首を動かさず話すだけで説得力が上がる理由

 

あるワークショップでのこと。

「首を動かさないで話してみましょう」

という課題に対して、30人中、ほぼ100%の人が首を動かして話してしまいました。

参加者のコメントは、

「首を動かさないと、話せない…」
「え?首を動かしてないつもりだったけど…」

ほとんどの人は、首を動かすことは無意識に「自分のリズムをつくるため」にやっています。意識しなければ、人は無意識に身体がフラフラ揺れたり、首を振ったりしています。
動きは自分のためだけであって、聴き手ためではないのです。

では逆に、意識して頻繁に首を振りながら話してみるとどうなるでしょうか?

落ち着きなく、自信のない印象を受けてしまいます。この人と真剣なビジネスをしたいと思うでしょうか?

じつは、聴き手に対して正面を向き、動かずに姿勢やポーズを決めてみると、圧倒的な自信と説得力が生まれることに気がつきます。

歌舞伎でも、「見得を切る」というのがありますよね。そこに特別な存在感が生まれ、観客は引き込まれるのです。

プレゼンの場合は、首は固定し、手振りで表現していくのが安定感と存在感を感じさせます。

首を動かさずに話すことは、いざやってみると、簡単なようでいて、実行するのはなかなか難しいものです。今まで、いかに自分の話のリズムを作るために首をコクコク振っていたかということに気がつきます。プレゼンで、「意志を持って動かない」ということは、とても大事なことです。無意識に首を振っていることも多いので、ぜひ一度スマホで録画してみることもおすすめします。

 

不機嫌な顔は、しっかり印象に残る

 

10万円の指輪と100万円の指輪が飾ってあったら、「100万円の方が高級」と思う人が多いはずです。人は「高い商品は、高品質」と考えているからです。

だから高級品の値付けにはコツがあります。最初から高い値段にすることです。一度「安物」と思われてしまうと、後から値上げしたら「高い」と思われてしまうのです。
第一印象は大事なのですね。

このように最初に良い印象を与えることは大事ですが、その逆もあります。特にプレゼンでは注意が必要です。

ある年の「行く年来る年」で、名優と言われる俳優のNさんが司会をしていました。
途中で段取りの手違いがあったようです。Nさんは、カメラが向いてないと思い込んでいたのでしょう。「何やってんだよ!」とスタッフに対して怒っている姿がテレビに映りました。しかしある瞬間、Nさんはカメラに撮られていると気がつきました。さすが名優。即座に感じの良い司会者に見事に変身しました。

でもこのときの印象があまりにも強烈で、Nさんが映画やドラマでどんな素晴らしい演技をしていても、「スタッフに怒っていた気難しいNさん」というイメージが蘇ってしまうのです。

これは、私が俳優Nさんに対して、マイナスイメージが印象づけられてしまったためです。

メディアを集めたプレゼンのときも、スタッフの手違いに対して立腹したり不機嫌になる方をよくお見かけします。また、そもそもやる気があまり感じられなかったり、緊張感の無い方もいらっしゃいます。

でもその姿は確実にお客様に強い印象を残しています。そしてその印象をぬぐい去る機会は、なかなかありません。
これってとっても損ですよね。

プレゼンで不機嫌な顔は、強く印象に残ります。気をつけたいですね。

 

誰でも伝わるプレゼン構成のコツ

 

「子供たちにプレゼンする機会が多いのですが、子供でも伝わるコツってありますか?」

3月27日、ITmediaエグゼクティブ様講演の質疑応答で、このような良いご質問いただきました。

解決策は、結論から先に話すことです。

ありがちなのが時系列でお話しすることです。

時系列は話しが長くなりがちで、聴き手は「要は何なのかな?」と思って退屈してしまいます。結局、話しが伝わりません。ですので、ぜひ結論から話してください。冒頭で意図が明確になり聴き手は「聞いてみたい」という姿勢が瞬時にできあがり、話し手も話しやすくなります。

多くのプレゼンは「起承転結」で話しています。
もし多くのプレゼンを「桃太郎」に例えると、よくあるパターンはこうなります。

【起】桃から生まれた桃太郎が大きく育った
【承】村人は鬼ヶ島の鬼にいじめられていた
【転】桃太郎は村娘と恋に落ちたが、心機一転
【結】桃太郎は手下を従え、鬼をやっつけた

特に注意いただきたいのが【転】「桃太郎は村娘と恋に落ちたが、心機一転」の部分です。
もし映画や小説だと美味しいところです。ついつい語りたくなってしまいますが、ここはお客さんにとってはノイズになりやすいのです。

勇気を持って【転】は外して、【結】【承】【起】で話します。

【結】桃太郎は手下を従え、鬼をやっつけた
【承】村人は鬼ヶ島の島の鬼にいじめられていた
【起】桃から生まれた桃太郎が大きく育った

【結】桃太郎は手下を従えて、鬼をやっつけた、から開始して良いのです。

聴き手はウルトラマンだと思いましょう。
ウルトラマンは3分が経過するとカラータイマーが切れて地球をオサラバしなければなりません。聴き手の集中力は、長くても3分しか持ちません。まず結論から入れば、聴き手は聞いてみようかなという姿勢が出来上がり、最後まで集中して聴いてもらえます。

もしビジネスならば、結論・主張から話し、「なぜならば…」と話していくと、聞いてもらえます。

現代のビジネスパーソンは忙しいものです。子供だけではなく、ビジネスでも同じような考え方が必要になると考えます。

 

プレゼンの出来が冒頭15秒で決まる理由

 

プレゼンは、スタートで出来の善し悪しが決まります。

映画や小説は、クライマックスは最後のほうに来るものですが、プレゼンだけは違います。

特に、最初の15秒はゴールデンタイムです。

出だしの15秒は、聴衆が一番興味と関心を持って見ているところです。
ここでしっかりとお客さんのお気持ちをつかんでおく必要があります。
すべってしまったり、つまらないことを話してしまい、一度離れてしまったお客さんの気持ちは二度と取り戻しがききません。

特に危険なのは、「自己紹介」「時事ネタ」「自慢話」の『3J』(スリージェイ)です。

ビジネス・プレゼンの聴衆が興味があるのはテーマです。話し手にはほとんど興味がありません。だから、できるだけ早くテーマに入ることです。他のことは後からゆっくり説明すればいいのです。

この事のことに気がついたきっかけは、2つあります。

1つ目は、「広報会議」さんの連載で、50人以上の社長さんのプレゼンを取材してきて、気がつきました。

最初の15秒が素晴らしいと、プレゼンの結果は確実に良いのです。

2つ目は相撲です。

相撲は、「立ち会い」で勝負がつきます。

お相撲さんは、何度も水を飲んだり、タオルで汗を拭いたり、身体を叩いたりしながら、時間をかけて気合を高めていき、立ち会いに集中します。それほど、立ち会いとは大事なものなのです。

プレゼンも、話す内容を深く考え抜き、本番当日は集中力と気持ちを高めて冒頭15秒に臨みたいものですね。

 

ボタンダウンシャツでスーツを着てはいけない

 

これまで数多くのプレゼンを取材してきて、トップのファッションでとても気になっていることがあります。

それは、正式な場のプレゼンにもかかわらず、スーツにボタンダウンを合わせる方が多いことです。

ボタンダウンシャツはポロ競技に使われるようになって広まったシャツです。もともとはスポーツ用です。一般ではカジュアルな場面で着るものとされています。

ビジネスマンでもスーツにボタンダウンを着る方がいますが、スーツにネクタイでは合わせないのがルールです。こんなちぐはぐな格好をするくらいなら、スーツではなく会社のユニフォームの方が断然潔く見えると思います。ホンダの八郷社長が、たまに作業着でメディアの前に出られることがありますが、とても格好良く見えます。

(ボタンダウンではドゥエボットーニという襟の高いシャツがあり、これは正式な場でもOKとされています)

スーツに合わせるなら、ごく普通のYシャツを着ればまったく問題ありません。

正式なプレゼンをスーツで臨まれるとき、どんなシャツを着るか確認してみてください。

 

トッププレゼンは自分の強みで勝負

「ウチのトップには、あの会社の〇〇社長みたいに会社のことを力強くPRしてほしいのですが、あまり人前に出たがらないんですよね」

広報担当者さんからこんなご相談を受けることがあります。

確かに人には向き不向きがあります。しかし、会社のメッセージはトップが言うことで強い訴求力を発揮します。やはりどんどん人前に出て話してほしいものですよね。

先日、ユーシーシーフードサービスシステムズ株式会社の上島成介社長のプレゼンを取材してまいりました。

1933年創業のコーヒー専業老舗であるUCCは、UCCグループ会長・上島達司氏のもと、グループCEO兼社長を長男の豪太氏が、海外事業を統括するUCCインターナショナルを次男の昌佐郎社長が務めています。この日登壇した成介氏は三男。

実は私が当日会場に到着した時、入り口を間違えてしまいました。すると、成介社長が出てきて「入り口はあちらになります」といってご案内してくれました。また、私の背後に花壇があることに気がつき「あ、後ろが花壇になっています。お足元にお気をつけください」との気遣いもいただきました。

ちょっとしたことなのですが、会場でトップ自ら道案内する姿勢から、「すべてに責任を持つ」という創業家ならではの覚悟が感じられました。

成介社長はプレゼン前、緊張している様子が伝わってきました。しかし、舞台に出ると覚悟を決めたように集中。華やかに舞台慣れした姿ではなく、どちらかというと地味で内向的な姿でしたが、私をご案内していただいたような優しさと上品さに溢れて好感度の高いものでした。
プレゼン内容も、本格派コーヒーの老舗らしく、コーヒーの深い世界観を呼吸するように説明し、ご自身の強みを活かした「強みの土俵」で勝負する説得力の高いものでした。

トップになれば、人前に立つ立場も多いもの。そこでご自身のタイプや強みを活かしてプレゼンすれば、強い訴求力を発揮できるのです。

広報の皆さんにも、トップには理想とする「こうあるべき」というスタイルをお勧めするのではなく、トップのタイプを見極めてプレゼンを構成することを考えてみてはどうでしょうか。

詳しくは、「広報会議4月号」に記事が掲載されています。ご興味ありましたらご覧下さい。

 

聴き手との対話を深めるプレゼン

 

先日、ある記者さんから取材を受けました。

ストレートで本質的な質問をいくつもいただきました。
そうすると、こちらも考えるのですよね。
そしてまた新たな質問をいただき、対話が深まる面白さを感じました。

このような深い質問を受けると、私はその後も考え続けてしまいます。

「あの質問は本当はどういう意味だったのだろうか?
私の答えはあれでよかったのだろうか?」

考え続けていくと、気づきがあったり、新しいアイデアが生まれたりします。

立場を変えて自分が質問するとき、いつも質問の難しさを感じています。
対話が深まらず「つまらない質問をしちゃったなぁ」と反省することもよくあります。
聞くだけなのに難しいのですよね。

ですので良い質問を投げかけてくださる方の力量には敬服しています。

良い問いを投げかけると、相手は深く考える。
その答えにより、さらに新しい問いが生まれる。
そしてまたさらに深い答えが返ってくる。
この良い循環が生まれることが、対話の醍醐味ではないかと思えます。

これは一対一の対話ですが、この対話を不特定多数の方々と行うのが、プレゼンではないかと思います。
聴き手の方々は、黙って聞いているだけでも目や気で問いかけてきます。
それを感じるようになれれば、聴き手との深い対話が生まれてきます。

プレゼンで対話の深まりを感じられるようにしたいですね。

 

プレゼンでやってはいけない動作ワースト3

たくさんの講演やプレゼンを拝見してきましたが、8割以上の方々が悪気なく「やってはいけない動作」しておられます。ご自分で動画を見て、「え?」と驚く方も多いのです。

(1)手を後ろで組む
「休め」の姿勢のように後ろで手を組む姿勢です。
これは何か隠しているように見えてしまいます。
また、人によっては「偉そう」という印象にとられますのでご注意ください。

(2)腕組みする
胸の前で腕を組む姿勢です。
聴衆に対してブロックしているイメージに見られます。
質疑応答でされると、「怒っているのかな?」と心配になってしまいます。

(3)指で差して指名する
攻撃的なイメージで、「上から目線」になります。
慌てていると思わずやってしまう方が多い代表的な動作です。
政治家で意図的になさる方もいます。
手の平を上にして「どうぞ」と指名すると良いでしょう。

これらは全て手の動きですよね。手は、両脇にたらすか、表現したいときはベルトの位置より上で動かすことです。そして手は握るより広げている状態が「聴き手を受け入れているというオープンなイメージにつながります。

皆さん、「自分はやっていない」と思われていても「自分のことは分からない」ものです。一度、スマホで動画を撮られてみることをおすすめします。

プレゼンで分かりやすく話せない理由

 

「簡単なことをわざわざ難しく話してしまう」

という方が結構多くいらっしゃいます。

難しい話しをする方にはある傾向があります。プレゼンの後に質問をすると、その答えがさらに難しく、かえって分からなくなってしまうということが往々にしてあるのです。

「クロネコヤマトの宅急便」の生みの親である小倉昌男さんが、「『やさしく言えるから管理職』――できないのは自らが理解していないから」についてお話しされていたのがたいへん参考になります。

・・・・(以下引用)・・・・

・やさしく言えるから管理職です。聞く側(部下)が難しく感じるということは、理解できないということです。理解してもらわなければ、部下の方は会社が求めている行動が十分にできなくなってしまいます。

・人は理解していないことはやりたくないし、できないものです。部下を含めた社員がこれでは、組織はまとまりません。

・管理職の一番の仕事は、きちんと理解してもらえるように伝えることです。

・やさしく言えないというのは、管理職自らが理解していないということです。

・・・・(以上引用)・・・・

 

やさしく語ることは、相手の立場に立つということだと思います。

そのためには、まず自分ができる限り深く理解をして、そして、相手の立場に立って「もし自分が初めてこの話を聞くとしたら」という想像力を働かせなくてはなりません。プレゼンテーションは、自分が管理職でなくてもお客さんに理解して行動してもらうためのものですから、考え方としては管理職と同じです。

難しいことをやさしく説明するということは、内容を深く分かっていないとできないことです。子供向けの科学の本や辞典とか、初心者向けのビジネス書など、簡単に面白く書かれている良く出来たものの著者をみると、実は難しいところまで深く理解できている人が書いているのです。

やさしい言葉で語ること、つまり「自分が消化できている自分の言葉で語る」ことの大切さを感じています

風邪で大事なプレゼンを失敗しないために

 

風邪が流行っていますね。こうなると、マスクが手放せません。

そもそも大事なプレゼンで風邪を引くのは、とても困ります。
声も出ませんし、大勢集まっていただいた聴き手の皆さんに風邪をうつしてしまうのも、迷惑ですよね。

上手にマスクを使いこなして、風邪を防ぎたいものですね。

ただ最近のマスクはフィルター性能が高いものは多いのですが、使い方を間違うと、ウイルスをほとんどカットできていないのだそうです。その原因は、マスクと顔のすき間。 すき間があるとフィルター性能が発揮できないのです。

そこで、鼻、ほほ、あごの3点に隙間を出さずフィットさせる必要があります。ワイヤー付きなら、折り曲げてフィットさせたり、プリーツ式ならあごまでしっかりのばせば、すき間が減らせます。フィットさせることに気をつけるだけで、カット率は大幅に改善するそうです。

さらに手洗いやうがいも、風邪の感染防止に効果があります。

風邪を防止して、万全の体調でプレゼンに望みたいですね。

プレゼンで好印象を与えるコツ

「プレゼンで好印象を与えるコツは何ですか?」と聞かれることがあります。

実はそんなに難しいことではありません。

昔、仕事場に行くと、まず「元気ですか!?」と聞いてくる先生がいらっしゃいました。

私は、「風邪をひているわけでもなく、疲れているわけでもないのに、なぜ『元気か?』なんておたずねになるのだろう?」といつも思っていました。

しかし最近になって、先生が「元気ですか?」とおっしゃっていた意味が分かってきたのです。

よくアントニオ猪木さんが「ダァーッ!元気ですかー!?」とおっしゃっていましたよね。
国会で質問に立ったときもコレをなさったので、この方は相変わらず凄いなあと思いました。こういう方がいると、ポジティブな空気感になり、前向きな議論を展開しやすくなるような気がします。猪木さんは、体調を崩されていたそうですが、精一杯エネルギーを出されていましたので、病気がちにはとても見えませんでした。

元気とは「エネルギー量」なのです。

プレゼンで、どうしてもエネルギーが出ない方がいらっしゃいます。

人生いろいろ。仕事が上手くいかないこともあれば、プライベートで悩むこともあると思います。そういうときはエネルギー量が落ちて、マイナスの空気感が出てしまうことも多いものです。
それは周囲にも影響します。

「なんでこんな仕事をしなくてはならないんだろう」と思っている人が、暗い気持ちで人前に立てば、全体もネガティブな空気になって前向きになれませんね。

しかしリーダーともなれば、悩みがあっても、多少二日酔いでも、人の人生の時間をお預かりする立場。まずはたとえカラ元気であっても、自分のエネルギー量を増やして元気を出すことが、好印象につながり、組織も明るくなり、仕事も上手くいく秘訣ではないかと思います。

プレゼンは、笑顔で!

 

こんなご相談が多くいただきます。
「うちのトップ、笑顔がないので困ってます」

取材で感じるのは、フォトセッションや囲み取材で笑顔量不足の方が多いことです。どんな質問が来るかと身構えているのが伝わってきます。
メディア露出のときこそ、笑顔量5割増で訴求したいところです。囲み取材でも表情豊かに受け答えをすれば、記者とのコミュニケーションもスムーズになり、質疑内容も深まります。

メディアとのコミュケーションが上手なトップは、笑顔倍増で受け答えするので、やりとりが活発になり、その後の露出が増えることが多いものです。

今年取材した中では、特にKDDIの高橋誠社長が笑顔の使い方が上手でした。
常に微笑みを絶やさない表情です。基本の顔の作りが、いつも笑っているような顔をしているのです。
この顔は、何も話さなくても周囲が和みますので、とても得です。

ただ高橋社長は、笑った顔でも緩んだ感じになりません。囲みのとき、至近距離で高橋社長を見ていたのですが、高橋社長の目の奥はまったく笑っていないことに気がつきました。その目の奥底にある厳しさに、ある種の怖ささえ感じました。この厳しさや怖さが、敷居を外しながらも、程よい緊張感がある理由なのだと思いました。

水島新司のマンガ「ドカベン」で微笑三太郎という三塁手がいます。微笑は「笑ったような顔をしていて優しそうだが、実は気が強い」というギャップのあるキャラクターが際立っていました。高橋社長は、まさに経済界の微笑三太郎だと思います。

ぜひ頑張って笑顔を出してみることをお勧めします。

 

アイコンタクトをしないのは損

真剣な話し合いの場で、もしお相手の方が私たちの目を見て話さなかったり目をそらしたりすると、ちょっと不安になりますよね。
プレゼンの質疑応答でも、同じ事を感じることがよくあります。
質問者に対して目線をすぐにそらしてしまう人は、自信がない印象を与えてしまいます。これはちょっと損ですよね。

アイコンタクトができない方にお話しを伺うと、「相手の目を見るのが耐えられない」という方も少なくありません。
しかし厳しい言い方になりますが、目線を合わせないのは、相手に正対していないからです。
目を見ていることが難しいのであれば、大事なポイントだけでもアイコンタクトをとるべきです。

また、アイコンタクトの印象は、その場だけのものではありません。
「別れる直前の表情を見れば、その人がどういう人かわかる」と教えていただいたことがあります。人は別れ際にその人の人となりが一番表れます。

「あなたとのご縁に感謝しています」という心の余韻を慈しむ気持ちというのが必要なのです。

かけがえのない時間を割いてその場に来ていただいている相手をリスペクトし、正対してアイコンタクトをしたいものです。

 

失敗談は、プレゼン最強の武器

プレゼンでは、私たちはつい「成功した話をしよう」と思いがちです。
でも聴く立場になると、成功談よりも失敗談の方が面白く感じますよね。

実はプレゼンでは、成功談より失敗談のほうが共感されます。

だからプレゼンでも、堂々と失敗談を語ると共感が得られます。

多くの人が過去の成功体験ばかりを語りたがるのは、失敗を語ることは自分の評価を下げると考え、さらに「恥をかきたくない」というプライドがあるからです。

しかし、失敗から自分が何を学んだのかを語ることで、聴き手は共感し、感動し、行動を良き方向に変えることもあります。

現在の社会では失敗は増えていますし、なかなか隠せません。世の中がどんどん変化しているので、新しいことには失敗は付きものなのです。さらにSNSが普及して失敗を隠そうとしても隠せないのが現実です。

むしろ失敗したことは、新しいことに挑戦した証しです。
新しい挑戦をした結果の失敗は、恥でもなんでもない。
そんな時代になっています。

宣伝会議デジタルマガジン 1月号に亀田製菓・佐藤勇社長の「プレゼン力診断」を執筆しました。

佐藤社長は、課長時代にベトナム事業を失敗して1億円以上の損失を出したことがあります。責任を取るため進退伺を出しましたが「当社で失敗の経験者は君だけだから貴重だ。この経験を次に生かしてほしいので昇格させる。辞めることは認めない」という言葉をかけられ、会社に残ることになった方です。

この日のプレゼンでも、肩をすくめ、クスッと笑いながら失敗談を公開していました。

もしご興味ございましたらこちらをご覧下さい。

トッププレゼンで選ぶべきネクタイは?

 

「プレゼンや会見ではできるだけ明るい色のネクタイをしたほうがいいでしょうか?」

というご相談を受けることがあります。

確かに、意図して派手なネクタイをしている経営者がいます。

日本電産の永守重信会長は、日本電産のコーポーレートカラーのグリーンを基調に、大柄の水玉などのド派手なネクタイをしていますが、それ自体がキャラクターと一致していて納得性が高いのも特徴です。

また、ユーグレナの出雲充さんも、同じようにコーポレートカラーのまぶしいばかりのグリーンのネクタイをしていますね。

ネクタイは体の真ん中にあり目に付きやすいこともあるので、「この派手なネクタイといえば00さんね」と思い出してもらえたり、覚えてもらえることができるというメリットが大きいのです。

特に創業者など、自らが会社の看板となるような人は、個性的だったり派手なネクタイをしている場合が多いと思います。
洗練されているかどうかといのは二の次三の次。ファッション性は多少犠牲にしても、会社のために自らを演じられるプロでもあるわけです。

いつも同じものを繰り返しつけていると印象に残りやすくなりますので、もし意図してネクタイを選ぶならぜひ繰り返しつけてください。

 

時間ピッタリの見事なプレゼン

 

先週は2日間、第20回日経フォーラム世界経営者会議に参加していました。
世界のトップのプレゼンを次々と見られる貴重な機会でした。

印象に残ったのは。エアアジアのトニー・フェルナンデスCEOです。
ご自身のプレゼン後、「10分ですよね。時間通りに終えました。私のエアラインと同じく時間厳守ですね」と、時間ピッタリに終わりました。

大抵の方は時間が超過します。トップに限りません。会場のスタッフが常に残り時間の札を持って、登壇者に示しても超過する方が多いのです。こうなるとしわ寄せがお客さんの休憩時間に来て、休憩時間も短くなります。

とても不思議なのですが、プレゼンは指定時間より短めに終わるということがほとんどありません。時間をオーバーすれば、お客さんの満足度は一瞬で下がります。しかし話し手は緊張したり、つい熱が入ったりして、時間が押しても「準備した内容を全て伝えるのが自分の仕事」と考え、悪気がないのに時間オーバーしているのです。

「お客さんの大事な人生の時間をお預かりしている」という最も大切なことに気がついていないのは残念ですね。

逆に余裕をもって時間通りに終わるだけで、簡単に聴き手の満足度はあがるのです。

プレゼンは時間通りに終わる。これを死守しましょう。

汗かきのためのプレゼン対策

「汗かきなんです。プレゼンで激しく汗をかくので辛いんです」

汗かきの方からこんなご相談を受けました。
とくに今年の夏は暑かったので、汗でご苦労された方も多かったと思います。

プレゼンは緊張しますし、普段より汗をかきやすくなりますよね。加えて、暑くてもスーツを着なくてはならないことも多く、汗かき体質の人にとって辛いものです。

実は汗をかくと、皮膚や洋服がベタベタして気持ち悪いだけではなく、声が響かなくなり、プレゼンでの印象を落としていることがあるのをご存知でしょうか。

プレゼンでは、緊張で汗をかくのと同時に、大きな声で長時間話しているため呼吸回数も多くなり、脱水症状になりやすい傾向にあります。

脱水すると声帯や喉の周辺が乾燥して声が響かなくなり、口の中が乾くため舌が動き難くなり、滑舌も悪くなってしまいます。また、汗が流れていなくても、長時間発声していれば息と共に水分が蒸発するので脱水しやすくなります。

解決策は、プレゼン直前にしっかり水分を補給し、プレゼン中も横に水を置いて少しずつ補給し続けることです。

事前に水を飲むとトイレが近くなると思われるかもしれませんが、話していれば水分が蒸発しますので、トイレが近くなることはありません。逆に、水を我慢してプレゼンするほうがよほど印象を悪くしています。

また、汗かきの方がハンカチで汗を拭うとき、ちょっとした注意が必要です。

ポケットから頻繁にハンカチを出し入れして汗を拭っていると、焦っているような印象を与えてしまいます。この場合は、きちんとたたんであらかじめテーブルの上に出しておき、汗が流れそうになったらそっと押さえるように拭くと良いでしょう。居酒屋でやるようにグイグイ拭っている方をとても多く見かけますが、舞台上でやるのはあまり印象がよろしくありません。

便利な制汗スプレーもありますので、活用する方法もあります。

汗かき体質の方は、この際、思い切ってハンカチをトレードマークにしてしまう手もあります。「ああ、あのハンカチの人ね」と覚えてもらうことができます。
世界三大テノールの一人ルチアーノ・パバロッティは、大きな白いハンカチを握りしめて舞台に出るのがトレードマークにもなっています。

さて先日、「機動戦士ガンダム」のザクをモチーフにした「ザクとうふ」をヒットさせて有名になった、相模屋食料の鳥越淳司社長のプレゼンを見て参りました。部屋は冷房がしっかり効いていましたが、鳥越社長は開始前から終了まで滝のような汗が止まりません。汗かき体質の方なのだと思います。

今回はザクではななく、なんと「女の子のピザ」。鳥越社長は、ターゲットをガンダム世代の男性から、F1世代の「女の子」に照準を定めました。さて次なる戦略はどんなものなのでしょうか?

汗かき対策も含めて、もしご興味ありましたら「広報会議11月号」鳥越社長の「プレゼン力診断」をご覧下さい。

 

聞きにくいプレゼンの原因の2割は、聴き手以外にある

「『プレゼンが聞きとりにくい』と言われました。発声が良くないせいでしょうか」
このようなご相談を良く受けます。
頑張ったプレゼンの後に「聞き取り難かった」なんて言われたら、がっかりしてしまいますよね。

もちろん発声や滑舌が良くないケースもあります。しかし、これまでたくさんのプレゼンを聞いてきましたが、聞き取り難い原因の20%くらいが話し手以外にあるのです。

それは残響です。
特に天井が高く広い会場では、残響が長くなる場合が多いものです。
残響が長ければ、話し声に残響が被ってしまい、聞き取り難くなります。

「最近はマイクの性能も良いし、大丈夫なんじゃない?」と思いがちですが、残響はマイクの性能とは関係ありません。

会場自体の残響は長くなくても、マイクやスピーカーのせいで残響が多くなり、聞き取り難くなっていることがよくあります。とくにマイクの感度が良すぎると、声の残響が増えたり、生々しい息づかいや唾の音が強調されて聞き辛いものです。

せっかくプレゼンが上手くいってちゃんと話せても、会場の残響のために、声が聞きとり難くて内容が伝わらなかったとしたら、とても残念ですね。

そこで対策をお伝えします。

まず会場に到着したら、リハーサルでステージに立って手を「パン!」とたたいてみましょう。残響が長ければ「パアァァン!」と響きます。こういう会場では、早口は厳禁。前の響きが消えないうちに次の言葉が発声されるため声が被ってしまい、聴衆にとって大変聞き難くなってしまいます。

しかし人は緊張したりあがったりすると呼吸が浅くなり、ついつい早口になってしまうもの。
残響の多いところで早口になると、更に聞き取り難くなります。
本番では、いつもより3割増しにゆっくり話すつもりでちょうど良くなります。
「こんなにゆっくりでいいの?」と感じるくらいで初めて普通に聞こえます。

そして、マイクテストは必ず行って下さい。
ただ「アーアーアー」だけではダメ。
本番と同じように実際に話すことです。
実際に話さないと、残響を含めた声の聞こえ方はわかりません。

声は、スマホで録画して確認してもチェックできます。ただ、声は場所によって聞こえ方が違います。スタッフに客席のいろいろな場所に立ってもらい、実際にしゃべる様子をチェックしてもらうとベストです。もしマイクの感度が良すぎる場合は音量を調整するか、マイクと口の距離を離しましょう。

プレゼンを成功させるためには、残響まで気を配ることが必要になるのです。

なぜその服を着るか、説明できますか?

 

「どんなファッションでプレゼンしたらいいのでしょうか?最近、ジーンズで出るトップも多いようですが…」

広報担当者さんから、こんな質問をいただきました。

確かに、最近、カジュアルファッションでプレゼンする方が増えてきました。しかし、プレゼンは公式な場です。どんなファッションでも自由に出て良いわけではありません。ファッションにはあるお約束があるのです。

先日、会計ソフト会社Freee・佐々木大輔社長のプレゼンを取材しました。
佐々木社長は、いつでもどこでも会社のロゴ「freee」が入ったコーポレートTシャツを着ています。この日も、やはりTシャツ姿でした。

またイベント会場では社員全員もコーポーレートTシャツを着ていました。しかも、色や形もそれぞれが違ってバリエーション豊かなのです。女性は細身で首の部分が広めに開いた形だったり、髪の色に合わせたTシャツを選んでいる男性もいました。各自が自分に合ったTシャツを選んで着ているのが伝わってきました。

佐々木社長がTシャツを選ぶのは理由があります。「合理的で、分かりやすく、無駄がない」という自身の経営理念を体現しているからです。

トップがメディアの前で話すことは、すべてのステークホルダーが注目しています。
「あなたはどうしてこんな格好で出ているのですか?」と聞かれたとき、説明できることが必要なのです。
納得できる説明ができれば、繰り返し着てもらっても大丈夫。トップファッションには、説明責任が伴うのです。
私は、これを「ファッションのアカウンタビリティー」と名付けています。

佐々木社長は、このファッションのアカウンタビリティーが明確。だからTシャツでOKなのです。

佐々木社長の「プレゼン力診断」にご興味ある方は、下記記事をご覧下さい。

freee佐々木大輔社長のプレゼン分析「一貫した経営哲学を体現」