ある社内広報担当の方から聞いた話しです。
社内イベントを、ある事業部の課長と企画していた時のこと。
課長「そうだ。冒頭で数分、A常務に話してもらおう」
広報「A常務は完全原稿を用意しないと話さないですよ」
課長「そんなのあり得ないよ。トップは自分の言葉を持っている。話せるよ」
広報「…じゃぁ、もし原稿が必要になったら、お願いしますね」
課長「まぁ、そうなったら、ね。あり得ないけど」
そして二人でA常務に数分のスピーチをお願いに行きました。
A常務「話してもいいよ。で、スピーチ原稿は?」
結局、課長は「あり得ないよ、これ」と言いながら、スピーチの完全原稿を作りました。
しかし本番では、A常務は原稿はほとんど見ずに、自分の言葉で話したのだそうです。
責任範囲が大きい常務ともなれば、事業全体の中で、個別事業の位置づけや意味づけはちゃんと把握できています。一方で常務ともなれば、多くの事業を見ているので細かいレベルまでは把握できていません。だから何も資料がないと困ってしまうのです。
本当に必要なのは、ポイントとなる言葉を書いた箇条書きのメモ程度の参考資料です。
A常務は、完全原稿を用意させた上で、自分なりの言葉に置き換えて話したのです。
しかし現実には、A常務のように完全原稿を消化して、自分の言葉に置き換えて話せるトップは稀です。
実は完全原稿をそのまま読み上げると、どうしても「借り物の言葉」になってしまい、パッションが聞き手に伝わらないので、消化不良になってしまいます。A常務はそのことがわかっていたのでしょう。
ですので、広報担当者がトッププレゼンの準備をする際には、完全原稿ではなく、ポイントの箇条書きだけを用意して、あとはトップの言葉で話してもらうように習慣づけていきたいものです。