知ったかぶりと、謙虚

 

「絵描きになりたかったんですよ。ゴッホの絵が好きです。特に売れる前の絵が好きですね。ゴッホは絵が売れるようになって堕落しましたね」

ある有名な経営者が、司会者から「引退したら何をしたいですか?」という質問にこう答えました。

しかし、文化人でもある司会者は、さすがの切り返しをしました。

「あの…。ゴッホは、生きている間は、絵は売れなかったんですよ」

一瞬の沈黙の後、その経営者はまったく違う話題に切り替えていました。
質疑応答やインタビューの場面で、知ったかぶりをしたり、知らないことを誤魔化すと、すぐにメッキがはがれます。

経営者の集まりで、ある経営者の質疑応答を聞いていて、「さすが」と感じたことがありました。
質問の際に、「私は勉強不足なので、この点について教えてください」と正直におっしゃっていたのです。
有名な方ですし、きっとそれなりに知識もお持ちの内容だったと思いますが、謙虚な姿勢に好感を持ちました。

虚勢をはらず、卑屈になったりせずに、素直に「勉強不足なのですが」という言葉を使えると、自分自身が楽になります。

ただ、いくら楽だからと言って、何回もこの言葉を使うと、本当に勉強不足の人に見られますので、ほどほどに。
ここぞというところで使いたいものです。