ある大企業の女性広報部長さんがこうおっしゃっていました。
「社長から責任ある役職を打診されたんだけど、自信がないんですよね」
普通は喜んで受けるような大抜擢のポジションです。しかしその方は「自分にはムリ。断ろうかな」と悩んでおられました。
これはとてももったいないことです。
実は、自分の弱さを認識した上で、そのことを隠そうとしない人のほうが、最強のチームを創れる可能性が高いのです。
100円ショップのダイソーを成功させた創業者の矢野博丈さんも、人前で自分の弱さを隠さない方です。
出演したテレビ番組で、苦難の創業秘話を語ると人目をはばからず泣き、イベントや商談には、頭に巨大ナイフを刺した被り物をして「申し訳ない、こんな格好で社長です」と皆を笑わせながら登場します。
また、雑誌のインタビューでも、虚勢を張らずに弱い自分をさらけ出しています。
「ワシは運が良かっただけ。先見の明とかそんな話じゃありません。運の悪い企業は油断するとすぐに倒産しかねません。改めて考えると、ダイソーも本当に大大夫なんでしょうか。こんなにいろんな歯車がうまく噛み合うということは、逆にそろそろ噛み合わなくなる可能性もあるわけで…。お話ししている間に怖くなってきました」(日経ビジネス2017.12.11)
『THE CULTURE CODE 最強チームをつくる方法』の著者、ダニエル・コイルは、「リーダーが自分の弱さを認め、チームで弱さを共有することが強い協力関係をつくり上げる」と述べています。
一般的に、リーダーは弱さを隠そうとして、強い自分をアピールしがちです。しかし、このような虚勢を張るリーダーの姿を見た部下は、自分も弱さを隠すようになります。こうして組織の中で信頼関係が生まれにくくなってしまいます。むしろリーダーが弱さを隠さないことで、相手との間に「弱さのループ」が生まれ、チーム全体が信頼関係が生まれて、協力しあうような組織になっていくのです。
もちろんいつも弱音ばかりを吐くのは論外です。
しかしリーダーに抜擢されたのは、上司が「この人は任せれば力を発揮する」と潜在力を見極めたからです。
真面目に仕事に取り組みつつ、自身の弱みを隠さないリーダーが率いるチームが、強いチームに育つのです。