プレゼンの笑顔は、ふざけて見えるか?

 

「プレゼンでは笑顔を心がけています。でも、『ニヤニヤしてふざけている』って言われないでしょうか…」

講演で、「笑顔が大事ですよ」とお話しすると、こんな質問を受けることがあります。

笑顔は、すべてを癒やします。

ただ、普通のビジネスパーソンは、自分では笑っていると思っていても、笑って見えないことがほとんどです。
だから笑顔を出せるということはとても凄いことです。

 

最近拝見したプレゼンの中で好感度が高かったのは、スタバの水口社長と、KDDIの高橋社長です。お二人とも笑顔が素晴らしく、もし「笑顔選手権」というものがあったとしたら確実に上位入賞できそうです。

特に高橋社長は、基本の顔の作りがいつも笑っているようなお顔をしています。この顔は、黙っていても周囲が和みますので、とても得をしていると思います。

そして高橋社長の場合、笑ったような顔をしていても、決してユルんだ空気になりません。囲み取材で高橋社長を至近距離で見ていましたら、目の奥がまったく笑っていないことに気がつきました。目の奥底に湛えた厳しさに、怖ささえ感じたほどです。これは、あらゆる修羅場をくぐり抜けて来た人だけが持つまなざしです。このまなざしが、ニコニコと記者との敷居を外しながらも、程よい緊張感がある理由なのだと思いました。

水島新司のマンガ「ドカベン」で微笑三太郎という三塁手がいます。微笑は、「笑ったような顔をしていて優しそうだが実は気が強い」というギャップのあるキャラクターが際立っていました。高橋社長は、まさに経済界の微笑三太郎だと思います。

「高橋社長は別格だ」と思われるかもしれませんね。でも、どんな人でもユルんだ空気にならないポイントがあります。

それは「緊張感」です。
皆さんは、プレゼンのとき緊張しますよね。
緊張感さえ持っていれば、雑談をしているときの笑顔とはまったく違ったものになります。

緊張感は悪いもののようにばかり言われますが、じつは本番ではなくてはならないものなのです。

ぜひ、笑顔を出して、素晴らしいプレゼンをしてください。

 

 

 

早口で話すと、戦う前から負ける

 

国会中継の生放送を何気なく見ていたときのことです。

質疑者に女性議員さんが立っていたのですが、猛烈な早口に驚きました。さらにその女性議員さんは、とても甲高い声なのです。

早口過ぎて言葉が処理し切れず、言葉をはしょって話しているところも多く見られました。早口は、下り坂を下るように加速がつくものです。話す速度はますます速くなっていきました。国会はあらかじめ質問の内容が決まっていますので、もし言葉が聞き取れなくてもある程度内容が予想できるので良いのですが、そうでなかったら何を話しているのか理解できなかったでしょう。

また、ご本人も自信がないのか、資料から目を離せずに読んでいるので、相手の大臣とのアイコンタクトがとれていません。質問の様子を見ていた大臣は、口元にニッとした笑みを含みながら、「勝ったな」とばかりに自信に満ちて立ち上がりました。

国会の質疑は、国民を代表して質問する場。説得力を持って話をすることが問われます。「舌鋒鋭く」という言葉もあるくらいで、攻撃力も必要とされます。真剣勝負の戦いの場でもあるのです。

しかし早口では内容を聞き取りにくくなりますし、聞いている方は話を理解するのに頭がついていけません。加えて、戦う相手とアイコンタクトをせず、文章を読み上げているようでは、自信がないという印象を与えてしまいます。

早口では説得力が失われてしまうと言うことです。

早口で話すことで、戦う前から負けているのです。

この女性議員さんは、猛烈な早口でも話しはできていたので、本来滑舌は悪くないと思います。興奮していたせいか、息を吸うときに「ヒィッ」という音がしていました。十分に息が吸えていない状態です。女性議員さんの改善点は、落ち着いて息を吸うことです。深く息を吸って、ゆっくりと落ち着いた良く響く低い声で質疑をお願いしたいと思いました。

現在の国際状況を見ても、日本は大事な場面に立たされていると感じています。国会議員の皆さんには、自らの発言が国の将来を左右しているという覚悟を持って、戦いの場としての話し方を極めていただきたいと願っています。

 

困った質問を受けたときに、まず行うべきこと

質疑応答で、答え難い質問が出てしまったとき。
あるいは、予想してなかった質問を受けてしまったとき。

緊張して、不用意に答えてしまったり、ごまかそうとしてしまう場面をよく見かけます。
こういうときは、どうすればいいのでしょうか?

子供の頃、学園ドラマが好きでよく見ていました。
クラスで問題が起こり、女子生徒が先生に訴えます。

「先生!山田君がお掃除係りをサボって困ります!」

すると先生は、「それはいけませんね」…とはいいません。

「そうか。山田君はお掃除係りをサボるのか。」

と、ゆっくりと響く声で、質問そのものを繰り返すのです。
なぜ繰り返すのでしょうか?

3つ理由があります

一つ目は、「質問者を受け止めました」という意思表示にもなること。これで質問者が安心します。
二つ目は、すぐに結果を言ってしまうと質問者が考えなくなってしまいますので、これが避けられること。
三つめは、質問を繰り返すことで、先生側が質問について考える時間が取れるようになり、またゆっくり話すことで心も落ち着き、より良い回答ができることです。

ただし、相手に対してリスペクトがない場合、相手にムッとされてしまうことがありますので注意が必要です。

私自身、自分が質問したときに「これって、こういうことですよね?」と甲高い声で質問し返されたことがあります。これはマニュアル通りなのですが、ちょっと印象が良くなかった記憶があります。

困ったら、まずは「ゆっくりと、質問を繰り返す」。
また困った質問は緊張して息が止まりがちになります。
繰り返す前に大きく息を吸うのも効果がありますよ。

 

質疑応答を盛り上げるには、リズム感

 

「プレゼン後の質疑応答が盛り上がらない」
これはよくあることです。
質疑応答はお客様の意見を聞く貴重な機会。できれば良い感じで進めたいですよね。
質疑応答で、お客様の言葉を引き出すコツがあります。

2018年5月29日、KDDIの「au発表会2018 Summer」記者発表会で、新しくトップに就任した高橋誠社長のプレゼンを取材したときのこと。高橋社長の囲み取材は大盛況。記者から活発に本音の質問やコメントが数多く出ていました。

高橋社長のお人柄もあるのでは?と思いがちですが、理由はそれだけではありません。

記者から質問があると「ほう!」とか「おおお〜!」とか、特に辛口の質問には「えっ!?…えええっ!?」と3割増しくらいで大げさにリアクションしながら、リズミカルに掛け声をかけていました。
高橋社長の掛け声で、記者を乗せながら言いやすい流れにしていたのです。囲み取材の雰囲気が「祭り」のようになっていく不思議な感じでした。まさに盆踊りのノリなのです。

後日分かったのですが、高橋社長は和太鼓をやっていたとのこと。
和太鼓はテンポ感、リズム感、間合いが命。
メロディや歌詞がありませんから、テンポとリズムだけで情緒を表現します。また、和太鼓は掛け声も大事です。「セイヤ!」 「ソイヤ!」といった様々な掛け声を、ここぞという間合いでかけながら音楽に魂を入れていきます。記者にへの掛け声は、まさに和太鼓の掛け声を彷彿とさせるものでした。

質疑応答は、お客さんとの対話。
相手が気持ちよく話せるように、掛け声をかけてのせてあげることも質疑応答を盛り上げるコツなのです。

質疑応答がなんとなく盛り上がらないなあと感じたら、思い切って質問に対して「ほう!」と掛け声をかけてみましょう。

月刊広報会議2018年9月号「プレゼン力診断」で、KDDI高橋社長のプレゼンを診断しました。
この日は、悪女キャラでブレイク中の菜々緒さんも登壇しました。高橋社長の、菜々緒さんに対する怖い物知らずのコメントもリズム感抜群でした。

下記リンク先からも読むことができますので、もしご興味ありましたらご覧下さい。

「微笑みながら空気は緩めず 卓越したコミュニケーション術」

 

 

知ったかぶりと、謙虚

 

「絵描きになりたかったんですよ。ゴッホの絵が好きです。特に売れる前の絵が好きですね。ゴッホは絵が売れるようになって堕落しましたね」

ある有名な経営者が、司会者から「引退したら何をしたいですか?」という質問にこう答えました。

しかし、文化人でもある司会者は、さすがの切り返しをしました。

「あの…。ゴッホは、生きている間は、絵は売れなかったんですよ」

一瞬の沈黙の後、その経営者はまったく違う話題に切り替えていました。
質疑応答やインタビューの場面で、知ったかぶりをしたり、知らないことを誤魔化すと、すぐにメッキがはがれます。

経営者の集まりで、ある経営者の質疑応答を聞いていて、「さすが」と感じたことがありました。
質問の際に、「私は勉強不足なので、この点について教えてください」と正直におっしゃっていたのです。
有名な方ですし、きっとそれなりに知識もお持ちの内容だったと思いますが、謙虚な姿勢に好感を持ちました。

虚勢をはらず、卑屈になったりせずに、素直に「勉強不足なのですが」という言葉を使えると、自分自身が楽になります。

ただ、いくら楽だからと言って、何回もこの言葉を使うと、本当に勉強不足の人に見られますので、ほどほどに。
ここぞというところで使いたいものです。

 

質問を受ける時は、首を動かすのを止めよう

 

インタビュアーの質問を受けるとき、何度も相づちをうちながら頻繁に首を上下させたり、ペコペコとお辞儀を繰り返す方をよく見かけます。

確かにこうすることで、謙虚さが伝わったり、「話しを聞いていますよ」という印象を伝えることができます。

反面、落ち着きがなかったり、自信がないように見えてしまうのが玉に瑕。
質問者から見ても、あまりに細かく「うん・・うん・・なるほど」と相づちをされると、話を促されているようで、自分のリズムが崩れてしまうこともあります。
相づちをうちながら、アイコンタクトはまったく違う方向を向いているのも印象がよくありません。私自身も「ちゃんと聞いてくれているのかしら?」と思ったことがあります。

質問を受けるときは、首で頷くよりも、アイコンタクトを重視したいところです。

ある会見で、質問の聴き方が素晴らしい、と思ったトップがいました。

その方は、首はほとんど動かさないのに、穏やかなまなざしできちんとアイコンタクトをとっているので、深く聞いていることが感じられました。頷かなくても声や表情で、きちんと相手に敬意を持って聞き届けていることが伝わるのです。そして、自分が答える番になったときに初めて、「そのとおりです」「なるほど」というように大きくうなずいてから話し始めるのが好印象でした。首を動かさずに人の質問に答えることで、自信のオーラにあふれ、堂々たる経営者としての姿を印象づけていました。

大事なプレゼンの質疑応答では、首を動かさないように意識しながら質問を聞き届けるようにすることで、自信と信頼感を与えることができます。たとえ困った質問を受けても、首をかしげたり、身体を細かく動してはいけません。

質問を受ける際に、必ずアイコンタクトをとりながら、要点だけをメモをとって聴くと、首をフラフラさせることななくなり、大きく改善することができます。ぜひお試し下さい。

 

トップを演じ続けるトップ

 

2018年4月18日、マツモトキヨシHDトップ、松本清雄社長のプレゼンを取材したときのことです。

松本社長は創業家3代目トップ。マツモトキヨシでのキャリアは、20歳のとき。時給650円のアルバイトから始まった現場からのたたき上げです。

プレゼンは、極度な緊張からか硬さが目立ちました。加えて、人前に出ることにあまり積極的ではない印象を受けてしまったのです。

松本社長は、もともとまったく社長になるつもりはなかったそうです。ジャーナリスト財部誠一さんとの対談「経営者の輪」でのインタビューから引用します。

 

ある時期から昇進のスピードが少しずつ速くなっていたのです。これはおかしいぞと。昇進や昇格するたびに『私にはまだ早過ぎるので結構です』と断っていました。ところが『駄目だ。』と言われて、どんどやらされてしまった感じです。 最後はやるしかないのかと。38歳で(社長を)やれと言われ時には『もうやめて下さい』と思いました。

 

さらに松本社長は自称「引っ込み思案」とのこと。

「もうやめてください」という言葉と、人前で極度に緊張しながら「やるしかない」と一生懸命プロンプターを棒読みしている姿が重なり、胸が痛みました。

松本社長はトップになってすでに4年くらいたちますが、これまであまり会見に出てこなかったのも「できれば出たくない」という思いもあったのかな、と感じました。ただ、これだけ大きな会社のトップですから、ずっと出ないで済まされるわけにはいきません。今後、広報担当者さんが、プレゼンの苦手な松本社長にどのようにしてお話ししていただくか、そして、松本社長自身が「心から本当に話したいこと」を、目的意識を持って話してくださる時が来ることを祈るような気持ちでプレゼンを拝見し、記事を書かせていただきました。

世の中、社長になりたい人はたくさんいると思うのですが、なりたくない人もいるのですよね。創業家は大変だなあ、といつも感じています。

でも、トップは数多くの社員も抱えています。
だからこそ、トップを演じ続けることもまた、必要なのです。

広報はそんなトップをサポートしてあげたいですね。

 

詳しくは、「月刊 広報会議 7月号」をお読みください。

 

トップのちゃぶ台返し

 

「記者の質問に対して担当者が答えていたのに、トップがひっくり返すことがありますよね。これってどうなんでしょうか?」

ある会社の広報担当者さんのご質問です。担当者さんからするとストレスがかかる場面でもあります。

私も記者発表会の質疑応答で、そういう場面に何度か遭遇しました。

最近では、タニタの谷田千里社長です。今年3月8日に行われた会見で、記者から値段について突っ込んだ質問を受けたときのこと。担当者さんは「〇〇〇円位を考えています」と回答し、記者が「その値段は、ターゲットのお客さんを考えると、高すぎるのでは」と質問した時、谷田社長は「本当はまだ決まっていません」とあっさりひっくり返してしまったのです。

また昨年3月、ファストリテイリングの柳井社長もそうでした。新しく出来たユニクロの有明物流センターでの記者会見。物流センター内部は公開されませんでした。記者の「物流センターはいつ公開するのか?どんな整備をするのか?」という質問に対して、担当者さんが「具体的には答えられない」と回答したところ、突然マイクを手に取った柳井社長は「現状、人海戦術でやっている。上手くテクノロジーを使っていない。見せられる状況ではない」と言い切ってしまったのです。

スタッフの方は、ご自身が与えられた責任範囲の中でしか答えることはできません。一方でトップは会社の全責任を持っています。トップしか答えられないことも多いのです。そして場合によっては、全体のバランスを見て前言撤回・ちゃぶ台返しも必要になるのです。

 

 

 

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お洒落じゃないトップでも、ココさえ押さえればイケてるトップに!

 

「今度の記者会見、どんな服で出てもらったらいいのか…。ウチのトップおしゃれにまったく興味がなくて困っています」

ある広報担当者さんがおっしゃっていました。

それでは今回、とても素晴らしいトップファッションの社長さんをご紹介しましょう。

それは、タニタの谷田千里社長です。谷田社長は、ヒット映画「体脂肪計タニタの社員食堂」でも有名になった、ちょっと気弱な副社長役のモデルにもなった方。

2018年3月8日、「『タニタカフェ』の事業展開に関する記者発表会」で谷田社長のプレゼンを取材したときのことです。谷田社長は、タニタの「カロリズム」身につけて登場しました。カロリズムとは、身につけるだけで1日の消費カロリーなどを知ることができる活動量計です。

谷田社長は、雑誌の取材であろうと、会見であとろうと、どんなときでもカロリズムをつけています。谷田社長といえば、「ネクタイの横にカロリズムを付けている姿」がトレードマークになっているほどです。もしカロリズムと知らなかったとしても、ネクタイの横という目立つところにつけているので、「一体何をつけているんだろう」と、とても気になります。

谷田社長は、カロリズムを身につけることで「常に改善点を探っている」のだそうです。これは、トップの製品に対する真摯な姿勢を感じさせてとても素晴らしいことですが、もっと良いことがあります。

それは、メディアに出る機会が格段に多いトップ自ら身につけることで、強力なトップセールスになるということです。

この究極の姿が、自社製品の仮装です。

ヤッホーブルーイングの井手直行社長は、自社製品「よなよなエール」のTシャツをいつも着用していますが、会見ではよなよなエールの仮装をして登場します。3年前に取材したときなどは、「月面画報」という新製品のユニークなキャラクターに扮しての登場で、聴衆の度肝を抜きました。

井手社長のプレゼンは、派手な仮装をして一見自己主張が強いように見えますが、違います。体を張って、命懸けで純粋に製品のPRをしているのです。プレゼンの全てが「ワンテーマ」であるということが素晴らしいのです。

例えば、「ジャジャジャジャーン!」で有名な、ベートーヴェンの「運命」をフリフリのフリルのついたブラウスで指揮したらおかしいですよね?基本的に黒のタキシードであるのは、作品を活かすためなのです。舞台に出てお客さんに伝えるということは、究極、主役は「コンテンツ」「作品」であるべきなのです。

プレゼンも同じです。

もちろん、最新ファッションで登場することも良いのですが、まず最初に「会見で何を伝えたいか」を考え抜いてから、内容を活かすためのファッションを決めるのがベストです。

谷田社長の会見記事詳細は「月刊 広報会議 6月号」の4〜5ページにも掲載されています。もしご興味ありましたらご覧ください。

 

 

 

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「低い声で話せ」。でも高田明さん、甲高いですよ?

「『リーダーは低い声が良い』というのは分かりました。ジャパネットたかたの高田明さんは大丈夫なんですか?」

私が、「リーダーは低い声で話すことで、安心感、信頼感、説得力が格段に上がる」と話した講演後によくいただく質問です。

独特の甲高い声で話す、テレビショッピング名物MCと言えば、ジャパネットたかたの高田明さんです。

じつは高田さん、経営者として、社内では物静かで低い声で話しています。2015年1月16日の社長引退記者会見でも、テレビショッピングとは別人のような低く落ち着いた声で話していたのが印象的でした。

 

今、日本経済新聞「私の履歴書」で、高田明さんが連載しています。4月16日掲載の第16回で高田さんはこう書いています。

甲高い声でしゃべる私のスタイルは、ラジオのころから兆候があったらしいが、テレビではさらにキーが上がった。『この商品を伝えたい』と思うと、自然にあのテンションになる。普段の私の話し声は低い方だから、いつも初対面の人に『テレビのときと全然違う』と驚かれる

 

高田さんは迫力のある激しい口調で怒ったりもするそうです。

高田社長の本「社長、辞めます!ジャパネットたかた激闘365日の舞台裏」(日経BP社)の中で印象深い事が書いてありました。

現社長でもある息子さんの旭人さんが、

「高田社長と何度も激しくぶつかりあった。社員の前でも平気でやった」

という言葉に対して、インタビュアーが「高田社長が激しく言う姿が想像できません」と言うと、

「社員はみんな想像できますよ(笑)」

と答えます。

物静かな語り口調と、社員の前で激しく言う姿。そして、テレビショッピングの甲高い声。どれも同じ高田明さんです。

高田さんは、テレビのバラエティ向けとトップとしての声を自然に使い分けていました。それは、ビジネスの修羅場や、厳しい交渉、マネージメントの経験を積んで、自己の様々な可能性を探求した結果なのです。

 

 

 

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「全員会見」でワンチームにまとまった、セールスオンデマンドの発表会

 

「ウチの社長、存在感がないんです。いるのかいないのかわからないし…。ハッキリしないし…。社長らしく、強いリーダーシップをもって話してほしいのですが…」

広報担当者さんから、こんなご相談がありました。

「サラリーマン金太郎」のように強烈なカリスマタイプのリーダーならば、確かに強いリーダーシップを発揮します。外資系企業トップにはそんな方が多いですよね。しかし、リーダーシップは、それだけではないのです。

2018年1月24日、セールス・オンデマンド株式会社の「窓掃除ロボット 新製品発表会」で、室﨑 肇社長のプレゼンを取材してまいりました。

これほど自然体の社長はなかなか見たことがありません。身振り手振りもなく、まっすぐに脱力した立ち姿。それで淡々と語ります。まったくインパクトがないのです。

しかし「凄い」と思ったことがありました。

一切資料を見ず、すべて自分の言葉で語っているのです。当たり前のように思えますが、世の中では原稿がないと話せないトップはとても多いのが現実。商品に関するテクニカルな言葉も、完全に自分の中で消化して話しているのが伝わってきます。

実は室﨑社長は、一見地味な、本格派なのです。

そしてこの日、最も印象深かったことがありました。

小野寺英幸事業本部本部長が、エネルギッシュなプレゼンを行い大活躍。質疑応答でも社長を横にしてほとんどの質問に答えていました。室崎社長は、「俺を差し置いて」などとは微塵も感じさせず、むしろ自然体でそれを見ているのです。また、司会も社員が上手に担当、パートナーである韓国RF社のリ・スンボク社長も心のこもった見事な日本語で挨拶を行いました。

会場にいた社員とパートナー全員がイキイキと活躍する「全員会見」でした。

日本型と欧米型のリーダーの違いはエゴマネジメントなのかもしれません。強力なリーダーシップで組織を統轄する欧米型リーダーは、「自分はこういう考えだ」という強い自我(=エゴ)が求められます。しかしエゴが強すぎると、部下の良さを殺してしまうこともあります。こうなると組織の力は引き出せません。

しかし、室﨑社長のようなリーダーは、そのような強い自我はあまり感じられません。そのかわり自分の存在感を消して社員の積極性を引き出す「引き立て力」を持っています。

反面、このようなリーダーシップは物足りなさも残ります。それは明確なビジョンが見えにくいこと。会社のビジョンはトップしか語れないことです。

引き立て力によりチームの力を引き出し、そのスタイルは残しつつ、明確なビジョンも語れるようになれば、更に会社は成長していくのではないか、と感じた会見でした。

 

 

 

 

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トップの大ボラと大ウソは、正反対

 

「うちのトップ、取材のとき気持ち良くなってついつい大ボラを吹いてしまうんです。いくら”オフレコ”と断っても、言ったことは記事に出てしまいます。どうすればいいのか…」

ある企業の広報担当者さんが困り顔でご相談に来られました。
「大ボラ」と「大ウソ」…。一見似ているようで、実は違います。

3月27日に、カルビーの松本晃会長が突然の退任を発表しました。

昨年5月、その松本会長がアリババと提携して越境EC事業の発表会を実施。発表会を取材させていただいたときのことです。

「(中国でフルグラを)1000億(売る)ってやつ。もともとホラ吹きですから、ホラ吹いてまして」

と、”松本節”が炸裂していました。

質疑応答でも、

「今、国内500億、海外1000億、まだホラの段階でして。『ホラは2〜3年すると夢に変わってそのうち現実になる』」

と発言したときは、隣に座っていたアリババ株式会社のCEOが苦笑い。また、

「ついでにホラを吹いてしまうと、究極のフルグラ販売地域は北米だと思ってます」

と言い、アリババのCEOもさすがに「えっ?」という目線で松本会長のほうを思わず見ていました。カルビーのフルグラ事業本部本部長さんは、急にご自分の肩を揉み始め、辛そうなお気持ちが伝わってきました。

後日、メディア各社の記事を確認。案の定、「ホラ」の部分はカット。「目標1000億円」という見出しのオンパレード。メディアとの会見では「オフレコ」はありません。たとえ「ホラ」と断っても、事実として報道されます。メディアはニュースバリューが大きい話題をいつも探しているのです。

実は松本会長は、確信犯。取り上げられるのを狙ってホラを吹いていたのです。

悟りをひらいた僧侶のような表情で、両腕をブランと脱力して立ちながら、「のしっ、のしっ」とゴルフのスタンスをとるようなポーズで話す松本会長。その姿は、「あしたのジョー」の主人公、矢吹ジョーが試合中にとる”ノーガード”を彷彿とさせ、リラックスしながらも、まったくスキのないプレゼン姿でした。

松本会長は、プロ経営者です。カルビー会長兼CEOに就任。カルビーを一気に成長させました。 だから結果がすべて。結果を出すことを最重要視する現実主義です。

松本会長は、「なんでもあり」の人でした。

ちなみに『ホラを吹く』で有名なのが、『ホラ吹き三兄弟』と呼ばれている日本電産の永守重信会長、ファーストリテイリングの柳井正社長、そしてソフトバンクグループの孫正義社長です。

もちろんウソはダメです。不祥事の際に、実は自分は知っていたのに「知らなかった」というトップがいます。これは誤魔化すための大ウソ。目的は自分の保身です。

しかし大ボラは違います。誤魔化しではありません。自分の保身ではなく、自分を追い込むために、大ボラを吹いているのです。

言い換えれば、大ボラとは「大きなビジョン」。
だからホラは、大きければ大きいほど良いのです。

 

 

 

 

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ウチのダジャレ社長に困っています

 

「社長がダジャレやオヤジギャグの連発で困っています。正直やめてほしいんです。これっていいんでしょうか?」

広報担当者さんからご相談をいただきました。

ダジャレ好きな方は、呼吸するようにダジャレをおっしゃるので、なかなか止められないものですよね。

ダジャレのマイナス点は…
・ウケないと場が冷え切ってしまう
・ウケるまで繰り返す人が多い。さらに場が凍ってしまう
・ダジャレが一人歩きして、本来伝えるべきメッセージが伝わらない

広報さんは頭が痛いですね。

一方で本来、ダジャレは良いことも多いのです。

まずトップの楽しい人柄がにじみ出て、共感が高まります。

以前、「ダジャレ知事」として有名な平井伸治・鳥取県知事のプレゼンを取材したときのこと。

「鳥取にはスタバはないけど、日本一のスナバがある」

何となく覚えている方もおられるのではないでしょうか?
平井知事就任後、鳥取県の知名度はかなり上がっています。

取材したプレゼンでは、
「鳥取県はほっこり県です」
「鳥取の女性はおっとりジェンヌ」

ゲストで元タカラジェンヌの遼河はるひさんに鳥取移住を勧めながら、

「はるひさんが鳥取に”はいる日”」

…など、平井知事がダジャレやジョークを言うたびに会場は笑いで包ました。こんな笑いの多い会見は見たことがありません。

「らっきょうを一日に4つ食べると病気にならないんです。私が言うとウソに聞こえますが、みのもんたさんが言ったので間違いないです」

と自虐的とも言えるジョークで一歩引きながら特産品を売り込むスタイルも板についていました。

注目は囲み取材。メディアがさかんに知事に「ダジャレを言わせよう」「ダジャレを引きだそう」と質問していたのが印象に残りました。残念だったのは、囲みでは調子がいまひとつだったようで、ありきたりの答えしかできず、ダジャレが出なかったのです。平井知事は、相当準備してダジャレを言うタイプのようです。

いまやメディアは、知事の面白いダジャレを待っています。その『お約束』を果たすから、記事になるのです

「平井知事=ダジャレ」というパーソナルブランドが確立しているのです。

「ブランドは、鍾乳洞である」という言葉をご存じでしょうか。石灰を含んだ地下水が、数千年から数万年という長い年月をかけて一滴ずつ滴り、鍾乳石が作られ、大きな鍾乳洞になります。ブランドもこの鍾乳洞と同じです。一滴一滴の石灰水の積み重ねで鍾乳石が出来るように、一つ一つの顧客満足の積み重ねでブランドが出来上がります。

「お約束を果たす」という顧客満足を時間をかけて蓄積することで、強いブランドが作られて、広まっていきます。「鳥取県の平井知事=ダジャレ知事」という強いブランドは、ダジャレを通じて、一つ一つの顧客満足を地道に積み重ねていった結果なのです。

センスの良いダジャレは、強烈な印象を植え付け、人に記憶されます。たとえば、受験で覚えにくい言葉をダジャレで記憶した経験はありませんか?メッセージとダジャレを上手く組み合わせると、市場に記憶され、爆発的な訴求力を発揮するのです。

ダジャレを言うのはとても良いことです。ただ、一過性で終わらせないこと。そしてダジャレのセンスを磨くこと。徹底的にダジャレという「お約束」を蓄積していくことで、トップのメッセージも高まります。

ですので広報は、ダジャレ好きのトップを止める必要はありません。むしろもっとセンスの良いダジャレを言ってお客様に人柄を印象づけるように、トップを鍛えてあげることが必要なのです。

 

 

 

 

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「トップはカッコつける必要はない」と実感した、ファミマ澤田社長の会見

 

「社長が社員の前で話しても、いまひとつ盛り上がらないんですよね」

広報さんからこんなご相談をよく受けます。社内コミュニケーションも広報の大事なお仕事ですね。

トップのプレゼンが、周囲の行動も変えていくことに気がついた会見がありました。ファミリーマート澤田社長のプレゼンです。

昨年、ファミリーマート新戦略発表会を取材をしたときのこと。「月刊 広報会議」の記事でも書きましたが、澤田社長のものすごい熱量の高さに圧倒されました。

会見で印象的だったのが、社員さんたちの明るさです。緊張しがちな会見場ですが、皆さんの表情がイキイキとしていました。
もう一つ、他の会見とは大きく違う点がありました。

囲み取材です。

通常のトップ囲み取材では、あらゆる事態に備えて隣に担当者がつきます。しかし澤田社長は、一人だけ。記者の質問に、しっかりとした声で、自分の言葉で答えていました。自分が分からない質問には、周囲の担当者を大きな声で「おーい!分かる?」と呼びます。その勢いに記者が大勢集まって囲み取材は大盛況。囲み後も、名刺交換に長蛇の列でした。澤田社長と同じ空気を吸っているだけで、元気になるような会見でした。

なぜ、澤田社長がここまで人を元気にさせるのか。その答えが、澤田社長が出演した11月放映の「カンブリア宮殿」(テレビ東京)にありました。

村上龍さんが、澤田さんが伊藤忠からユニクロに転職した時のことを聞いたときのこと。澤田社長は、

「リクルートに登録し、ご紹介いただいてユニクロに転職した。ヘッドハンティングでも何でもない。一介のサラリーマンなので、どこに行ったらいいのか分からない。マンションを買ったばかりで、借金もあった」

と正直に答えました。

村上さんは、「リクルートですか…こんな経営者は初めて」と驚きを隠しませんでした。

澤田社長は、自分の足で地方の店舗を回り、スタッフ一人一人の手を握って声をかけていました。宮城県の端にある店舗オーナーさんは少し涙ぐみ、「感動した。社長がこんな北の果てまで来るなんて初めてのこと」と言っていました。

なんと澤田社長は、社長就任前の3ヶ月間、ご自身が店舗のスタッフ研修も受けています。

澤田社長の徹底した現場へのコミットメントと同時に、裃を脱ぎ、「自分はこれ以上でもこれ以下でもない」というありのままの姿を、率直に、格好をつけずにさらけだしているのです。

どんなに凄いトップであっても「私たちと同じビジネスパーソンなんだ」ということが強く感じられました。

こういうリーダーに人はついていくのではないでしょうか。

澤田社長を見ていて、プレゼンでは格好つける必要などない、と感じました。人生をかけてきたトップが、ありのままの姿を素直に表現すれば、人は感動し、良き方向に行動を変えていきます。これが格好つけないトップ広報の理想型なのだと確信しました。

ファミマ・澤田社長の「カンブリア宮殿」動画は、3/31まで無料視聴可能です。

 

 

 

 

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3月7日、「朝活広報会議〜関西の陣」で講演しました

 

3月7日、「朝活広報会議〜関西の陣」で講演しました。

「朝活広報」の講演はこれで2回目。1回目は東京、今回は大阪でした。早朝から40名がご参加。

「プレゼン力を鍛えよう」というテーマで、トップ会見を取材した実例から学び、すぐに使えるテクニックやボイストレーニングのワークショップなども行いました。「とても参考になった」「実務につながるヒントとなった」「理解しやすかった」等のご意見を多数いただきました。

関西の方々はコミュニケーションのフットワークが軽やかですね。ご意見や質問など、積極的に手があがりさすがと思いました。

とても話しやすく、素晴らしい時間でした。ありがとうございました。

 

 

 

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トップも人間だから、間違ってもいい

 

トップのフォローは広報の大切なお仕事。
広報にとって、会見でのトップの発言や一挙手一投足はとても気になるところですよね。

今年1月11日、「東京タワーリニューアル発表記者会見」で日本電波塔、前田伸社長のプレゼンを取材にしたときのこと。

スタッフの皆様の前田社長への気配りが際立っていました。責任者と思われる方は、社長プレゼンや質疑応答で一言一句に頷いていましたし、囲み取材ではフォローのコメントも入れていました。きっと常に近くにいる担当の方なのでしょう。

一方で、背後に立っている社員お二人も、目を見開き緊張感いっぱいの表情。緊張感が伝わったのか、記者の皆さんも徐々に静かになりました。

周囲がトップをサポートするのは良いことですが、一方で前田社長がとても慎重にお話ししたり、質疑応答で慎重に手元の答えを確認しながら読み上げている様子を見ていると、トップがもう少し自由に話せるような配慮をしても良かったのでは、と思いました。実際に囲み取材でご自身の言葉で話されているときは、とても良い表情で言葉もイキイキしていましたし、別の質問で何も見ないで答えた時は、やっと少し笑顔を見せてくれて、聞き手としてもホッとしました。前田社長は自然に話せば強みが出てくる方と感じました。

間違いを言うのはよくありませんが、トップに「間違ってはダメ」というプレッシャーをかけるのもよくありませんよね。「人間なんだから多少間違っても良いじゃないか」というくらいの余裕を持ったほうが、結果は上手くいくことが多いものです。

さらに詳しくは、「月刊 広報会議 4月号」プレゼン力診断に執筆した記事が掲載されています。もしよろしければご覧下さい。

 

メガネ選びは、トッププレゼンの一部です

 

最近、あるトップの写真撮影がありました。メガネをかけている方だったので、カメラマンより「メガネを何点か持って来るように」との指示があったのですが、最終的にはメタリック調でシャープなイメージの講演用メガネで撮影に臨みました。

「メガネは顔の一部です」というキャッチコピーがありましたが、トップのメガネ選びはとても大切です。メイクやヘアスタイルよりも、メガネは顔の印象を強く左右します。

メディア取材はもちろんのこと、人前に立つときは常に同じメガネをすることで、強い印象を与えることができます。

理想的なメガネの選び方をしている、と思ったのが、湖池屋の佐藤章社長です。
2016年に湖池屋の取材にうかがったとき、佐藤社長は「ポルシェデザイン」のメガネをかけていました。メタリックでフレームやテンプル(つる)の部分にスリットが入り、スタイリッシュで存在感のあるデザインです。佐藤さんはキリンビバレッジ社長時代からこのポルシェデザインのメガネを愛用しているようです。佐藤さんのようなに仕事でもブランドにこだわる人は、「これ」とブランドを決めたら変えないものなのでしょう。

星野リゾート・星野佳路社長は、10個のメガネを仮面のようにかけかえることで、モードを切り替えるといいます。仕事用メガネも毎年新しくするそうです。星野社長は2010年に「日本メガネベストドレッサー賞」も受賞しているほどメガネにこだわりをお持ちの方。星野社長は、メガネを変化させることがパーソナルブランドイメージにつながっています。

メガネで、相手に与える印象は大きく変わるのです。
「個人的に、このメガネが好き」も大事なこと。その上で、「そのメガネで相手にどのような印象を与えたいか?」も考えて、メガネ選びをしたいところです。

 

 

 

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羽生選手は、物語で人を動かす

 

羽生結弦選手の演技、深みがあって素晴らしかったですね。以前より、羽生選手の会見やインタビューにおけるプレゼン能力の高さには注目してました。

昨日発売の「週刊朝日」で、このテーマで取材を受けました。(p.157です)

羽生選手は”何を語るか”を周到に準備しています。これはビジネスのプレゼンでも参考になります。

羽生選手は、「王者になる」「アクセルは王様のジャンプ」「僕は勝ちたい」といった、羽生選手の生き様や哲学とか反映された「羽生語」を持っています。

これはトップでも同じです。
たとえば日本電産・永守重信会長の場合は、「千切り経営」「家計簿経営」「井戸掘り経営」。
あちこちで繰り返し話すことで、訴求力が高まり、注目されていきます。

羽生選手は、さらに物語を語る高い能力も持っています。自分の言葉で「自分の物語」を人に伝え、人を動かす。リーダーとして大事な資質です。羽生選手が将来その資質を活かせば、引退後も世界的に影響力のある存在になっていくと思います。

本選の陰陽師をイメージする演出も羽生選手らしく素晴らしかったのですが、予選ショートプログラムの演技も羽生選手の良い面を引き出しており秀逸でした。

羽生選手の資質と音楽の内容が、完全に一致しているからです。

音楽は、ショパン作曲、バラード第1番 ト短調 作品23でした。バラードとは「物語」という意味です。映画「戦場のピアニスト」でも、主人公のピアニスト(ユダヤ系ポーランド人)は、ドイツ軍将校の前でこのバラード第一番を弾き、その音楽に感動した将校により命を助けられます。

人は、物語で動く

それがプレゼンの神髄なのです。

 

 

 

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自分の言葉で語る、日本電産・永守さんの社長退任

 

2月15日、日本電産社長の永守重信さんが社長交代の記者会見を開きました。永守さんはCEO兼会長に就任されます。
今や日本電産は2兆円企業に迫る大企業。主な理由は「体力の限界」とのこと。世界中を走り回るのは並大抵の体力では持ちません。

以前より永守さんは素晴らしいプレゼン力の持ち主だと思っていました。腹の底から信じ、自分の言葉で語る姿は、桁外れの説得力。「千切り経営」「家計簿経営」「井戸掘り経営」など、永守さんの経験から来る、永守さんらしいどんな人にでも分かりやすい言葉選びは、皆が共感します。メディアへの訴求力にも繋がっているのです。

質疑応答の場でも、永守さんは自分の土俵から逃げません。株主総会では、ユーモアを交えながら逆に質問したり、反論したりしてすべて直接解答します。いわく、

「『貴重なご意見たまわりました』と生真面目にやったら(株主)が昼寝して終わる。株主との距離をぐっと縮めることも総会の意義だ」

2016年の世界経営者会議で登壇した永守さんを拝見しました。そのとき、

「私は2030年までやります。これはホラではなく約束します。『出来る』と信じて疑わないから。真田丸のお兄ちゃんも90歳まで生きた。ワシ、人間ドックで48歳なんで。気力と体力があれば事業は儲かる」

と言っていました。有言実行の永守さん。あと12年はやっていただけるものと信じています。

日本の経済のためにも、永守さんにはもっともっと活躍していただきたいですね。

 

 

 

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トップは、完全原稿がないと話せない?

ある社内広報担当の方から聞いた話しです。
社内イベントを、ある事業部の課長と企画していた時のこと。

課長「そうだ。冒頭で数分、A常務に話してもらおう」
広報「A常務は完全原稿を用意しないと話さないですよ」
課長「そんなのあり得ないよ。トップは自分の言葉を持っている。話せるよ」
広報「…じゃぁ、もし原稿が必要になったら、お願いしますね」
課長「まぁ、そうなったら、ね。あり得ないけど」

そして二人でA常務に数分のスピーチをお願いに行きました。

A常務「話してもいいよ。で、スピーチ原稿は?」

結局、課長は「あり得ないよ、これ」と言いながら、スピーチの完全原稿を作りました。

しかし本番では、A常務は原稿はほとんど見ずに、自分の言葉で話したのだそうです。

責任範囲が大きい常務ともなれば、事業全体の中で、個別事業の位置づけや意味づけはちゃんと把握できています。一方で常務ともなれば、多くの事業を見ているので細かいレベルまでは把握できていません。だから何も資料がないと困ってしまうのです。

本当に必要なのは、ポイントとなる言葉を書いた箇条書きのメモ程度の参考資料です。
A常務は、完全原稿を用意させた上で、自分なりの言葉に置き換えて話したのです。

しかし現実には、A常務のように完全原稿を消化して、自分の言葉に置き換えて話せるトップは稀です。
実は完全原稿をそのまま読み上げると、どうしても「借り物の言葉」になってしまい、パッションが聞き手に伝わらないので、消化不良になってしまいます。A常務はそのことがわかっていたのでしょう。

ですので、広報担当者がトッププレゼンの準備をする際には、完全原稿ではなく、ポイントの箇条書きだけを用意して、あとはトップの言葉で話してもらうように習慣づけていきたいものです。

 

 

 

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