「我が社の新しいパーパスも決まりました。社員の前でもっとたくさん話そうと思います」
こうお話しされるトップは、もともと話が苦手な方でした。
しかし心機一転して、全国各地の支社を訪れて、積極的に社員に向けてお話することにしたそうです。
パーパスとは、「会社が向かう方向」を示したものです。
トップが何を目指すのかをしっかり語れば、社員のやる気を引き出すこともできます。
ただ、ここで注意していただきたいことがあります。
それは「腹の底から、自分らしく語る」。
上手でなくても、ぜんぜんOKです。
むしろ危険なのは、ムリをしてジョブズ風やTED風に語ることです。
なぜなら人の脳は、相手のウソを直観的に見抜く「レゾナンス」という仕組みを持っているからです。
人は「この人、何か偽っているかも…」と無意識に感じた途端、その人の信頼度を一気に下げます。
だから自分らしく、嘘偽りのない態度で話すことが大事なのです。
アメリカの経営学者・ビル・ジョージは、自分を偽らずにありのまま振る舞うリーダーシップを「オーセンティック・リーダーシップ」と名付けています。そして人は自分らしいリーダーに強い絆を感じるのです。
大企業の社外取締役も務める成蹊学園・学園長の江川雅子氏は、これからのリーダーに求められる資質や能力について下記のように述べています。
ある会社で社長指名を受けたリーダーが、「社員の心に灯をともしたい」という抱負を述べたのが印象に残っています。以前は、より具体的なスキルや能力がリーダーの条件として挙がることが多かったのですが、このように多様な人々の心を動かすリーダーがますます必要になっています。
(ハーバード・ビジネスレビュー 2022年11月号)
年始から新入社員が入社する4月にかけてのこの時期、トップは社員の前でお話しする機会が多くなります。
また、トップでなくともチームのリーダーをされている方も、目指すべき方向性をメンバーに話さなくてはならない時期です。
ぜひ自分らしく、誠実に、腹の底からお話いただくことを願っています。