蓮舫議員の「プレゼン力診断」

 

講演に参加された方から、こんなご質問をいただきました。

「民進党の蓮舫さんの話し方について質問です。話している内容よりも、話し方が気になっていました。声が高めなのか?ゆっくり強調すべき言葉を選び間違えているのか?どうもよくわかりません。」

つい先日の7月27日、蓮舫さんが記者会見を行い、民進党の代表を辞任するという発表があったばかり。そこで今回は、蓮舫さんのプレゼン力について考えてみたいと思います。

 

取調室のカツ丼話法

蓮舫さんはもともと細くて高い声でしたが、民進党代表選挙のとき、どんどん声が低くなっていきました。リーダーとして低い声が有効であることをきちんと分かっているからなのです。低い声でハッキリ言い切っているので、とても説得力があります。このアピール力もあって、民進党の代表になりました。

蓮舫さんはタレントでキャスター出身。いつも、その経験や技術を最高度に駆使して話しています。

例えば、「ゆっくり」と「早口」、また「低い声」と「高い声」を頻繁に出し入れして話すことで、相手に対する攻撃力が高まることをよく分かっていて話しているようです。
刑事ドラマの取調室の場面で、「お前がやったんだろう!吐け!」と甲高い声で攻撃する刑事と、「まぁまぁ。お前だって母親がいるんだろう?安心させなよ」という低い声でなだめる刑事が、絶妙なコンビネーションで犯人を追い込む場面があります。私はこれを「取調室のカツ丼話法」と名付けています。
取調室では、これを二人の刑事が行うのですが、蓮舫さんはそれを一人でできる技術を持っています。

また、蓮舫さんがタレント時代に、ビートたけしのバラエティ番組「スーパージョッキー」の「熱湯コマーシャル」に出ていたのは、今や黒歴史。しかし、「やると決めたら身体をはって何でもやる」という度胸はこの頃から座っていました。民進党代表になってからも、追及疑似体験ゲーム「VR蓮舫」にも自ら出演したとき、やはりここでも蓮舫さんのスタイル は貫かれていると確信しました。「自分が何を期待されているのか察知して、それを徹底して演じる能力が高い」のです。

つまり、「攻撃力の高い野党」の代表として、どう演じればいいのかきちんと理解し、それを忠実に行ってきました。

ただ、これらの技術やタレント性が、民進党代表という立場にあって、裏目に出てしまったのではないでしょうか?

 

プレゼンの技術性3つのパターン

プレゼンの技術性には3つのパターンがあります。

 

Aパターン:信念・志と技術がつりあう。聞き手は、「本音で話している。信用できる」と感じる

Bパターン:信念・志はあるが、技術が下回る。聞き手は、「不器用だけど嘘を言っていない」と感じる

Cパターン:信念・志を技術が上回る。聞き手は「なんだかウソくさいなあ」と感じる

 

蓮舫さんの場合、プレゼン技術があまりにも高くて、「Cパターン」になってしまったのです。

蓮舫さんの話し方は、アナウンサーの話し方がベースにあります。アナウンサーは事実を正確に伝えることが仕事。しかし、リーダーは志を伝え、聞き手やチームメンバーが良き方向に行動を変えること。大きな違いがあるのです。
蓮舫さんの話し方は上手いのですが、志や、わき上がるような情熱が今ひとつ感じられません。そこをありあまる技術でカバーした結果、徐々に「なんとなくウソくさいなぁ」という印象を与えてしまったのです。
また、辞任会見の質疑応答でも、質問者に対するリスペクトが足りない場面も見受けられました。ロジカルで冷たい印象を与えてしまいました。

 

発声法に課題も

もう一点、蓮舫さんはじつは発声方法に課題があります。

辞任会見でもそうでしたが、蓮舫さんの声は頻繁に声帯疲労を起こしています。これは、のどだけで「がなっている」発声のためです。声帯疲労を起こした声というのは、印象がよくありません。横隔膜を鍛えて、正しい発声法を獲得すると好感度も高まります。

また、蓮舫さんは母音の響きが浅く、狭く感じられます。発声するとき口の中が狭いからです。母音が狭いと、リーダーとしての深みや人望に欠けて聞こえてしまいます。母音を広くとり豊かな響きで話すと、トップとして器の大きさを感じさせることができます。

 

技術も大事ですが、その前に「志やビジョンがあるか」「わき上がるような情熱を持っているか」ということが、トッププレゼンでは何よりも問われます。

そして、一番大切なのは、「自分の強みの土俵で勝負すること」

プレゼン技術は、あくまでそれを補うもの。決してプレゼン技術が主役になってはいけないのです。

 

 

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ITmediaエグゼクティブ様で講演いたしました

2017年7月26日、ITmediaエグゼクティブ様にて、「ビジネスリーダーは、プレゼン力を鍛えよう」というテーマで講演いたしました。
50名の方々がお集まりくださいました。

皆さまからいただきましたご感想の一部をご紹介いたします。

■あらゆる話しをする場面で使いたいと思います。明日から活かせる内容で嬉しかったです。
■社内・社外に向けたプレゼン時の準備・心構えの参考になりました。
■大変ためになる内容。次回も同様の機会があればぜひ参加したい。
■大きなプレゼンテーションのみでなく、日常の会議での話し方、チームメンバーの前での話し方の参考にもなった。
■とても興味深かった。楽しかった。日々の仕事から離れて自分のスキルを見直すきっかけになった。
■チームで発声練習をしたいと思います。ゆっくり低音を目指します!もう少し長いセッションも聞いてみたいです。
■グループ企業内プレゼン、業界研修会の講師の際、役員会プレゼンなどに役立つ。意外に直接的テクニカルな内容で即効性がありそうです。
■二回目になりますが、再度お話しを伺うことでより身につく様に思われます。実践に活かしていきます。
■最高でした。すごく実践的で良かったです。ぜひ客先提案の機会があれば活かしたいです。
■週末に講演することになっているので、話し方を活用したいと思います。Tipsがあり良かったです。

皆さま、熱心にお聴きくださいましてありがとうございました。

プレゼン本番で集中力を発揮する方法

「プレゼン本番で、いつも集中できないんですよ。失敗することも多くて、もう、プレゼンが嫌いになってしまいそうです。何か良い方法はないでしょうか?」

というお悩みをよくいただきます。

「プレゼン本番で集中力を発揮したい」

これは、多くの人に共通する願いだと思います。

ではなぜ、集中できないのでしょうか?

人前で話すことは誰でも緊張します。緊張すると、普段より多く雑多なことを考えてしまいがちになります。本番間際に思いついても、それでプレゼンが良くなることはほとんどありません。むしろ、マイナスの結果に向かうことが多いのです。

そこで、本番直前は意図的に何も考えない時間を作ります。

私の場合は、少なくとも90分前には会場付近に到着し、静かなカフェやホテルのラウンジに入ります。ちょうどよいカフェがなければ会場の待合スペースでも良いと思います。もちろん、主催者側に楽屋を用意していただければベスト。何処もないときは、人気のないトイレの個室に入ったこともあります。

そこで30分、何も考えない時間を作るためです。

できるだけ周りの音を遮断するために耳栓をし、椅子に座り、静かに目をつぶります。最初のうちは、「これでもか、これでもか」というほど、いろいろなことが頭の中に浮かびますが、その一つ一つを、ピンセットでつまみ出すようにイメージします。

そうすると、頭の中が徐々に静まってきます。

このような状態になってから臨む本番は、頭の中がすっきりとクリアになり、集中できていることに気がつきます。

私自身、今日は講演本番があります。そう書いているそばから、心配ごとや、次々と雑多なことが思い浮かんできますが、90分前まで放っておくことにいたしましょう(笑)

 

 

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話しが上手いのに説得力がイマイチ、というトップを簡単に変える方法

 

「うちの社長、話は上手いんですけど、なぜか、説得力がないんですよね」

今までたくさんのプレゼンを見てきましたが、長い間記憶に残っているプレゼンと、すぐに忘れてしまうプレゼンには、一つの違いがあります。それは、説得力があるかどうか。つまり堂々として、聴衆とコミュニケーションできているかどうかの違いです。

どんな人でも、簡単に「堂々として見えて説得力の上がる方法」があります。

最近のトッププレゼンで強く印象に残ったのは、先週もご紹介した日本交通会長、Japan Taxi社長の川鍋一朗さんです。

川鍋さんは大きな手を、めいいっぱい広げながらプレゼンしていました。それは、まるでピアニストがダイナミックに鍵盤をつかむような手ぶりなのです。特にセンセーショナルな内容を話しているわけではありませんが、記憶に残り、堂々として見え、説得力がありました。そして、ただでさえ大きな手を広げて話すので、舞台上で華やかさも感じられました。

「たかが手振り」と思いがちですが、どんな人でも話しの内容に合わせた手振りを使うことで、堂々として見え、説得力が格段に上がります
特に、手を広げる動きはオープンな印象を与え、聴衆と深くコミュニケーションすることができます。

ただ、「内容に合わせて手振りをつけましょう」と言っても、話すことに精一杯で、実際は手振りの出来ない方が多いのです。
そこで、慣れない方が手振りをつけるためのコツをお伝えしましょう。

手をカチッと両脇に固めてしまうと、いざ動かそうと思っても動かすタイミングを逸してしまいます。手は最初から空中に上げ、出来るだけベルト位置より上に置いて、常に動かせる体勢にすることです。これで自由に手を動かせるようになります。

また動かし方にバリエーションをつけます。

川鍋さんは、手を「ぐわっ」とどんぶりをつかむような形にして、まるでピアノを弾くように動かしていました。こうすると、説得力が上がります。

また、両手をひろげて、ろくろを回すように前後に動かすと、パッションが感じられます。

インパクトが強いのはグーです。グーを出すと、力強いメッセージが伝わりますが、グーを頭より高い位置に掲げると、さらに強烈なイメージになります。ガッツポーズのように両手をあげれば最強です。

手振りをつけるともう一つ良い点があります。自分が話しやすくなるのです。カラオケで、手をリズムに合わせて動かしたり、身体をゆすったりすると、ノってきますよね。それと同じです。

最初は手振りをつけるのが恥ずかしいかもしれません。しかし、手振りをつけることで、だんだんと話しやすくなっていき、聴衆とのコミュニケーションもとれて話しに集中して聞いてもらえるようになります。

 

 

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言葉に魂を宿らせる方法

「ウチの社長、特訓の成果で、プレゼンではスラスラと上手に話せるようになりました。
でもなぜか、『心がこもって聞こえない』と言われるんですよね」

こんなご相談をいただくことがあります。

そもそもプレゼン最大の目的は、「プレゼンを聞いた人の心が動き、良き方向に行動を変えること」。
人は感情で動きます。いくら上手に話せるようになっても、不思議なもので、言葉に魂が宿っていないと、人の心は決して動きません。

皆様もご経験はないでしょうか?
「この人、いかにも話し慣れた感じなんだけど、どこか心がこもっていないなぁ」

トップが話す場合は、必ず動かしたい相手がいます。
言葉に魂を宿らせるためには、どうすればよいのでしょうか。

2017年5月11日、日本交通会長の川鍋一朗さんが「陣痛タクシープロジェクト・マタニティギフト発表会」でプレゼンを行ったときのことです。私はここまで心こめて話す経営者は、今まで見たことがありませんでした。

川鍋さんは、「実はやりたいことがある」と言い、宙を睨み、長い間沈黙したあと、覚悟したように正面を向いて話し始めました。

「陣痛タクシーを…無料化したい」
「内閣府に相談している…しかし、形にならない。…地団駄踏んでいます」
「国策として…全、妊婦さんに、広めたい。…各タクシー会社の強力が…必要です」

と、頻繁に大きな間合いを取りながら話します。ただ間合いを取るだけでは「間抜け」になってしまいますが、川鍋さんの場合は、心の中で思いがこみ上げて、形になるのを辛抱強く待ってから言葉に発していました。この間合いにより、言葉に重み生まれ、言葉に魂が宿って伝わってくるのです。

世の中の多くのトッププレゼンでは、このプロセスが省かれているのです。
一生懸命に覚えた内容を話したり、台本を読み上げるので、心が伝わってこないのです。
また、間合いによる静寂に耐えきれず、安易に言葉を発してしまったり、「あー」「えー」などの言葉を入れてしまい、せっかくの間合いを台無しにしてしまっています。

川鍋さんのような間合いは、耳には聞こえてきませんが、言葉を超えた無言の思いが強く伝わってきます。

間合いは、例えて言うならば相撲の立ち会いのようなもの。相撲の立ち会いは、黙っていても力士同士の気合いの高まりが感じられます。そして、力士はお互いの気合いが高まらなければ立つことはできません。だから、行司は気合いの高まりを見守るだけで「よーいドン!」などと言わなくても一番良いところで立てるのです。

これはプレゼンも同じです。

言葉に魂を宿らせる方法はたった一つ。言葉に魂が宿るまで言葉を発しないことです。
このような間合いは、話しのプロであるアナウンサーが取るリズミカルでスマートな間合いとは、全く違います。

トッププレゼンで必要な間合いは、経営者の魂を込めるためのものなのです。

 

詳しくは、月刊『広報会議8月号』に執筆記事が掲載されています。もしよろしければご覧ください。

 

 

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プレゼンでPDCAを簡単に回し、満足度を格段に上げる方法

「いつも通り上手く話せたはずなのに、アンケート結果でお客様満足度が低いんですよ。寝ている人もいました」

コンサルティングにいらしていたあるトップから、こんなご相談がありました。プレゼンは、いつも話している内容なので、もし満足度が低いとすれば何か別の理由があるはずです。動画を見てみると、意外なことが分かりました。

そこで、そのトップに簡単なコツをお伝えしたところ、1週間後の講演会では、お客様満足度は最高の評価になったのです。

さて、どんなことをしたのでしょうか?

講演の録画を見ると、まるで「お風呂場」で話しているような状態でした。声が響きすぎて何を話しているのか聞き取りにくいのです。

調べてみると、会場は多目的な音楽ホールでした。音楽ホールは、演奏が上手に聞こえるよう、残響を長めに設計しています。また音楽ホールに限らず、教会のような天井が高い会場も残響が長めです。

響きが長いホールでプレゼンをすることになった場合のコツは二つあります。

一つ目は、リハーサルをすること

早めに到着して実際に話してみることです。そして、できれば担当者の方に客席に座ってもらい、聞こえ方をチェックしてもらいましょう。自分で録画して確認する方法もありますが、客席に座って聞いてもらうのが確実です。

二つ目は、とにかくゆっくり話すこと

いつも通り話していると残響が声にかぶってしまい聞こえにくくなります。長めに間合いをとり、「これでもか」というくらいゆっくり話してください。ゆっくり話すためのコツは、「滑舌良くしなければ」と気にしすぎないことです。残響の長い環境で滑舌が良くても、ゆっくり話せなければ話しは聞こえません。

ただ、残響の多い音楽ホールは素晴らしい面もあります。お風呂で歌うと、いつもより上手に聞こえて気持ちいいですよね。音楽ホールも同じ。「どんな人でも良い声になり、上手に聞こえる」のです。ぜひゆっくり話して、音楽ホールの良い面を活かしてプレゼンしてみてください。いつもより評価があがります。

今回の改善点が分かったきっかけは、アンケート調査と録画でした。普通は、アンケートと録画をしないので、「何が悪いか分からない」ことが多く、PDCAを回すことが出来ませんアンケートと録画は、プレゼンの品質を維持するために必須なのです。

冒頭のトップ、最初はあまりプレゼンが上手ではありませんでしたが、この方法でPDCAを回すようになって徐々に上手くなりました。

プレゼンは、アンケート調査と録画という一手間をかけるだけで、お客様満足度は格段に上がっていくのです。

 

 

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プレゼンで、意味なく揺れる「女子揺れ」を撲滅する方法

プレゼンで、女性特有の注意点があります。

言葉のリズムに合わせて頭や体を細かく振ってしまう話し方です。

これは「女子揺れ」とも言われています。

・話しながら体がフラッと細かくゆれる
・ひざをピョコンとする
・髪の毛を触る・かき上げる

などの動作も見られます。95%の女性は無意識にやっていて、可愛らしい印象を与える場合もありますが、ビジネスのプレゼンでは落ち着き無く見えてしまいます。女性以外では、若手の男性に多く、年配男性でも人前で話すことに慣れていない方に多く見られます。

意外にこの話し方はプロの方でも多いのです。先日、ベテラン女性アナウンサーさんがコンサルティングを受けにいらしてくださり、「確かに多いです」と話していました。

また、この癖は他人に指摘されてもなかなか直りません。

昔、私も首をゆすりながら話す癖がありました。録画を見て初めて気がつき、ショックを受けてしまいました。首を揺するどころか、体の中心線もブレて、意味も無く胴体をクニャクニャしながら話しています。直そうとして無理矢理体を固定して話そうとすると、言葉の流れが悪くなり、上手く話せなくなります。

これは、特に緊張しているときに表れます。体や首でリズムをとって話すことで無意識に緊張を和らげているのです。

しかし、いくら「緊張を和らげているのですよ」ということでも、これでは自信がなさそうですし、落ち着き無く見えてしまいます。良いことを話していても、説得力がないのです。

しかし、ある二つのことをすれば、この癖は直り、説得力ある話し方に変えることができます。

一つ目は、横隔膜です。

横隔膜は呼吸をするための筋肉です。しっかりと横隔膜を使えるようになると体幹が安定し、体をクラクラ動かして話そうとしても出来なくなります。「意識していないのに揺れる」ということは、横隔膜がしっかりと使えていないということです。

横隔膜を使うコツは、下腹をしっかり張りながら、息をいつもより多めに吸って話すことです。

二つ目は、手の動きです。

手を広げ、前に出して話すことで、体がバランスをとることが出来て揺れがおさまります。手振りを使えば、堂々として見え、説得力も上がります。

プレゼンで95%の女性は自分自身が揺れていることに気がついていませんので、ぜひ注意してみてください。そして、男性の方は女性が揺れていることが気になっても、なかなか言いにくいと思います。その場合はこのブログを紹介してみると良いかもしれません。

 

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『Mr.パーフェクト』ソニー平井社長が、誰にも見せなかった姿

 

「社長が『あまり人前に出たくない』と言うんですよ。困っています」

広報担当の方から、こんなお悩みをよくうかがいます。

とても参考になったトッププレゼンがありました。

2017年3月31日、銀座・ソニービルで、50年間続いたソニービルを閉館するイベントがありました。ここでソニーCEOの平井一夫さんが登壇されました。

驚きました。なんと平井さん、テナーサックスを吹いたのです。しかも、サックスは初めて。会社の会議室で一ヶ月練習したそうです。

平井さんのプレゼンは、2012年トップ就任直後から数多く見てきました。どんなプレゼンスタイルも完璧にこなします。まさに『Mr.パーフェクト』なのです。しかし、初めてのテナーサックスを吹くとは…。「ここまでやるのか」と驚きました。平井さんは常に自らの殻を破り続けているのです。

でも、こう思われる方もおられるのではないでしょうか?

「それは平井さんだから出来るのでは?」

じつはサックスを吹いた後、控え室に戻るエレベーターを待つ平井さんを偶然見かけました。報道がだれもいない廊下で一人、「ふっ」ととても疲れた表情をされていました。今まで見たことがない平井さんの表情でした。人前で楽器を演奏するだけでも本当に緊張しますし、前の日眠れなくなる人もいるくらいです。しかも多忙な中、練習一ヶ月です。

そのとき、どんなことでも全力投球し、一生懸命に演奏して皆に幸せを届けようとする平井さんの気持ちが心に染み、初めて分かりました。

社員は、「社長にこうなってほしい」と思っています。プレゼンに臨む社長さんに、「これを付けて下さい」と素敵なポケットチーフを買ってあげる社員さんもいます。実は社長さんは、こんな社員の思いを知らないことも多いのです。

平井さんが違う点は、社員の思いを分かっている、ということです。
一方、多くのトップは、「社員のために自分は何ができるか」ということを、口には出さなくても常に考えています。気がついていないだけなのです。

冒頭の広報さんに、「このことを、ぜひ社長さんに伝えてみてください」と申し上げました。

トップでなくても同じことです。プレゼンで、皆さんも自分の役割を演じてみると、色々なことが変わってきます。

詳しくは、月刊『広報会議7月号』に執筆記事が掲載されています。もしよろしければご覧ください。

 

 
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「社長室の状態」でプレゼンしないために

ある大企業のトッププレゼンを取材したときのことです。

恐らく、いつも通り平常心でリラックスされているのでしょう。
プレゼン中、客席に背中を向けたり、海外著名人ゲストがスピーチする横で反り返り後ろに手を組んで見ていたり、部下のプレゼン中は紙に何か別の書き物をしていたり……
ガタガタに緊張するよりは良いかもしれません。
ただ怖いことに、普段の心構えは、舞台の上では透けて見えてしまうものなのです。ちょっとした心構えで大きく好感度が高まるのに、惜しいことですね。

以前、日本コカ・コーラ株式会社 代表取締役社長だったティム・ブレットさんに、「プレゼン力診断」の取材をさせていただいたことがあります。(最近、ブレットさんはザ コカ・コーラ カンパニー西ヨーロッパ地域代表取締役社長に就任されました)

一番印象に残ったシーンがあります。
ブレッドさんは、最前列に座って部下のプレゼンを集中して見守り、プレゼンを終えた部下に自分から手を差し伸べてがっちり握手していたのです。

この時、とても似たシーンを思い出しました。

クラシックのオーケストラの演奏会で、演奏後に指揮者が、楽団員やソリストと握手したり、一人一人立たせたり、何度も出たり入ったりして聴衆から拍手をもらうシーンを見たことがある方は多いと思います。昔から続いている習慣ですが、深い理由があります。

指揮者は自分で音を出せません。自分がイメージする音楽を作るためには、楽団員に音にしてもらうかしかありません。オーケストラの団員が聴衆の前で賛辞されることで、楽団員は名誉に感じ、次回さらに磨きをかけた演奏をするようになります。さらにこのシーンは聴衆から見て美しくもあり、「この演奏は素晴らしかった」と印象づけることができ、演奏の感動と満足感を高める効果もあるのです。仮に演奏の一部でミスをしていたとしても、プロが気にするほど実際の聴衆は細かいミスまで分からないものです。

これは会社でも同じこと。ブレットさんは、この相手をリスペクトする欧米的な習慣が自然に身についていて、無意識に行っていたのではないでしょうか?

一方で日本の多くのトップは、「社長室の状態」をそのまま持ってきて講演会場でプレゼンしていて、とても損をしています。
ブレッドさんと同じことを日本人がやると「嘘くさい」「キザだ」と思われるかもしれません。しかし心から信じて堂々と行えば、板について見えるものです。お客様も、相手へのリスペクトをしっかり感じることができます。

じつは「演じるプレゼン」のほうが聴衆には伝わるのです。

欧米式からも学べることは沢山あります。
これからのトップは、「会見での人格」も育てるべきなのです。

 

 

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語尾落ちすると伝わらない。どう直すか?

こんなお悩みをよくいただきます。

「どうしても語尾が不明瞭になります。語尾までしっかり話せるようにしたいのですが…」

実は声が良くて滑舌が良い方でも、語尾が不明瞭な人は意外と多いのです。
そういう方は、ご本人では意外なほど「自分が語尾落ちしている」ことに気がついていません。

そして自分の録画や録音を聞くと大変驚かれます。

「え?これ、自分?最後まで聞こえていない…。何言っているかわからないよ…」

私が会見でプレゼン取材していても、語尾不明瞭な方は意外と多く見受けられます。たとえば、

「当社はこの戦略を実現すべく、この施策がむにゃむにゃむにゃ…」
「このようなことは、当社としては絶対にむにゃむにゃむにゃ…」

場合によっては、肯定と否定の区別もわからないこともあります。聴き手の解釈次第で、全く正反対に受け取られてしまう可能性すらあります。
さらに語尾が不明瞭だと、聴き手は何を言っているのかを一生懸命聞き取ろうとしてストレスがかかり、内容理解が浅くなります。
一対一の会話なら相手も「もう一度おっしゃっていただけますか?」と尋ねてくれますが、トッププレゼンでは誰も聞き直しません。

せっかく大切なプレゼンなのに、伝えたいことが伝わらないのは、とてももったいないことです。

語尾落ちが厄介なのは、気がついても、すぐには直らないこと。
「語尾までしっかり話さなければ!」と意識しすぎると、なにをしゃべっていいのか分からなくなり、口が止まってしまう方もいます。

語尾落ちするのは、滑舌の問題ではありません。滑舌が悪ければ最初から最後まで聞こえ難いものです。
語尾落ちには、原因がいくつかあります。

【原因1】頭の回転が早く、次にしゃべることや次のチャートが気になってしまう人。話し方が前のめりで、言葉のリズム感が早く、間合いがとれていないので、聴衆は話についてこられなくなります。
【原因2】優しい性格で、日頃からはっきりとしたものの言い方をしない人。
【原因3】意外と多いのが、言葉の最後で口や鼻に手をやってしまう身振り手振りのクセがある方。これをすると声の響きがストップされてしまい、大変聞こえ難いものです。

上記で共通するのは、語尾の最後で息を抜いてしまうことで起こります。息の流れをつかさどる「横隔膜」の筋肉を緩めてしまうと、呼吸が流れなくなり、とたんに声の響きが落ちてしまい、滑舌の良い人でも聞こえなくなってしまうのです。

語尾落ちをなおす対策があります。
・まずゆっくり話すように心がけること。
・そして言葉の間合いで息をしっかり吸い、横隔膜をしっかり使い、最後まで息を流すこと

「語尾落ちしないように!」と考えると、かえって話しにくいものです。
意識してゆっくり話し、息を吸って無意識に横隔膜が使えていれば、話しの内容に集中出来ますし、自然に語尾落ちしないようになります。

 

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「プロンプター依存症」の副作用

ある日本を代表する企業のトッププレゼンを見に行ったときのこと。
スラスラと淀みなく出る言葉。時折出る笑顔。会場の聴衆にもしっかりと目を向けています。

しかし、どこか不自然さが伝わってきます。
話している言葉も、まるで完成された綺麗な文章をそのまま読んでいるようで、パッションが伝わってきません。

目を見ていたら、すぐにわかりました。
目はこちらを向いていますが、聴衆とアイコンタクトしていないのです。
ふと視線の先をたどって後ろを振り向くと、巨大なプロンプターに、トップが読み上げるスピードに合わせて台本がゆっくりと流れていました。その文章には、「間合をとる」「笑顔」という注意書きもしっかり書かれています。

プロンプターは便利な道具です。
プロンプターを使えば、間違いなく話せます。
しかも会場を見ながら、いかにもアイコンタクトをとっているように話すことができます。
最近、多くのトッププレゼンで、プロンプターが使われるようになりました。
トップがプレゼンで一番怖いのは、「何を言うか忘れること」。
だからプロンプターを一度使うと離れられなくなるものなのです。

しかし実は、読みながら話すことは、プロや経験豊富なスピーカーではないと、とても難易度が高いのです。
普通の人がプロンプターに頼ってしまうと、棒読みになったり、視線が泳いでしまったり、言葉に気持ちが入らなくなります。

文章を確認しつつ聴衆には読んでいるように感じさせず、生きたアイコンタクトも欠かさず、プロンプターを使っているのを誰にも気づかせずに、あたかも自然に「今そこでこのストーリーが生まれた」というように即興性を持って話すことは、話しのプロが相当の経験を積んでも難しいことです。

しかも、プロンプターには怖い副作用もあります。
「企業のトップならば覚えて話して当然」と思っている聴衆の期待を裏切って、「ああ、この人はカンニングしているのね」という、「ちょっとずるい人」という印象を無意識に持たれてしまうのです。これは経営者にとっては、大きなマイナスです。

先日、ユニクロの柳井正社長の会見に同席しました。
柳井社長は講演嫌いで、依頼があっても余程の理由がない限り絶対に受けません。
実際に決して上手ではありません。
会場では巨大なプロンプターが設置してありましたが、プロンプターは使わず、内ポケットからメモを取り出し、演台で広げて話していました。メモを置いていても、極めて強いアイコンタクトで聴衆とコミュニケーションし、太い声で自らの壮大なストーリーを腹の底から語っていました。

もちろん、メモを見ずに話すことができればベストです。
しかし、柳井さんが内容を覚えていることは皆知っています。
そしてメモを見ていることも隠しません。
堂々と自分の土俵に立って話しているので、全員納得してしまうのです。

プレゼンの目的とは何なのでしょうか?

間違えずに話すことではないはずです。
プレゼンの目的とは「そのプレゼンを聞いた人が良き方向に行動が変わること」です。
トップの溢れるようなパッションを自分の言葉で語るからこそ、人の心が動き、市場が動くのです

 

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サービス精神旺盛なトップに、広報が隠し持つ伝家の宝刀

 

広報の方から、こんな相談をよくいただきます。

『取材で困るのは、トップのサービス精神なんです。気分がよくなって、『あ、これはまだダメですよ!』というような情報まで提供してしまうんですよね。事前Q&Aもやっていますけど防ぎきれません。どうすればよいのでしょうか?』

確かに、ある小売業トップが会見で、まだ決まっていない閉鎖店舗の名前を出して大問題になったのも、つい最近のこと。

一方で、ついしゃべり過ぎるお気持ちもよく分かります。
しゃべり過ぎてしまうということは、裏返せば、サービス精神が旺盛だったり、責任感が強いということ。この資質はビジネスパーソンとして大事なことです。

実際にプレゼンで「あ〜、言っちゃった〜」というご経験がある方も多いのではないでしょうか?
ただ、頻繁に繰り返すのは困りもの。

2017年3月16日、有明にてファーストリテイリングの柳井社長のプレゼンがあり、取材に伺ってまいりました。
常に堂々と振る舞い、風格も増して、まさに「経済界の巨匠」。圧倒的な存在感を放っていました。

じつはここで、広報の隠れたファインプレーがあったのです。

囲み取材の最後に、こんな質問が出ました。

「米国・トランプ大統領について、就任前から柳井社長はいろいろとお考えをおっしゃっていました。改めてご意見お聞かせください」

柳井社長は、大統領選挙中、トランプ氏についてはかなり辛口の発言をされて話題になっていました。
たとえば、トランプ氏がまだ大統領候補だった頃、日経ビジネス 2016/10/31号にこんな意見を載せていました。

「米共和党はトランプ氏を大統領候補にしたことが恥ずかしくないのだろうか。もし彼が当選したら、米国の終わりの始まりだ。最もふさわしくない人物が大統領になることになる。」

こんな発言をした柳井社長だけに、会場は一気にヒートアップ。複数の記者から「社長!真ん中向いて話してください!」という声もかかりました。そんな中で柳井社長が、

「僕は政治のことはよくわからないが、トランプさんはあまり政治には入らない方がいいんじゃないかと思います…」

と言いかけた途端、広報スタッフが手を広げて大声で、「はい、時間です!」と間髪入れずに打ち切りました。

広報は、「会見時間の仕切り」を任されています。これも広報が持っている手綱の一つ。いわば伝家の宝刀です

トップ広報は、基本的にトップに任せつつ、トップの強みの土俵で勝負させ、個性を最大限に活かす。そして必要なときは躊躇なく手綱をグイッと引き締め、「終わり」と宣言する権限を行使すべきなのです。

柳井社長は、信念型の「超越型」トップなので、言いたいことを言ってしまいますし、全責任を負う覚悟でいますから、何を言っても許される存在です。信念型の「超越型」トップは、発言に「広報ストップ」が効かない場合が多いのも特徴です。囲み取材でトランプ大統領へのコメントが出たときは、広報さんの表情が一瞬で引き締まったのが見えました。

ただ、日本電産の永守社長や、ソフトバンクの孫社長もそうですが、柳井社長だからこそ言える発言をしてくれるからこそ、ファンも嬉しいものです。

様々な会見に伺いますと、Q&Aを完璧に準備しすぎて、トップが操り人形のような受け答えをしているシーンを見ることがよくあります。これでは、せっかくのトップの個性、会社の個性がまったく見えてきませんね。

素晴らしい会社、伸びていく会社のトップは、常に自然体であり、必ず強みの土俵で勝負しているのです。
だからこそ、その強みを活かし、「ここは危ない」と思ったら広報の伝家の宝刀を抜くべきなのです。

詳しくは、月刊『広報会議6月号』に執筆記事が掲載されています。もしよろしければご覧ください。

 

 

 

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パネルディスカッションを成功させるには?

「当社のトップがパネルディスカッションに参加することになりました。良い方法はありますか?」

という質問を受けることがあります。

良いパネルディスカッションとは何なのでしょうか。
それは、聴き手の前で、対話を通じて新たな知見を生み出すことです。

ただ、これは気の合う者同士で話すだけでは生まれません。また、上手なプロの司会者や単なる有名人を呼んでも生まれません。

どうすれば良いのでしょうか?

2017年2月10日に、ライフネット生命保険の岩瀬大輔社長のプレゼンを取材してまいりました。

岩瀬さんは、東大法学部卒、ボストン・コンサルティングを経て、ハーバード・ビジネス・スクールMBA上位5%の称号「ベイカー・スカラー」を授与され、ダボス会議のヤング・グローバル・リーダーズに選ばれ、現在40歳の若さでライフネット生命保険の社長。まさに絵に描いたようなエリートです。

この日、プレゼンの後にパネルディスカッションが行われました。LINEの田端信太郎上級執行役員と、FinTechの第一人者・増島雅和弁護士がゲストに招かれていました。

岩瀬さんは相手の話を十分聞いた上で、必ず自分の意見をぶつけていました。「人前だからこの程度でやめておこう」という手加減はせず、常に直球勝負。そして、ゲストの田端さんも増島さんも、岩瀬さんの意見を真正面から受け止め、自由に意見をのべていました。
こうしてディスカッション後半に向けて次第に3人の波長が合っていき、大胆で新しい考え方が聴衆の目の前で生まれていく、充実したパネルディスカッションとなったのです。

パネルディスカッションを成功させるには、メンバーの力量を高いレベルで揃えることが必要です。パネルディスカッションは、対話による「知のセッション」です。力量がバラバラだと良いセッションができないのは、ジャズトリオの人選と同じ。相手を厳選することが重要なのです。

「知のセッション」は、プロの司会者や有名人を呼んでも生まれません。的確な人選が、このパネルディスカッションを成功に導いたのです。

詳しくは、月刊『広報会議5月号』に執筆記事が掲載されています。もしよろしければご覧ください

ルー語のトッププレゼン

「本日ローンチいたしましたプロダクト、なんと従来比2倍のコストパフォーマンスをオファーしております。ミッション・クリティカルなオペレーションにオプティマイズしたコンフィグレーションも可能です。加えてクライアントにベストなベネフィットをオファーするために、A社様との強固なパートナーシップのスキームのもと、ステークホルダー各社様とのウィンウィンのリレーションもエスタブリッシュしており……」

何を言っているのか、おわかりになりますでしょうか?

デジタル系企業の経営者やマネージャーが、新商品や新サービス発表会でカタカナ用語を羅列しながらプレゼンしているのを見かけることがよくあります。

でも私のような一般人にとっては、何を言っているのかチンプンカンプン。

カタカナ専門用語を連発するのを、タレントのルー大柴さんの話術に例えて「ルー語」と言うそうです。相手がわからないのに、一方的にルー語で話していても、相手は共感しませんし、気持ちの波長が合うこともありません。

「ルー語を使わないから大丈夫」

でも、仮にルー語を使わなくても、トップの言葉が難しすぎて、相手に伝わらなければ、同じことです

子供向けの動物図鑑を編集している方が、

「子供向けの本だからこそ偉い先生に書いてもらうんだよ。本当に深く理解している人は、シンプルで、子供にでも分かるやさしい言葉を使うからなんだ

とおっしゃっていて、なるほどと思ったことがあります。

御社のトップは、相手にわかりやすい言葉で語っていますか?

プレゼンの立ち位置もメッセージ

 

小売業界会でも有名な、ある社長さんのプレゼンを見に行ったときのことです。

その会場は、高くて大きな舞台が設置されていました。プレゼンが始まると、社長さんはなんと舞台の角に立って話し始めたのです。しかも、ご自身はプロジェクターの文字を一生懸命に読んでいるため、客席に背中を向けています。私は何か嫌な予感がして、話しの内容が頭に入ってきませんでした。

一瞬の出来事でした。

なんと社長さんは、舞台の角から右足を踏み外してしまったのです。客席から「アアッ!」と小さく悲鳴があがりました。しかし間一髪、社長さんは持ちこたえ、滑落という最悪の事態は免れたのです。

ただその後も、なぜか社長さんは何事もなかったように舞台端に立ち続けていました。もしかしたら、極度の緊張で自らの危険に気がついていなかったのかもしれませんね。

他の方のプレゼンを見ていても、舞台端に立つ方がよくいらっしゃいます。これは危険です。万が一のことがあれば、プレゼンどころではありません。

他に良くない立ち位置で多いのが、舞台後方です。舞台後方の壁に近づき過ぎるのは不自然です。積極的に話したいという気持ちが伝わらず、お客さんが物足りなく感じてしまいます。できるだけ舞台空間の真ん中に立ち、大きな舞台なら真ん中より前寄りの方に立つと見栄えがします。私の場合、舞台前後を3等分にし、前三分の一くらいの位置を目安にして立っています。

とくにサービス業界の方に多いのですが、良くも悪くも「私はお客様より目立ちません」という謙虚な考えで、舞台真ん中に立つことを躊躇される方もいらっしゃるようです。ただ、プレゼンに限っては話し手が主役。お客さんも、主役が真ん中に立って堂々とプレゼンすることを期待します。

プロジェクターを使う場合は、プロジェクター画面と話し手が客席から見て同一線上にあるようにすると、お客さんとアイコンタクトがとれて満足度が上がります

これは会議室のようなフラットな場所でも同じです。

ただ、意外と舞台に立っている話し手は、自分が客席からどう見えているか分からないものです。ぜひリハーサルを行い、「客席からどのように見えているか」、他の方に立ち位置をチェックしてもらうと良いと思います。

メッセージをより強く伝えるための方法

「今度のプレゼン、色々な人たちが来るんです。皆さんに納得いく話をしたいんですよね」

先日お目にかかったトップが、このようにお話ししていました。

確かに大切なお時間を預かるプレゼン。「全員に満足して欲しい」というのはとても大切なことです。
しかし、ここで大きな落とし穴があります。その場にいる色々な人たちの関心を広くカバーする話をしてしまったりするのです。

でもこうなると、印象が薄いプレゼンになってしまうのです。

では、より強くメッセージを伝えるにはどうすれば良いでしょうか?

小泉進次郞議員が登壇している発表会に取材に行ったときのことです。有名な小泉さんが出るということで、700名以上の会場はメディア関係者も押しかけて満席。「東北のお土産を発信する」というテーマだったので、小売業のバイヤーや地方の生産者も集まっていました。

小泉さんの話しは、すべて東北での個人的に体験したお話しと、自分が得た気づきを話していました。このときの小泉さんが伝えようとした相手は、「生産者・バイヤー」。そこから1ミリもブレませんでした。自分自身の気づきを語ることで、借り物ではない強い想いがこもり、

「我々の強みは、必ずある」
「民間にしかできないことがある。頑張れ」
「国は 全力で応援する」

という声が、直接語らずとも、とても強く伝わってきました。

メッセージをより強く伝えるためには、伝える相手を明確に絞り込み、相手の関心事に直球を投げ込むことです。

しかし、話し手は逆に、「そこにいる全員に伝えたい」と思ってしまいがちなのです。
トッププレゼンでは大勢の人が集まりますし、メディア関係者も来ます。「せっかくだから、これも話そう、あれも話そう」、また周囲からは「この機会に、これも話してほしい、あれも話してほしい」となり、盛り沢山になってしまうものです。そうなると、逆に本来言うべきことが薄まり、帰り道「あれ?一体何の話しだったかな?」と思うことも多いのです。

どんな人でも、天才でなくとも、強くメッセージを伝えることは可能なのです。それは、ターゲットを絞り込むこと。
メッセージを絞り込めば絞り込むほど、逆により多くの人に想いが伝わります。
絞り込めば、メッセージは強くなるのです。

究極はその一人だけのことを深く想い、メッセージを考えることです

小泉さんの頭の中は、国民全体ではなく、たった一人の生産者や、たった一人のバイヤーさんだったのではないでしょうか。だからこそメッセージが強く伝わったのです。

どんなにたくさんの人前で話していても、究極は「一対一」なのだと思います。
ぜひ勇気を持って伝える相手を絞りこんでみてください。

プレゼンで10人中8人が聴衆の満足度を簡単に下げてしまう理由

どんなに上手なプレゼンをしたとしても、10人中8人、ある一つのことをしてしまうがために、お客さんの満足度を一気に下げてしまっていることを、ほとんどの人が気がついていません。そして、プレゼンが上手いと言われているようなトップでも同じようなミスをしています。

ある食品業界のトップ会見にうかがったときのことです。そのトップは有名な外資系コンサルタント会社から社長に抜擢された、いわばプロ経営者。話しは上手なはずでした。確かに、笑みを浮かべながら、メモや台本も見ずに細かい数字や戦略をスラスラと述べ、ポケットに手を入れて話す姿は自信満々で、いかにも外資系の優秀な経営コンサルタントという雰囲気です。

しかし、終わってみると予定30分のプレゼンが、1時間かかっていたのです。

そのため、予定されていた質疑応答はカット。隣に座っていた記者は「なんだ〜」とがっかりしています。
その後の報道も思ったより少なめでした。

知人が講演会をしたときのことです。話しはそこそこ上手くいっていたのですが7分過ぎてしまいました。終わってからアンケートを見せてもらうと、いつもより評価が低く、あるお客さんの感想には「7分過ぎていた。時間は守るべきだ」と一言書いてあったのです。

お客さんの満足度を下げるのは簡単です。時間をオーバーすれば良いだけなのです。

しかし、話し手のほうは緊張していたり、ついつい熱が入ってしまったり、時間が押していても「準備していた内容を全て伝えなくては」と一生懸命で、悪気無く時間オーバーしているのがほとんど。
そして多くの人は、「お客さんの大事な人生の時間をお預かりしている」、という最も大切なことに気がついていないのです。

今年の1月に行われたバルミューダ株式会社寺尾玄社長の新型炊飯器のプレゼンでは、予定時間30分のところを20分で終了していました。
これは希に見る見事なプレゼンだったと思います。短いからといって内容が薄いわけではありません。寺尾社長自身の感情も十分表現し、内容もシンプルで分かりやすく、隣のお客さんは「あっという間でしたね!(笑)」と満足そうでした。

多くのプレゼンは予定時間を過ぎてしまいます。内容が良くても時間を超過すれば、聞き手の満足度は確実に下がるのです。余裕を持って短めに終わるだけで聞き手の満足度は上がります。

聴衆にとっては、90分の話しを60分にしても満足度は変わりません。メッセージは、勇気を持って削り、全体の構成をシンプルにすれば、格段に分かりやすくなります。
だから、プレゼンが長くなりがちな方は、あらかじめ短めに資料を準備しておくことです。話した後、お客さんの印象は何倍にもアップするはずです。

「かっこいいプレゼン」をする方法

「社長は、かっこよくなくてもいいです。でも、せめてかっこ悪くなければ…」

企業の広報担当者さんから、こんな切実なご相談を受けることがよくあります。

お気持ちよく分かります。なぜなら、多くのトップは「自分は会社を代表して見られている」ということを意識していないからです。

でも、この「かっこいい」、「かっこ悪い」って何なのでしょうか。今日は、トップ広報にとっての「かっこよさ」について考えてみたいと思います。

2017年1月12日、蒸気でパンを焼くトースターで有名になった、バルミューダの寺尾玄社長が、新しい炊飯器の発表会を行うということで取材に行ってきたときのことです。

司会者から紹介されると、聴衆席からワイルドにあごひげを生やしカジュアルなジーンズ姿の長身の男性がスッと立ち上がりました。この男性こそ寺尾社長。そして、勢いよく肩を揺らしながら闊歩してきたかと思うと、会場フロアから長い足をのばし一気に壇上にのし上がったのです。そして、会場を睥睨する目の鋭さは、まるで獲物を狙うハンターの目。圧倒的なオーラを放って会場の空気を呑んでいました。

しかし、プレゼンが始まると、製品開発での失敗談を自虐的に一人芝居したり、炊飯器のプレゼンにもかかわらず体験から気づきを得た「カレー論」を恥ずかしがらずに滔々と語ったり、自らをさらけだしています。

私はそのとき、ある一つのシーンをイメージしました。

ロックコンサート。

寺尾社長は元ロックシンガーという異色の経歴も持ち主だったのです。服装から言葉からすべて自由に、自分の言いたいことを伝えるプレゼンスタイルは、過激で独白的なロックの演奏や歌詞と相通じるものがあります。寺尾社長の破天荒な生き様を見るようで強烈に印象に残りました。

ただ、この「かっこよさ」は、人生をかけて作り込んできた寺尾社長だけの世界です。それは例えてみれば鍾乳洞のようなもの。石灰を含んだ地下水が、長い年月ポタポタとしたたりおちて鍾乳洞が作られます。トップのパーソナルブランドもこの鍾乳洞と同じです。したたり落ちる一滴一滴の石灰水が人生経験なのです。寺尾社長の強いパーソナルブランドは、鍾乳洞のように人生を積み重ねていった結果なのです。

こうなると誰も真似をすることはできません

そして、もう一つ素晴らしいことがあります。寺尾社長のかっこよさは、バルミューダのおしゃれでエッジの効いた独自のブランドデザインと一致していたのです。

トップのパーソナルブランドは、企業ブランドの体現であるべきなのです。

「こんなこと自分には難しい」と思われるかもしれませんが、違います。

私のところにいらしたお客様でとても「かっこいい」方がいました。自らの人生の失敗や挫折を「かっこつけずに」深い洞察力で語るスタイルは心に染みいり、お帰りになった後もその余韻は鳴り響いていました。でも、そのスタイルは絶対に真似できません。なぜなら、プレゼンを「生き様そのもの」にまで高めているからです。この方でなくてはできないプレゼンなのです。

つまり、どんな方でも、鍾乳洞のように積み重ねられた自らの人生を見つめプレゼンに込めることができれば、誰も代替できない、説得力のある「かっこいい」プレゼンになるのです。

詳しくは、月刊『広報会議4月号』に執筆記事が掲載されています。もしよろしければご覧ください。

笑顔はすべてを癒やす

天才経営者として騒がれていた、あるトップのプレゼンを取材してきたときのことです。

コワモテで、映画俳優としても十分通用しそうな存在感。顔だけでなく経営もすべてロジカルに判断し、冷徹に大胆な改革を行うことでも有名でしたので、「怖そうだな」という印象でした。

プレゼンは低く響く迫力のある声で、資料をまったく見なくてもコンピューターのように正確な数字がスラスラ出てくるあたり、やはり評判通りと感じました。しかし、実際プレゼンを見ているうちに、予想を裏切るようなことが起こりました。

一見、無表情のコワモテにも関わらず、時折「ニコーッ」と良い笑顔がこぼれるのです。

会社は必ずしも経営状況はよくありませんでした。しかしその笑顔は、「こんな時にニヤニヤして不謹慎だ」と感じないものでした。逆に、ピンチの状況で出た笑顔を見て、私は「この方、凄いな」と感じ、思わず引き込まれてしまったのです。

透明感のある笑顔に、そのトップの人格が出ていたからです。

笑顔を見ると、人はなぜか安心します。

そして、笑顔になった本人も、笑うことで心も明るくなり、前向きになります。

「笑顔はすべてを癒やす」のです。

プレゼンは緊張するので、どうしても無表情になりがちです。そんなとき、無理にでもいいので、頑張って笑顔を出してみることです。「心が入ってない笑顔なんて不自然だ」「緊張して笑えるわけない」と思うかもしれませんね。でもそうではありません。笑顔になることで、心もついてくるのです。

「心が先か」、「行動が先か」、と言われれば、躊躇無く「行動が先」です。最初は、心が足りなくとも、行動しているうちに心が後からついてくるのです。笑顔を出しているうちに、聴衆も安心し、自分自身も過度な緊張が和らぎ、リラックスした気持ちになってくるのです。

もしこれからプレゼンがある方は、ぜひ勇気を持って最初の挨拶から笑顔を出してみてください。きっと話しやすい雰囲気でプレゼンが出来ると思います。

応援している人は必ずいる

ある会社の発表会で、有名な社長さんがプレゼンされるということで取材に行ってきたときのことです。

プレゼンが始まると、最初、緊張感からか言葉の合間に余分な「えー」という発音が多く出ていました。「えー」とか「あー」の発音が多いのは、聴衆にとって聞き難いものです。このままではもったいないと思いました。

私は一番前の真ん中に座っていましたので、アイコンタクトとあいづちで社長さんを応援することにしました。

すると社長さんは、私と頻繁に視線を合わせてくださるようになり、だんだん話しが滑らかになって、言葉に自信が感じられるようになってきました。そうすると不思議なものです。私の周囲に座っているお客さんも「うん、うん」と、うなずきながら聞くようになっていきました。社長さんは、その後一気に調子を上げられて、本来のパッションあふれる見事なプレゼンをされたのです。

平均からすると、力量十分なプレゼンではあったのですが、聴衆が共に創り上げるという気持ちを持つことで、さらに素晴らしいプレゼンになり、聴衆も楽しむことができます。

例えばカラオケで歌うとき。仲間に手拍子を打ってもらったり、ニコニコと体を歌のリズムに合わせてゆすってもらうと、歌いやすくなりますよね。それと同じです。

随分前のことですが、私は、老人ホームのボランティアに行っていたことがあります。ここでは、ホームのおじいちゃん、おばあちゃん方が主役。「赤とんぼ」や「ふるさと」など、皆さんがよく知っている歌を、目線を合わせ、リズムに合わせて体をゆらしながら歌ってあげると、今まで全く無表情だった皆さん方が、涙を流しながら歌ってくださったことがあり、こちらまで感動してしまった経験があります。

聴衆が冷たかったり、警戒している雰囲気の中では、やはりどんなに舞台慣れていても話しにくいものです。「退屈するのは話し手の責任だ」という厳しい見方もありますし、話し手自身も、「聴衆が退屈しているのは準備不足」と振り返ってみる必要があるかもしれません。

しかし、熱心に聞いてくれているお客さんが、一人でも二人でもいるだけで、本当に話しやすくなるものです。マラソンで言うと、ペースメーカーのような方々です。会場には、熱心に聞いてくださるお客さんが必ずいらっしゃいます。私は、自分のプレゼンのときは、熱心に聞いてくださるお客さんを早く見つけるようにしています。

私が、まだビジネスのプレゼンを始めたばかりの頃。今から比べると未熟であったと思います。でも、そんなときでも熱心に聞いてくださる方はいらっしゃいました。それはどんなに有り難かったことか。今でも鮮明に覚えています。

熱心な聴衆に気がつくことでプレゼンは格段に良くなるのです。