる日も、ミーティングを開くたびに、何かを行うたびに、同じメッセージを繰り返した。
(中略)
艦での働き方をどう変えるかの説明を私がしているとき、乗員は耳で聞きながら心ではこう考えている。「はいはい。わかってますよ。前の艦のときと同じだろ」
聞きながら何の話しかわかっている気になっているが、じつは分かっていない。聞いた内容を自分の頭に思い描こうとはしない。わかったふりをして私を騙そうというわけではなく、私が思い描いていることを、自分で思い描こうとしないのだ。
(中略)
彼らが思い描いたリーダーシップや働き方は、「かつて乗っていた艦」で目にしたものだった。過去に見たものを思い描いただけだったから、この艦でわれわれが成し遂げようとしていることをうまくイメージできなかったのだ。

・・・・(以上、引用)・・・・

古い習慣をなくし、組織開発を行うことの難しさが理解できる名著だと思います。

ただ皆さんが、もし飽きずに話しを聞いてもらい、説得力を高めたければ、内容は変えずに、観点を変えて話すことが有効です。

例えば、「従業員から見た観点」「顧客から見た観点」「サプライヤーから見た観点」など、観点を変えながら話すことで、より共感してもらえるようになります。

朝礼やミーティングでメンバーに話す機会のある方、話しが繰り返しになって悩んでいる方は、ぜひお試しください。

パネルディスカッションのコツは座り方にある

 

「パネルディスカッションでどう振る舞っていいのか分からない」

という質問を受けることが多くあります。

パネルディスカッションは、一見仲良く話しているようでいて、静かな闘いの場であるということを覚えておいてください。

人間は上下関係を意識せざるを得ない生き物であり、それが行動に影響を与えます。

パネルディスカッションは、聴き手から見ても話し手が横に並ぶため比較しやすい場です。そのためパネルディスカッションの「闘い」を一度でも経験し、感じた方であれば「入念な準備が必要である一人の講演より話しにくい」という方も多いほどです。

先週、第21回日経フォーラム世界経営者会議に二日間参加してきました。そこで印象に残ったのが、パネルディスカッションでの外国人と日本人登壇者による振る舞いの差です。
日本人は良い意味で控えめ。ただ、舞台の上で海外のリーダーと比較すると、消極的でリーダーシップの弱さが感じられてしまった点が印象に残りました。

そこで、今日はパネルディスカッションにおけるちょっとした振る舞いについてお伝えいたします。

基本的に「なわばり争い」と思ってください。

なわばりとは、自分の周辺スペースのことです。

とくに椅子に座るときが重要です。できるだけ自分の周辺スペースを広くとりましょう。
足を組んで大丈夫です。肘掛けにはゆったりと両腕を置いて下さい。
外国のリーダーは、足を組みながら長い足を存分に前に出し、「なわばり」を大きくとっていました。これだけで余裕が生まれステイタスが高まります。

また、カウンターチェアが用意される場合もあるかと思います。
その場合は、片足は椅子の足かけにかけて、もう片方の足は前方向に伸ばしてください。伸ばすことでスペースが大きくとれます。
足かけに両足をかけて広げる姿をよく見かけますが、客席から見て美しくありませんのでNGです。

パネルディスカッションの座り方一つで、ステイタスが高まり、説得力が向上します。
お試し下さい。

 

これからのリーダーにとって大事なこと

 

昨日まで2日間「第21回 日経フォーラム世界経営者会議」に参加していました。

第一日目には、日本からはファーストリテイリングの柳井会長、キリンHDの磯崎社長、DeNAの南場社長、マクドナルドのカサノバ会長、タニタの谷田社長などが登壇し、経営者が今何を考えているのかが、言葉だけでなく空気を共にすることで肌感覚でも感じられた貴重な機会でした。

そういえば、柳井会長、カサノバ会長、谷田社長は、すでに「プレゼン力診断」で取材させていただいた方々です。取材から数年たって彼らが今どのような状況に立っているのか興味深く拝見しました。

とくにカサノバ会長は、約4年前にバッシングの真っ只中で取材させていただき、毅然とした見事なプレゼンが印象に残っています。

一昨日、長身のカサノバ会長が大きな舞台を存分に有効利用し、歩き回りながら話す姿はまさに立派なリーダーの姿。円熟味の増した堂々たるプレゼンでした

プレゼンも良かったのですが、カサノバ会長の言葉には、この数年間蓄積された重みが増し、言霊が宿っていました。

「なぜ日本マクドナルドはV字回復をとげることができたのか」という日本経済新聞社記者からの質問に対して、「2つある」と話していました。

一つ目は「お客様のロイヤルティ、社員の士気を高めること」

二つ目は「そのために、お客さんや社員の声を聞くこと」

リーダーとして大切なのは、やはり「聞くこと」なのだそうです。

しかも「広く、深く聞き、注意深く反映させること」。

そうしないとご自身もチームの多様性も活かせないと話していました。

プレゼンは、どちらかというと自分が話すことばかりに気を取られがちです。しかし、舞台に立つ前にどれだけお客さんや従業員さんの声を聞いているか、それはプレゼンの言葉の隅々にまで表れるものです。

同じように、タニタの谷田社長も、「経営者としてここはどうしても譲れないという領域はあるが、それ以外は社員の意見を尊重している」と話していました。

リーダーは、インターナルコミュニケーションによって聞くという経験を積み重ね、それを実践することが大切だということがよく分かりました。

 

プレゼンに演技力は必要か?

「私、演技力ないからプレゼンに自信ないです」
よくあるお悩み相談ですが、プレゼンに高度な演技力は必要ありません。

ビジネスプレゼンと役者の違いは2つあります。

(1)現実か?

ビジネスプレゼンは、現実に基づいています。多額のお金も動きす。トップの場合、従業員もいて責任が伴います。
役者の演技は、虚構の世界であり、非現実。アートの世界が舞台です。

(2)人を行動させるか?

ビジネスプレゼンの目的は、聞いた人が実際に行動することです。
一方、役者の演技の目的は、人の心が動き感動すること。行動は目的ではありません。

現実の世界で、人を行動させることが目的のビジネスプレゼンは、「話す内容」が何よりも大切。技術は二の次です。役者のような演技力をつけるのは時間のムダ。逆に役者のように話すと、言い方は悪いですが「うさんくさく」「イタい」ので人が動きません。演技力を磨く時間があるのならば、内容を考え抜くことです。

まずは現実に基づいて、しっかり内容を吟味し、どのようにプレゼンしたら「人が動くか」、戦略を考え抜くことが必要なのです。

 

 

非公開数字の質問を乗り切る方法

 

プレゼンの質疑応答で、「言ってはいけないこと」があります。

その代表的なものが、「まだ非公開の数字」です。

サービス精神旺盛な方だったり、記者の上手な質問に乗せられてついつい言ってしまうケースなど、過去有名な経営者でもたくさんありました。

ただ、いつ如何なる時も通り一遍に「言えません」では、杓子定規でよろしくありません。質問者とのリレーションを大切にすることも、ビジネスパーソンとして大事なことです。

まだ非公開の数字について質問された時、ヒントをあげたい場合もあります。そんなときは、この一言で乗り切るといいでしょう。

「ちょっと幅が広くて申し訳ないですが…」

三井不動産株式会社の「日本橋再生計画第3ステージ 記者発表会」にて菰田正信社長を取材したときのことです。「非公表の事業投資額は?」と記者から質問をうけたとき、「数千億から1兆円の間ってことでしょうね。ちょっと幅が広くて申し訳ないですが…」と笑顔で答えていました。

このときは、何度も投資額の質問を受けており、最後は記者に寄り切られる格好でしたが、詳細は言わずになんとか上手く乗り切りました。結果としては、菰田社長が一枚上手だったと思います。

詳しい状況はこちらの記事にもありますので、ご興味ある方はぜひご覧下さい。

「日本橋に青空を甦らせる」三井不、中長期を見据える強い意志

なぜあの人は目上の人に引き立てられるのか

 

目上の人や上司に好かれる人がいらっしゃいます。
目上の人に好かれることは、仕事が上手くいく秘訣でもあり、人生にとっても大きな意味があります。

好かれるということは、出世のためや、仕事をいただくためだけに媚を売ることとは違います。
また、上の人に好かれるような感じの良さとは、生まれつきだと思い込み、「自分は不器用だから」と諦めてしまいがちです。

実は、本当に好かれ、引き立てられる人というのは、仕事が出来るだけではだめで、相手に「どんな自分を覚えてもらいたいか」をまず設定して、考えて話しているのです。

最近、新浪剛史さんが日産自動車の次期CEO候補の一人として同社指名委員会で検討されている、と報じられました。

新浪さんが、ローソン会長からサントリーの社長に就任されたときの会見を見たことがあります。サントリー・佐治信忠会長とご一緒に会見しているときの新浪さんは、ローソンのトップ時代とはニュアンスを変え「人にお仕えする」態度をとっていて、大変参考になりました。

媚びずに、目上の相手を立て、「おかげさまで」という気持ちを言葉に表す。新浪さんの特徴は、声が大きくパワーがあり、目力を持つアイコンタクトを欠かさず、さらに、口角が上がるので笑顔がわかりやすいのもポイントです。男性で「笑っているつもりなのに笑って見えない」ということが良くありますが、これは不機嫌に見えたり、納得していないように見えたりする場合があるので損をします。素晴らしい経営者は大抵、「わかりやすい笑顔」が自然に出せる人が多いのです。

新浪さんは、実績・実力もあるのですが、若い頃から常に目上の人に引き立てられて、出世なさってきた人です。新浪さんを42歳という若さで東証一部上場企業のローソンの社長に引き立てたのは、三菱商事当時副社長で現在取締役会長の小島順彦さんです。

なぜ小島さんが新浪さんを抜擢したのか?

新浪さんの著書「個を動かす」に、小島さんのインタビューが書かれていました。

・・・(以下、引用)・・・

「そうでもなかったです。あれだけの勢いがあるヤツはそんなにいなかったですから。彼は私に平気で喧嘩を売ってくる」

――下からがんがんと言ってくるような人間じゃないと、一国一城の主は務まらないのでしょうね。

「そう思います。『この野郎、かわいくないヤツだ』と思うけど(笑)、冷静になって考えてみると、彼は自分の意見を持っているから立派なんです。上にモノを言う人間が大勢いると、経営がミスリードされなくていい」

 

・・・(以上、引用)・・・

私はこれを読んで、「普通の人がこのまま真似をしては嫌われる」、新浪さんが特別なのではないかと考えていました。しかし、佐治会長と一緒のサントリー会見の様子を見て、「なぜ新浪さんが好かれたのか」大いに納得したものです。

新浪さんは、相手にとって「どのような自分を覚えてもらいたいか」をきちんと設定して、考え抜いて接しているのです。
時には悩んだこともあったと思います。
これが長年継続されて身に付いているので、演じていたとしても、ほぼ「生まれつきではないか」と思えるほど自然に出
来ているのです。言うべきことをしっかり言っても嫌われない。それどころか「この人に任せたい」と思ってもらえる。

実力をつけることも大事です。
しかし、そういう人はたくさんいる。
それだけではダメなのです。

実力はあっても、ちょっとしたことで「気力が感じられない」「頼りない」「何を考えているのか分かりにくい」「素直さがない」と思われると好感度は下がってしまいます。

そこで、好感度を上げるための3か条をお伝えいたしましょう。

1、よく響く落ち着いた低い声

説得力や安心感、人間の温かみが感じられ、若くても「この人に任せてみよう」と思われます。チャンスを与えてもらえることは仕事の成長につながりますので大事なことです。

2、笑顔とアイコンタクト

常にニヤニヤしているということではありませんが、やる気や素直さは笑顔、考えていることは目で伝わります。上の人から見ると、笑顔で対応してくれる人は「可愛げ」があります。笑顔だと口角も上がり、口の中が広くなるので声も明るく響きます。

3、すぐにやる

何でもすぐにリアクションする。トップになるほど多忙になります。すぐに返してくれる人ほど有り難いものです。例えば、返事一つでも「はい。」(→「。」までしっかり)とすぐ返す。「はあ〜い」や「はァ・・・(語尾が落ちる)」「はいはい(2回言う)」はNG。

 

同じ力量であれば「どちらに頼もうか」と考えた場合、人間ならば、やはり好感度の高いほうを引き立てると思います。

3つとも、簡単にできるものばかりです。

とくに甲高い声や、アニメ声の人は、落ち着いて低い声で話すようにしてください。

より良い仕事をするために、「どんな自分を覚えてもらいたいか」。
ぜひ、設定してみてください。

 

※このコラムは2019年10月7日に書かれたものです。2019年10月8日に日産は内田誠専務執行役員が社長兼最高経営責任者(CEO)に昇格するトップ人事を発表しています

 

集中力は成長しないが、高められる

「プレゼンで集中できない」
「集中力のある人がうらやましい」
このようなお悩みをよく聞きます。

集中力は人ぞれぞれです。
自分の集中のタイプを見極め、自分にあった集中の方法を見つけることが、高い集中領域に持って行くために必要となります。

「左ききのエレン」というコミックで集中力について書かれています。とても参考になりましたのでご紹介します。

・・・以下、引用・・・

1)集中力の長さ・・・集中力の継続可能時間。
2)集中力の深さ・・・集中力の深度、耐久度。
3)集中力の早さ・・・集中深度が深まる速度。

この3つを掛け合わせたものが、集中力の質です。

(強度+深度+速度)×練度=集中力の質

・例えば、「速度」と「強度」は概ね反比例する。早い人ほど持続は短く、遅い人ほど持続は長くなる
・例えば、「強度」と「深度」は概ね反比例する。長い人ほど集中は浅く、短い人ほど集中は深くなる

・大人になってから集中力が成長することは、ほぼ無い。
・大事なのは、使い倒すこと。
・努力で100が120になる事はないが、努力不足で100が90や80にはなってしまう。
・だから限りなく100に近づけるために必要なのが、「集中練度」
・集中練度とは人生で何回・何時間集中したかという経験値。
・才能ではなく努力。いかに向き合ってきたかという情熱。
・「集中練度」をたゆまぬ努力で積み重ねてきた人間に神のみが教えるギフト。
・集中力の質を限りなく万全に近づけるスイッチは、ルーテインである。

・・・以上、引用・・・

確かに集中力のある人は、これでもかと同じことを繰り返し、圧倒的な数をこなしています。

あえて一つ付け加えるとしたら、その繰り返しの中に、小さな仮説検証を必ず付け加えることだと思います。

私は集中するまで時間がかかるタイプです。それが分かってから、プレゼンで試行錯誤をしながら、いろいろな工夫をしています。
集中力を万全に近づけるために、「自分がどの集中のタイプなのか」を見極め、ルーティンと仮説検証を繰り返していくことなのです。

「失敗こそ財産」と信じているキングジム宮本社長のトッププレゼン

「失敗したらどうしよう」
「失敗したら責任をとらされるかもしれない」

そう考えると、仕事でもプレゼンでも萎縮してしまいそうです。でも人間ですから常に完璧にはいきません。特に、新しいことにチャレンジしようとすれば失敗はつきものです。

最近、デモで失敗しても堂々と乗り切ったプレゼンを取材してきました。

キングジムの宮本彰社長です。キングジムは、「キングファイル」「テプラ」「ポメラ」のように、ニッチな「やってそうでやってない」市場でのシェアをとるのがうまい会社です。

この日は、対話型翻訳機「ワールドスピーク」の発表会でした。プレゼンのデモでは、翻訳機の誤訳や発音ミスが続いたのですが、宮本社長はまったく動じません。それどころか質疑応答で突っ込まれると、満面の笑みで「まだまだ完成されていません」「これからです!」「お客さんの声を聞きながらやっていくんです!」と、腹の底から言い切り自信満々でした。

宮本社長は、「10個に1個成功すればいい。ある意味失敗するのは当たり前、売れないことに慣れている。売れないことは恥ずかしくない。良い勉強をしたということ」と言い続ける真のイノベーターです。

イノベーターは「未熟な技術にこそ可能性がある」と考えます。未熟な技術は、大きく成長していく可能性があるからです。スマホカメラは登場した頃は未熟な技術で、「誰もがオモチャだ」と思っていました。しかし急速に技術が成長して、いつのまにかコンパクトデジカメを駆逐してしたったのは、その典型的な例です。

ここで大切なのは、市場が立ち上がろうとしている時にいち早く参入すること。なぜなら誰も勝者がいない成長期に参入して、未熟な技術を高めていけば、市場の勝者になる可能性が大きくなります。逆に市場が立ち上がってから参入すると、なかなか勝てません。

今回発表されたワールドスピークは、すでに競合の「ポケトーク」がヒットしている中での参入でした。しかし、宮本社長は「翻訳機市場への参入という形ではあるが、先行するポケットタイプとはだいぶ違う。本格的な法人向けのサービスとして差別化できている」と言い切ったのです。

だから宮本社長は、プレゼンのデモで失敗しても全く気にしません。そして社員さんたちは、失敗しても嬉しそうに笑っているのです。これは数々の失敗を乗り越えてきたからこそ培われてきたキングジムの企業文化でもあります。

それでは、宮本社長の「どんな失敗も乗り切るコツ3点」をお伝えしましょう。

その1:常にワクワクしている目
目は心の窓と言われます。いつも新しい発明・発見に興奮し高揚している目。それが周囲にも伝わり、やる気になるのです。

その2:会心の笑顔
まるで打者がホームラン打ったときのような笑顔です。この笑顔で空気が明るくなります。

その3:「これからです」
イノベーターの真骨頂。どんなときでも、自信を持って「これからです」「お客様の声を聞いてやっていくんです」と言い切ることで、乗り切れます。

宮本社長の記事はこちらに詳細が掲載されています。

広報会議10月号 キングジム宮本彰社長のプレゼン分析「企業文化を育むイノベーター」

もしご興味ありましたら、ぜひその豪快な失敗っぷりをご覧下さい。

 

山本太郎は、非顧客層を狙ってプレゼンを行い、成功させた

戦略とプレゼンは一心同体です。
戦略を実行するには、人々に動いていただく必要があります。
プレゼンは人々に動いていただくための大きな手段です。
しかしいい戦略を立てても、プレゼンがダメだと、戦略は上手く実行できません。

れいわ新選組代表山本太郎氏は、2019年7月、第25回参議院議員通常選挙において、その卓越したプレゼン力から「れいわフィーバー」「れいわ旋風」を巻き起こし、一気に注目される存在となりました。

しかし、山本氏が注目された理由はプレゼン力だけではありません。したたかな戦略を持ち、戦略とプレゼンがガッチリかみ合っているのです。
(※なお、本日のコラムはあくまでプレゼンの観点での分析であり、筆者の政治的な信条とはまったく関係がありません)

実は山本氏の戦略は、政界の「ブルーオーシャン」を狙っています。
激しく競争する市場を、サメがお互いに食い合い海が真っ赤な血で染まる様子を例えてレッドオーシャンと言います。
一方、競合のいない新しい市場は、食い合うサメもいないため真っ青な海。これをブルーオーシャンと言います。

ブルーオーシャン戦略で大事なポイントは、「非顧客層」の苦痛を解決することがポイントです。
この非顧客層には、3種類あります。
(1)潜在的非顧客層→ 仕方なく今の商品やサービスを使っている
(2)断固たる非顧客層→ 今の商品やサービスを、あえて「使わない」と決めている
(3)未開拓の非顧客層→ 今の商品やサービスを使うなんて考えたこともない

山本氏の場合、「選挙には必ず行く」という顧客層は捨て、非顧客層にターゲットを定めました。

山本氏が狙った非顧客層
(1)潜在的非顧客層→ 選挙に行くのは面倒だけど、行く
(2)断固たる非顧客層→ 選挙に行ってもどうせ変わらない。だから選挙には行かない
(3)未開拓の非顧客層→ 選挙に行くの?考えたこともない。

そしてこの非顧客層を徹底的にプレゼンで攻めました。

ここでプレゼンの大事なメッセージとなるのが、次の三点です。

①非顧客層の苦痛を解決するメッセージを訴求すること
徹底的に弱者の立場に立って、「あなたたちは搾取されている」「力を持てばできる」ということを叫び続けました。

②本気を示すこと
「このままでは国が壊れていく。自分のキャリアを捨てて、自由党を出た。ここに来るのも数百万円の借金を負っている」と訴えました。

③自分の勝てる土俵で戦う
山本氏の恐るべしはその計算の高さ。誰と勝負すれば確実に勝てるか計算して場を作っています。
街頭演説では、意見する「ネット右翼」と言われる人たちを次々と論破し、聴衆が拍手喝采している様子がネット動画で拡散しました。世の中に味方を増やせるような相手を狙って議論を行っています。

周到に考え抜かれた戦略と、それを実現する手段としてプレゼンを駆使している様子を見ると、今後も力を得ていく可能性は高いと思います。

山本氏が話している内容が「良い・悪い」に関わらず、その戦略とプレゼンの方法論は、ビジネスパーソンが学ぶべきところは多いと思います。

プレゼンが伝わらないのは、原因がある

「トップが何度も大事な話をしているのに、社員がぜんぜん覚えてくれない」
「会見をしても、こちらのメッセージをメディアが記事にしてくれない」

こんな広報さんのお悩みをよくうかがいます。

これは理由があります。
人は自分が見たいもの、聞きたいものしか覚えてくれません。
覚えられる許容量が限られているからです。

人が同時に覚えられるのは最大7つまで。
しかもたった20秒で忘れると言われています。

経営学者・野田稔氏の著書「組織論再入門」にて、人の特性に関する論述があったのでご紹介します。

・・・・以下、引用・・・・

人間はいらない情報をカットして、自分が大切だと思った情報だけを意図的に入れることができる。ただ、逆に言うと本当に大切なものもカットしてしまう可能性があるということになる。
(中略)
作業記憶はフィルタリングされた情報が入ってくるだけでなく、許容量が限られている。記憶の単位はチャンクと言う。これはひとかたまりの意味のある文字列のようなものである。ハーバート・サイモンは、人の作業記憶は7プラス・マイナス2チャンクしかないと言う。5つから9つ覚えておくと、作業台が一杯になる状態である。
(中略)
保持能力は20秒、あまり褒められたレベルの話しではない。
(中略)
インタビュアーは、ゲストの答えを聞きながら、次の質問を考えている。相手の言っていることの中で、どうせこんなものは聞かなくてもいいという時に考える。相手の話を予測し、「この話は聞かなくてもいける」と選択的な記憶を使っているのだ。ひっかかる単語以外は聞き流し、もっとひどいと、今日行くレストランのことまで考えている。

・・・・以上、引用・・・・

しかし多くの人が「ちゃんと覚えてもらおう」と考えて、大量の情報を伝えようとします。
これはまったく逆効果。

もしプレゼンで確実に覚えて帰ってもらいたければ、やるべきことは1つだけ。

「自分が伝えたくて、自分しか話せない、聴き手が欲しがっている情報」

これをできるだけ早く伝えることです。

情報が多いほど、かえって伝わらないということです。
ビジネスプレゼンでは、資料は勇気をもって徹底的に絞りこむこと。
そうすれば、より確実にメッセージが伝わるようになるのです。

 

プレゼンを爆速で上達させる方法

「プレゼンが出来るだけ速く上達する方法はありますか?」
こんな質問を受けることがあります。

人前で自信を持って話せるようになるまでは、ある程度の時間が必要ですが、もしも爆速で上達したければ、1つだけ方法があります。
それは、本番の場数を踏むこと。
厳しい聴衆の前で話せば、さらに加速します。

「厳しい聴衆を前に、本番に臨んだ回数がどれだけ多いか」で、上達スピードに差がつくのです。

厳しい聴き手を相手に本番の数をこなすので、当然、失敗する回数も多くなります。できれば恥をかきたくないというのが人情というもの。加えて人から厳しい評価を下され、落ち込むこともあります。

しかし、一人で部屋にこもって長時間マジメに練習するだけでは、上達のスピードはなかなか上がりません。

最近、企業のマネジャーさんとお話した時、「部下がなかなかお客さんのところに行きたがらない」とぼやいておられました。自信が出るまで作りこみ、じっくりと完璧なものが出来てからお客さんのところに行きたいのだとか。しかし、他人はこちらの想像とは全く違う考えをしていることも多いものです。せっかく時間をかけて作り込んだものが的外れということも少なくありません。
もちろん、まったくダメなものを披露するのは論外ですが、ある程度まで出来たら、思い切って「人の目に晒してしまう」ことが大切なのです。
批評され、お客さんがどう感じたか知り、「どうすればもっと良くなるか」を考えながら改善していくことが欠かせません。

「ハーバード・ビジネス・レビュー 2015年5月号」にピアニスト・作曲家の松永貴志さんの記事が掲載されていました。松永さんは、音大にも行かず独学でピアノを勉強した方です。

・・・・(以下、引用)・・・・

ほとんど独学だ。派閥もない。楽しいという思いだけを原動力に、自由な気持ちで、ただひたすら鍵盤と向き合い続けた。
独学だからこそ練習にはさまざまな工夫を施した。道場破りのようにライブハウスに飛び込んでは、「1曲だけ弾かせてください」とお願いして回った時期もあった。数え切れないほどの門前払いも受けたが、常に誰かの視線を感じる環境で演奏したことで、圧倒的なスピードで上達しているのを実感した。

・・・・(以上、引用)・・・・

プレゼンも同じです。
より厳しい聴衆の洗礼を受けて磨かれるからこそ、上達していくものなのです。

 

前置きが長いプレゼンは、やめよう

「え〜、私どもの事業でございますが、こちらのグラフを見ていただいても分かるとおり、北米、アジアでの売上を合わせますと、グループ総売上〇兆円、営業利益〇千億円と大変大きな成長をさせていただくことがおかげさまでできました。感謝申し上げます。さて、今日本国内では…」

新商品の記者発表会に伺ったときのことです。プレゼンテーションの冒頭で会社の業績説明が延々と続きました。
商品の紹介はいつまでたっても出てきません。商品についてやっと話し始めたのが10分後。ついしびれを切らしてしまいました。

企業にとっては業績が大事なことはよく分かります。しかし、聴き手は新商品発表があるという案内をもらって会場に来ています。速報を上げるために、プレゼンを聴きながらその場でパソコンで記事を書く記者も大勢います。

こちらのコラムでも書きましたが、人の集中力は、
1分…100%、3分…80%、5分…50%、10分…35%、20分…25%と下がっていきます。

会見の目的は、聴き手である記者に、出来る限り多くの記事を書いてもらうことです。聴き手が集中力が最も高い時間帯に、本題から話すべきです。良い内容の記事を数多く出してもらいたければ、単刀直入にテーマから入ることが最も効果的です。

結局、会見後の記事はプレスリリースのコピペのようなものが数件に留まりました。
しかしこの会見は例外ではありません。このように本テーマから入らないプレゼンは、世の中にはとても多いのです。

プレゼンをすると決まったら、最初に考えるべきは「プレゼンをする目的は何か」
これをまず考え抜いてみてください。
プレゼンは、テーマから最速で入ることで、最も高いアウトプットが出せるのです。

 

ぶれないミッションがプレゼンを骨太にする

 

「すごくプレゼンの練習したのに、スルーされてしまうんです」

プレゼン技術は努力して上手になったのに、説得力が向上しないというお悩みをよく聞きます。

じつは、ある大事なことがボヤけてしまっているために、プレゼンの説得力が上がらないことがとても多いのです。

それは「ミッション」です。

ビジネスのプレゼンは、必ず企業のミッションが土台にあります。そこを忘れてしまい、製品の機能性ばかりを強調しているプレゼンがとても多いのです。

ミッションが明確なプレゼンは、たとえ話し下手でも内容が骨太な印象になり、人の心を動かします。

先日、取材をさせていただいたパタゴニア・辻井隆行社長のプレゼンは、ミッションが明確な上、そのミッションをありとあらゆるシーンで首尾一貫しているものでした。

パタゴニアのミッションは「故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というものです。プレゼン内容はもちろんのこと、会場は緑に囲まれた環境で、提供する商品はすべてオーガニック・再生可能なもので統一していました。

ミッションとは、いわばプレゼンに魂を入れるのと同じです。

プレゼンでは、技術を学んだ上で、ミッションが明確になっているか今一度内容構成を見直してみると、説得力が格段に高まると思います。

宣伝会議デジタルマガジン8月号にパタゴニア・辻井隆行社長の「プレゼン力診断」執筆記事掲載いただきました。
ご興味ある方はぜひご覧下さい。

パタゴニア日本支社長のプレゼン「首尾一貫したブランドミッションを体現」

 

プレゼン舞台に歩いて出るための、3つのコツ

 

プレゼンの舞台に出てくる様子は意外に目立つものです。

なぜなら聴き手は「どんな話しになるのだろうか」「この人はどんな人なのだろうか」と、集中して見ているからです。

聴き手の集中力は、あくまで感覚的なものですが、

1分…100%、3分…80%、5分…50%、10分…35%、20分…25%と下がっていきます。

だから、舞台に現れる冒頭というのは、最も聴き手の集中力が高い時間帯なのです。

その大事な冒頭で、落ち着きなく出てきたり、猫背でやる気が感じられなかったり、変に虚勢を張りすぎていたりすると、聴き手に与える印象が悪くなり、聞いてもらえません。もちろん耳では聞いていると思いますが、心から聞いてみようという気持ちが下がってしまうのです。

ちょうどよい加減で歩いてでるには、コツがあります。

(1)心拍数と同じ速さで歩く

歩く速度が決められず、ノソノソ歩いてしまったり、逆に早足すぎたりすることがよくあります。直前に自分の心拍数を測ってその速さに合わせてでると丁度良い歩調で出られます。心拍数が遅い人も、はやい人も、その人らしく出られます。

(2)人混みを歩くときの感覚

意識し過ぎて不自然になってしまうケースです。硬くなってしまい左足と左手が同時に動いたりするケースも見られます。この原因は、自分に意識が向きすぎているためです。
こういうときは、駅の人混みを歩くときの感覚を思い出すとうまく行きます。
人混みでは向こうから歩いてくる人を避けながら歩きますよね。そのときは意識が前から歩いてくる人に向きます。
普段、駅を歩くときに、プレゼンのときはこう歩こうと考えながら試すと、本番でも自然に歩けるようになります。

(3)「どう話そうかな」と考えながら出る

ちょっと上級者向き。歩くことを意識するのではなく、話すことが決まっていたとしても「どうやって話そうかな」と思索しながら出る。もちろん「話す事はバッチリ決まっている」のが大前提です。これが出来ると、自然で、かつプレゼン慣れして見えます。

今日は、3つのコツをお伝えしました。

ぜひ普段から「今度のプレゼンはどうやって出ようかな」と考えながら行動してみてください。

 

プレゼンが素晴らしく見える最後の決め手

 

プレゼンが素晴らしい女性は誰ですか?」

女性から、こういう質問を受けることがあります。

もし一人挙げるとすれば、それはIMF専務理事・クリスティーヌ・ラガルドさんです。
(※2019年7月3日加筆:このコラムを書いた翌日2019年7月2日、ラガルドさんは欧州中央銀行(ECB)総裁に就任しています)

ラガルドさんの男性に媚びることがなく、だからといって女性らしさを失わないふるまいは、社会で活動していこうとする女性の良いお手本となる存在です。

凄いのは、低い声で、しっかりと迷い無く言葉を発するところ。ラガルドさんご自身が、腹の底から信じているので言葉に力が宿り、聴き手の不安が消え、「大丈夫だ、出来る」と思えてきます。

ただ、言葉だけではありません。

まず、ファッションセンスも見事です。黒やグレーのスーツでも色味のあるスカーフをあしらい、顔周りを華やかに演出をしています。さりげなくフランスのブランド、ルイ・ヴィトンやエルメスのバーキンを持っているのを見ると、こういう方こそふさわしいと思ってしまいます。

加えて、姿勢が良いのも、素敵に見えるポイントです。ラガルドさんは、1971年にシンクロナイズドスイミングのフランス選手権で二位を獲得した経歴の持ち主です。だから姿勢が良いのでしょう。

そして大きな強みになるのは、シンクロを高い領域まで究めた経験ではないでしょうか?これが彼女に黙っていても伝わる品格や教養を与えています。

高い技術を持つピアニストである米国の政治家、コンドリーザ・ライスさんも同様でしょう。

「日経ビジネス」2014.12.29 No.1772「遺言」にて元首相の細川護煕さんがが興味深いことをおっしゃっていましたのでご紹介します。

・・・・(以下、引用)・・・・

教養は数値でははかれませんが、重要なものです。トルーマンは原爆投下時の米大統領ですが、英国のチャーチルは当初、彼を軽蔑していて敬称に「ミスター」を使っていた。それがある晩餐会後にトルーマンは得意なピアノを披露し、それ以降「プレジデント」に変えたそうです。
トルーマンはピアニストを目指すほどの腕前。チャーチルもそれを解して、敬意を示したんですね。
ピアノでも本でも何だっていい。にじみ出る教養は人を引き付けます。日本では政治家も経営者もハウツーものばかり読んで、そこが不得意ですね。でもこれからはそういう人が
必要でしょう。

・・・・(以上、引用)・・・・

教養とは、長い経験と年月を経て蓄積され、内側からにじみ出るもの。それがプレゼンでは最後の決め手となるのです。