オンラインプレゼンにおける時間設定のコツ

 

「オンライン会見のプレゼン時間の長さは、対面と変えたほうがよいのでしょうか」
というご質問をいただくことがあります。

オンライン会見の場合、多くのメディアの記者は速報性を重視しています。
私は60回以上の会見を取材してきましたが、90分の会見でも記事になる内容は実質15分程度です。
聴き手は多忙です。原稿を書きながら耳だけ傾けていることも多いのです。

そこで、オンライン会見は伝えるべき内容を絞り込み、最短時間で行うことです。リアルの会見では「わざわざ足を運んだのに?」と不満も出そうですがオンラインなら離脱するのも簡単です。

セミナーや講演会の場合は短い時間で終えるわけにはいきませんが、聴き手に何をアピールするのか考え抜き、シンプルな言葉で力強く「伝え切る」ことです。

複数人が登壇する場合も注意が必要です。人は、話しが長くなりがちです。

ある会見を取材したときのことです。登壇者がそれぞれ長めに話した上に、登壇者の交代に手間取ってしまいました。結果予定終了時間を大幅に超過してしまったのです。

登壇者には、バッファを見込んで短めの時間で依頼しておくと良いでしょう。可能なら録画をして編集し、入れ替え数秒で行えればベストです。

また、入れ替えが手間取りそうなら、BGMを流しておくと自然です。また、事前に切り替えのリハーサルをするなど、工夫をしておくこともおすすめします。

 

ノイズがオンラインプレゼンの質を下げる理由

先日、あるオンライン会見を視聴していました。

トップが話している最中に、内容とは関係のないBGMが流れてきたのです。
宣伝カーのBGMをマイクが拾ってしまったようです。

BGMの明るい音楽が気になってしまい、内容に集中できなくなってしまいました。

また、話しているトップも音楽が流れてきたことで動揺したのでしょうか。何度も固まってしまっていました。

対面の会場では気にならないノイズも、オンラインだと状況がイメージできないため、聴き手は不安になります。
話し手の方も、敏感な方であれば、不安に感じる聴き手の気持ちを察してしまい、話しに集中できなくなるものです。

オンライン会見は、社内のオフィスや外部の会議室で行うことが多いかと思います。
そのようなときはできるだけノイズが入らないような配慮が必要です。
しかし、不可抗力でノイズが入ってしまう場合もあるかと思いますので、「本日は〇〇のA会場よりお送りしております」のように、あらかじめ会場のロケーションを説明しておくといいかもしれません。

心構えをしておけば、聴き手も話しても安心して会見に臨めるはずです。

メルカリの山田社長がプレゼンにマネジメントスタイルを活かす理由

 

「堂々とプレゼンできるようになりたい」

誰しも持つ理想です。

しかし、マネジメントスタイルとプレゼンは一致させることが大切です。

例えば、「堂々と」「太く響く声で」「アイコンタクトをとり」「ダイナミックな身振り手振り」でプレゼンしたとします。この要素を見ただけでカリスマ性が感じられますね。
一方で、このようなプレゼンは、威圧感が感じられてしまうことも確かなのです。

組織によっては、話し手が地味にプレゼンしたほうが、メンバーが主体的に動きやすくなります。

最近、メルカリの山田進太郎社長のプレゼンを取材してきました。

山田社長のプレゼンは、スター経営者とは思えないほど淡々としている自己主張のない「地味プレゼン」でした。質疑応答でも右隣の社員さんを気にしてチラ見しながら回答しています。

しかし、メルカリは「人材のブラックホール」といわれるほど優秀な人材が集まっています。
しかし現実には、リーダーが自分より優れた人材を部下に迎え入れることは簡単ではありません。リーダーは「自分が一番」と思いがちだからです。スタートアップならば「乗っ取り」の心配もあるでしょう。しかし自らを「凡人」と呼ぶ山田社長は、自分の力だけでは組織を成長させられないこと、そして他人の力が必要なことがよくわかっているのです。山田社長の地味プレゼンからは私心のなさが伝わってくるようでした。

プレゼンは、あくまで話し手のマネジメントスタイルを活かすことが成功のカギなのです。

 

オンライン・プレゼンを話しやすくするコツ

 

オンラインでプレゼンで話しにくいという方はとても多いかと思います。

原因があります。
それは、聴き手の反応が見えないからです。
人は、聴き手の反応を無意識に感じながら話しをしています。
オンラインでは、話し手が聴き手の反応を感じられないため、話しのリズムをつかめません。
そのため、対面のプレゼンと比較して、話しにくくなってしまうのです。

そこで、会議や商談でもちょっとしたコツで話しやすくなる方法があります。

メンバーの顔を自分のwebカメラの真下に配置することです。同僚でも後輩でも構いません。

話を笑顔で聞いてくれたり、頷いてくれたりする人がいれば、心強く感じて、話しやすくなるものです。

メンバーには「話しに反応してくださいね」とあらかじめお願いしておくといいでしょう。

方法は簡単です。

顔を出してもらうメンバーは、Zoomをビデオ・オンにしておきます。
そして、話し手はメンバーの顔をドラッグして自分のwebカメラの真下に配置するのです。

画面の右端にメンバーの顔が配置されてしまうと、真ん中にあるカメラに目線が合わなくなります。ですので、メンバーの顔はカメラの真下に配置すれば、他のお客さんとも目線が合うようになり、説得力も高まります。

これだけで、話しにくいオンラインプレゼンもぐっと楽になります。

 

TV会議で残念なカメラの使い方

最近、Zoomのウェビナーやオンライン会議が増えています。

一方で、一般的にはまだ慣れない部分も多く、残念なケースもよく見られます。
とくに顔の映り方を気にしていない方が結構多いですね。

対面で話していれば雰囲気で相手の言いたいことを察することもできますが、オンラインの場合、コミュニケーションの頼りはスマホやパソコンの小さな画面だけです。
顔の映り方一つで、相手にコミュニケーション・ストレスを与えてしまいます。

今日は、簡単にできるカメラの使い方をお伝えしましょう。

よくある残念な映り方は、目線が横目になっていることです。
聴き手は、目線が正面を向いていないとコミュニケーションがとれていないように感じて不安になります。

横目になる原因は、自分が見ているパソコン画面の横に、相手の顔が映し出されていることです。
人間は無意識に相手の顔を見て話そうとするので、カメラには横目で写ってしまいます。
相手の顔が映っている画面をドラッグして、自分のWebカメラの真下に置けば、目は真正面を向くようになります。

もう一つの理由は、説明資料を画面の横に置いていること。資料もできるだけカメラの真下に移動させれば直ります。

他に意外に多いのが、顔半分が切れているケース。
事前にカメラテストをしておけば、問題は解消します。カメラの位置を調節しつつ、高さを調節できる椅子があると便利です。

コミュニケーション・ストレスがかかるオンライン上では、カメラの使い方に一工夫することで説得力を高めることができるのです。

 

 

オンライン会議の終わる瞬間に気をつけるべきこと

オンラインでの会議や会見が増えてきました。

オンラインでのコミュニケーションは、直接会っての空気感を感じにくいものです。
とくに日本人が得意とする「空気を読む」ということが難しくなります。
そのため、意思疎通に時間がかかったり、すれ違いが生じたりということが増えてしまうのです。
とくに、会議やプレゼンが終わったときのような、気が緩んだ瞬間には気をつけたいものです。

リアルの会議や会見では、話しが終わってからもその人の気配を感じることができるのですが、オンラインはそうはいきません。画面からパッと消えてしまったり、そそくさと立ち去ってしまうと、見ている人は空気を感じることができないので不安になってしまいます。オンラインの場合はカメラに向かっていつもより3割増しの笑顔で終わるようにしましょう。

「なぜそこまでしなくてはならないのか?」と思うかもしれませんね。

日本の武道や茶道などの世界では、「残心(ざんしん)」が大切であるとされています。

残心は、技を終えたあと、くつろいでいながらも注意を払っている状態です。余韻を残すという日本の美学や禅とも通じる考え方でもあります。

じつは残心があるかないかで、結果が変わってしまうのです。

例えば弓道では、矢を射ったあと、的に当たるまでは「残心」です。
日本だけではなく、西洋でも同じような考え方があります。例えば砲丸投げ。投げた後にも気合が入り、フォームは続いています。
普通に考えたならば、矢や砲丸が手元から放たれたのですから、結果は変わらないはずですが、最後まで気を抜かないのです。

プレゼンでも残心があるのとないのとでは、印象がまったく違います。
空気が感じられないオンラインだからこそ、余計に心を込めて終わりたいものです。

「エビデンス」を活かした4月7日の安倍首相記者会見

昨晩(4月7日)、安倍晋三首相が新型コロナウイルスの感染拡大を伴う緊急事態宣言の記者会見を首相官邸で開きました。

この会見では学ぶべき事がありました。「エビデンスの見える化」です。

今回の「生きたエビデンス」は、医師で諮問委員会・尾身茂会長です。

今まで安倍総理は「専門家の分析・提言を踏まえている」と重ねて話していましたが、今回専門家としてを尾身会長と並んで会見を行い、エビデンスを目に見える形にしたことで、安心感を向上させていました。

プレゼンテーションは「聞き手に対するサービス」です。

しかしプレゼンテーションによるサービスは無形ですので、その価値を伝えるのは難しいですよね。
ですから、具体的なエビデンスが必要です。

「専門家」の尾身会長ご本人に、目に見える形で「エビデンス」として登壇したもらうことで、安倍総理が言葉で話しているよりも、価値をわかりやすく表現して国民に伝えていました。

また、尾身会長が資料を見ずに自分の言葉で話していたことも説得力を向上させていました。

今回のように聞き手の危機感が強い会見では、とくに安心感、信頼感・説得力を格段に向上させる必要があります。
このようなプレゼンテーションでは「エビデンス」は、最も注力すべき要素です。

こういう時こそ重いトップの言葉。対応策は?

新型コロナの流行により、安倍総理を始め各トップの会見が続いています。

つい先日も東京での不要不急の集まりは自粛を、との発表がありました。

パンデミックの瀬戸際となっている中、なかなか終わりが見えません。
人はイライラが募り情報に対して過敏になっています。トップのちょっとした一言が原因でパニックや炎上が起こりやすくなります。

このような状況では、トップが発する一言の重みはさらに増していきます。

『貞観政要』では、リーダーが言葉と人徳の二つを立てることと書かれています。上に立つ人の言葉は、本人が思っているよりはるかに重いのです。

・・・(以下、引用)・・・

上に立つ人の言葉はとても重く、一度口にしたことは、簡単に取り消すことができません。
上の人が何気なくいった言葉であっても、下の者は深刻に受け止めます。
皇帝のように絶対的な権力を持つ人の場合、その言葉は法律とほぼ同じになるので、言葉を選び、よく考え、慎重に発言しなければなりません。
またいくら口がうまくても、人格が備わっていなければ、部下の信頼は得られません。
常に言行一致を心がけていないと、部下はついてきてくれないということです。

(「座右の書『貞観政要』」出口治明著より)

・・・(以上、引用)・・・

これは、国のトップだけでなく、企業のマネジャーも同じです。
いま、メッセージは十分に注意しなくてはならない最も厳しい状況と言えるでしょう。

とはいえ、慎重になりすぎて台本を棒読みしているようでは、自分ごとで話していると感じられず、聞き手のモチベーションを下げてしまい逆効果です

リーダーは、聞き手が「何を知りたいか」「どうしてもらいらいか」というニーズを考え抜き、「自分だからこそ話せる内容」を吟味することです。
内容を考えたら一度メモにまとめます。言葉に起こすことで、行き当たりばったりにならず、大事な内容を伝えきるためです。
そして、本番ではメモを見ずに話すことです。
十分に間合いをとって、腹の底からわき上がる言葉を待ち、「私は」と自分主語で話すことです。

こういうときだからこそリーダーのメッセージが大切です。たった一言で、聞き手が前向きな気持ちになってもらうことも可能なのです。

 

読み上げは事務方だけでいい

新型コロナウイルス拡大防止会見での安倍首相を見て、「プロンプターを読み上げている」「会見する意味がない」との批判が多くありました。質疑応答もカンペを読み上げ、1回目の会見では質問を打ち切って終了。ジャーナリストの江川紹子さんは、「『質問がつきるまで答えましょう』と言えば、国民はどれだけ政府を心強く感じただろうか」と述べています。

また、2020年3月1日の日本経済新聞「【迫真】日産 見えぬ「ゴーン」後」の記事に下記の内容が書かれていました。

「1月30日、日産本社で開かれた首脳会議後の報道陣の取材。冒頭、スナールが『アライアンスの進展について伝えたい』とあいさつ。続いて内田が合意内容を読み上げた。事務方のような役回りに日産社員は言う。『一体、誰がトップなんだ』」

読み上げをする行為は、「私は事務方です」ということを言っているようなものです。

プレゼンの目的は、聞き手の心が動き良い方向へ行動を変えることです。

リーダーが読み上げをすれば、「部下が書いた文章を読んでいるのでは」と聞き手は感じます。自分の言葉で訴えかけていないのに、聞き手の心が動かされることはありません。

もしリーダーシップを発揮したいなら、自分の言葉で語ることです。言い忘れが心配なら、ポイントだけを書いたメモを確認しながら話せば間違いありません。

台本を見ないだけでも、言葉に力が宿り、聞いた人が動くようになるのです。

 

オンラインの質疑応答で困ったときにはこの言葉

最近、新型コロナウイルス感染症の流行によりオンラインでの会見が増えていますね。

オンライン会見ではライブで質疑応答を行う際に動画が残ってしまうので、不用意な発言には要注意です。
一方でどんな質問にも「詳細はお答えできません」では、印象は悪くなります。

質問する方の中には、残念ながらこちらが知らないような自分の専門知識を多用してマウンティングしたり、明らかにつぶしにかかる相手もいます。
そういう相手に対して、とても良い答え方をしているトップがいましたのでご紹介したいと思います。

「勉強不足なのですが」

有名なトップでもあったので、業界の知識はそれなりにお持ちだと思うのですが、知ったかぶりをしない謙虚な姿勢に好感を持ちました。
「勉強不足なのですが」は、質疑応答で困ったときに使える、好感度を高める良いフレーズです。ぜひ覚えておいてください。

 

「プレゼンが時間超過しても聞きたくなってしまう理由」

 

「プレゼンが時間超過しても聞きたくなってしまう理由」

プレゼンで時間超過すると、ほぼ確実に満足度が下がるものです。

しかし先日、時間超過しても「もっと聞きたい」と思ってしまったプレゼンを見てきました。

2020年1月21日に行われた、くら寿司「グローバル事業戦略発表会」での田中邦彦社長のプレゼンです。

冒頭、プレゼンの調子はいま一つだったのですが、開始3分後に「明治維新が成功したのは『この国は滅びる』というコンセプトがあったから。企業経営も同じ」と語った瞬間にスイッチが入りました。幕末志士たちの魂が乗り移ったかのように熱く語り始めたのです。

「ホラを吹く経営者は多い。私はホラが大嫌いだ。言ったことは必ずやる」
「2020年中国進出、2030年に売上高3千億円、全世界で1千店舗を目指す」

と宣言した後は、日本経済界を憂い、喝破しながら、話しが止まらなくなりました。

昨年、念願のナスダック上場を果たしたくら寿司。

「ここまで来るのに涙を流すことがたくさんあった」と話しながらも、その目線の先にあるのは「世界」。田中社長の大きな夢に共感した会見でした。

もし、話し手が熱い想いを持っていたならば、その想いを語り尽くすことが強い説得力につながるのです。

 

質疑応答こそ、説得力の差が出る

こんなご質問をいただきました。
「質疑応答で、質問を打ち切るタイミングはいつでしょうか」

質問が尽きないということは、会見が盛り上がっているということですし、聞き手の問題意識や当事者意識が高い好ましい状況です。

私の経験では、問題意識の高い記者たちは彼らは良い質問を重ねながら問題の核心に迫っていきます。そして話し手が真剣に質問に答えることで聞き手の問題意識が刺激され、さらに良い質問が出る、という良い循環が生まれます。このような「知的コンバット」とも言えるような場になることこそ、記者会見における質疑応答の神髄でしょう。

話し手と聞き手の高い問題意識と良い質問による議論は、より良き世の中にするためにも重要です。

ただせっかく質問が尽きない状況となっても、どこで打ち切ったらよいのか判断に迷うところです。

会場の時間制限もあるかもしれません。
時間が長引けばトップの不用意な発言を心配する人もいるでしょう。
しかしそれでも、もし質疑応答が「議論すべき良い場」となったと判断したならば、時間の許す限り質問に答えることが大切だと考えます。

私が今まで取材してきた記者会見の質疑応答や囲みで、司会者や広報担当者が質問を打ち切ろうとするのを制して「質問が尽きるまで、全て答えます」と言ったトップは数えるほどしかいません。

最近では、ストライプインターナショナルの石川康晴社長とZHDの川邊健太郎社長です。このお二人は、会見が「良い場」となっていると判断した上で、担当者を制して質問に答え続けると意思決定を行いました。ご自身のビジネスに対して強い責任感を持ち、何を聞かれても明快でした。また良い質問を受け続けることで、彼らの答えも相対して深まっていくことも感じられました。

一方で予め質問を打ち合わせておいたり、質問を想定して回答を用意しているトップもいます。想定問答を用意するは良いことですが、「想定問答集」を読みながら回答するトップもよく見受けられます。質疑応答までカンペを見るようでは、説得力は格段に下がってしまいます。想定問答は確認にとどめて、ぜひ自身の言葉で語っていただきたいものです。

 

プレゼンでは腹を据えて何でもやるのがリーダー

「人前に出ると恥ずかしくて、どうしてもぎごちないプレゼンになってしまう」

そうおっしゃる方が多くいらっしゃいます。

プレゼンの目的は、話し手がリーダーシップを発揮し、聴き手の考えが良い方向に変わり行動することです。
ぎごちないプレゼンをしてしまうことで本来の意図が伝わらず、聴き手の行動が変わらないのであれば、そのプレゼンは失敗です。

村井嘉浩宮城県知事の会見を取材したときのこと。村井知事のプレゼンは「MC村井」に扮してラップを披露したり、ゆるキャラに抱きついたりとサービス精神を発揮していました。しかし村井知事は陸上自衛隊出身の硬派。「チャラチャラは苦手」とのこと。

ただ、「宮城の観光ためなら、何でもやる」と腹決めし、「還暦近いが、歯を食いしばって頑張った」「笑ってください」と話していました。

リーダーシップとは、変革を成し遂げるために、率先してバカになって踊るものであることを良く知っている人の言葉です。

私はここに「伝えきる」リーダーシップの源泉があると考えます。

宮城県を良き方向に変革するという大義名分のためなら自分を捨ててどんなことでもやるのが村井知事のリーダーシップが伝わってきました。
伝えきる気持ちが恥ずかしさを上回ったとき、聴き手の心が動き、良い方向に行動に変わるのだと思います。

 

気まずくなりがちな質疑応答を盛り上げる方法

「質疑応答で質問がないと気まずい雰囲気になります。そういうときどうすれば良いでしょうか?」

という質問を受けることがあります。

質疑応答は、話し手にとって本編の内容を補足する大事な時間です。記者会見では質問に答えることでPR効果も出ます。質疑応答こそ、勝負の場。
ただ聴き手の立場になると、「質問が思い浮かばない」「緊張する…。誰か最初に手を挙げてくれないかな」と考えて待っていることもあります。

2019年9月30日に行われた「宮城県×ポケモン『ラプラス』共同観光キャンペーン記者発表会」の宮城県知事・村井嘉浩氏のプレゼンでは、質問がない中で、上手に質疑応答を活性化させていました。

村井知事は、何度か質問を募っても静まりかえる会場に向かい、ニコニコしながら「ちなみにマスコミの皆さん関心があるかと思いますが」と前置きし、「2020年の目標ですが宮城県では来年1年間宮城県では来年1年間で7000万人の観光客動員、のべ1000万人の宿泊客、4000億円の観光消費を目指しています」と、自らPRを始めました。

質問がないことを上手く利用し、言うべきことを伝え、PR漏れがないようにしていたのです。

静まりかえる質疑応答は気まずい雰囲気になりがちですが、せっかくメディアが集まっています。質疑応答を止めるのはあまりにももったいないですよね。慌てず騒がず、「ちなみに関心あるかと思いますが」と、ひとこと入れてから言いたいことをぬかりなくPRする臨機応変な対応は「さすが政治家」と思いました。

これは企業のプレゼンでも応用できます。質問がないと気まずい雰囲気になってしまいがちです。そういうときのために話す内容を準備しておき、「よくある質問ですが」と前置きして話すと、次の質問に繋がりやすくなります。ぜひお試しください。

ちなみに村井知事の会見は、村井知事がラッパーになったりとサービス精神旺盛なプレゼンでした。
ご興味ある方はぜひこちらの記事をご覧下さい。

「変革のためなら我を捨てる 気骨ある硬派知事のプレゼン」

 

ヤフー!川邊社長から学ぶ「なすべきことをなす」

経営者のプレゼンを見るとき、大事にしているポイントがあります。

それは、「その会社にとってなすべきことをなす」ことを考えているかどうかです。

2019年11月18日、衝撃のZホールディングスとLINEの経営統合が正式に発表されました。そのとき、川邊健太郎ZHD代表取締役社長CEOはプレゼンで、「日本・アジアから世界をリードするAIテックカンパニーを目指す」と、GAFAに対抗し世界第三極を狙う決意を発表しました。このままヤフー単体では国際的なプラットフォーマーの中で埋没し、規模の小さい日本同士で戦っても業界全体が再編されない限り会社自体も埋没する、と考えたからです。

そのとき、川邊社長の言葉で最も印象に残ったメッセージがあります。

「日頃から、経営者は自分がやりたいことではなく、その会社にとって今、なすべきことをなすべきだ、と考えている。東アジアからもう一極作れる展開を、社長として成すべきことの最大の一つとして取り組む」

アウシュビッツの強制収容所の体験記『夜と霧』でも知られる、オーストリアの神経科医、ビクトール・フランクル(Frankl,v.e.1905-97)は「生きる意味」の問題を追求した人です。
フランクルは、言います。
「どんな時も、人生には、意味がある。どんな人の、どんな人生にも、なすべきこと、満たすべき意味が与えられている。私たち人間の『なすべきこと』『満たすべき意味』『この人生でなしとげるべきテーマ』、これらはすべて今も、また今も、あなたの足元に送り届けられてきている」

人生は自分のしたいことや欲望をかなえていく場、つまり人生の中心を自己に置きがちです。しかし欲望にはキリがありません。昨今、経営の意思決定において、経営者のエゴイズムが勝ってしまい、企業の価値を落としてしまう会社が多くみられます。
経営者は、社会からの為すべきことを為せという要請に対して虚心に耳を傾け、持続的な生き方を求めているからこそ、動じないリーダーシップを発揮できるのではないかと思います。

川邊社長は、自身のなすべきことの意味と使命を実現していくことが人生だと考えているのです。今後、さらに素晴らしくなっていく経営者だと思います。

詳しくはこちらの記事をご覧下さい

ヤフーとLINE緊急会見 川邊健太郎社長のプレゼンを分析

 

最後まで首尾一貫したプレゼンとは

プレゼンで大切なことは、質疑応答も含めて、話している内容をブラさずに、首尾一貫させることです。

しかし、質疑応答で聴き手から突っ込まれると、しどろもどろになってしまったりして一貫性を欠いてしまう例を多く見てきました。

2019年9月12日に、ストライプインターナショナルの石川康晴社長の会見を取材してきました。石川社長の素晴らしい点は、KPIがとても明確で、話しにまったくブレがないことです。

記者からのあらゆる質問に対しKPIをもとに数字で明快に回答していました。囲み取材も、通常は10分程度で終わるものを、石川社長の意志で30分に延長しました。囲みは、時間が長引けば記者はどんどん突っ込んだ質問をするものです。
しかし骨太な戦略を立てた上で、事実に基づいて明確なKPIを設定して発表に臨んでいるので、どんな質問を受けても最後まで一切のブレがありませんでした。

明確なKPIで一切のブレがない上、聴き手をその気にさせる説明は、25年以上のアパレル業界での接客経験を持っている石川社長ならでは。さらにファッションも「こなれ感」があり、まさに達人のプレゼンでした。

今後の活躍が楽しみな経営者です。

詳しい記事はこちらです。お読みいただけましたら幸いです。

ストライプ石川社長のプレゼン分析「説明力とロジックで業界の地殻変動に対峙」

 

 

業界第一人者の講演なのに、7割の人が寝る理由

業界第一人者であるA氏の講演を聞いていたときのこと。他では聞けない貴重なお話しなのですが、聴き手の皆さんは次第にフェイスブックを見たりやラインをやり始めました。ウトウト寝ている人もいます。後方から拝見していますと、ほぼ7割の方は聴いていません。

こうなってしまった理由は、余分な言葉が多すぎるためです。
・「後ですねー、実はXXXXということもありまして…」→もっと正確に伝えなければと思うあまり、思いつきの付け加えが多くなる。しかし、初めて聞く話しばかりの聴き手は理解がついていかないため迷子になる。
・「定義づけしてます…あっ、義務づけしてます」→言葉の正確さを重視するあまり言い直しが多くなり、聴き手は混乱する。
・「それで〜」「あのですね〜」「え〜と」→間違いがないか吟味する時間をとるため間に入る言葉を多用する。それが聴き手にとってはノイズとなり、聞き難くなる。
・「XXXって知ってますか?(皆さんが)知ってないこと自体問題でして…」など、回りくどい説明をして物事をストレートに言わないため、もどかしさを感じる。

これらは全て「ノイズ」です。

さらにチャートの情報過多。「あれもこれも伝えなければ」とチャートには小さな文字がぎっしり。チャートを台本代わりに読み上げていました。
文字ぎっしりの画面が出たとたん条件反射的にあくびをする人たちが多発していました。(ちなみに聴き手を眠らせる最短の方法は、この文字と数字がぎっしり書いたチャートを出すことです)

正しい内容を話しているのに、分かりにくいトーク展開をすることで、聴き手が混乱し、聞いてもらえなくなってしまったのです。
そもそも難しい専門分野で情報がギッシリなのに、さらにノイズを加えている。これで眠くならないわけがありません。
せっかく素晴らしい内容を話しているのに聞いてもらえないのではもったいないですよね。

間違ったことを話すのはもちろんNGです。でも余分な言葉や情報を減らせば、ずっとわかりやすくなるし、聴き手も集中力を持って聞いてくれるようになります。
話し手は、聴き手であるお客さんが何を求めているのかを、常に考え続けたいものです。

アンケートは「人の鏡」

コンサルティングを行う際に、私は講演会やプレゼンで必ず聴き手にアンケートを取ることをお勧めしています。

プレゼンの目的は、プレゼンを聞いた聴き手に、良い方向に動いてもらうこと。
プレゼンは「他人に影響を及ぼし、望ましい行動を起こさせる」というリーダーシップを発揮する場なのです。

一方で聴き手は無言で聞いています。自分の言葉が伝わっているのかがなかなか分かりません。アンケートは、どのように伝わっているかを知り、改善する手段。ここから学ぶことで、より的確に望ましい行動を起こさせることが可能となります。

職位が高い人は「アンケートなんていらない」と言いがちですが、実はそんな人ほど、アンケートは必要です。
リーダーになると、周囲に本当のことを言ってくれる人が少なくなるもの。役職が高くなったり、年齢が高くなれば尚更です。

『貞観政要』でリーダーは、「三鏡(銅の鏡、歴史の鏡、人の鏡)」という3つの鏡を持たなくてはならないという教えが書かれています。

三つ目の「人の鏡」は「リーダーは耳の痛い厳しい諫言を受け入れなければならない」と言っています。
耳の痛い言葉は自分にとって辛いこと。しかし唐朝の第2代皇帝の太宗は、自分が傲慢にならないよう、魏徴を始め、厳しい直言をしてくる人物を側近として任用していました。あえて批判に耐えて自らをリーダーとして成長させていったのです。

プレゼンのアンケートで積極的に厳しい意見を受け入れれば、自分の良い鏡となってくれます。特に忌憚のない意見が書かれる匿名のアンケートは宝の山です。
ぜひアンケートをとってみることをおすすめします。

 

 

「早口で甲高い声の人は、信用されない」

 

人前に出ると早口になる方、意外と多いですね。
これは、伝える内容に自信がないと思われてしまうので損をします。自信がないのを補おうするあまりあせって話しているような印象を与えるからです。

早口は舌の動きが話すスピードについていかず滑舌が悪く聞こえます。このため内容が聞き取れず、大事なことが伝わらなかったり、何度も聞き返す必要があり、聞き手に迷惑をかけます。

私の体験ですが、銀座の伝統あるお店で買い物をしたとき、対応してくださった店員さんがあまりに小さい声で早口だったので、聞き取りにくくストレスがたまってしまったことがありました。何を聞いても「聞いて参ります。少々お待ちください」と他のスタッフに確認していましたので、自信がなかったのでしょう。

プレジデントオンライン記事「有能な秘書が見抜く『信用してはいけない人』の特徴」に、早口の人は信用できないという内容がありました。

・・・・(以下引用)・・・・

不自然に早口な人は、伝える内容に自信がないといえる。アメリカの心理学者ポール・エクマンによると、人間は恐れると早口になるとされている。それに加え、あわてると声が高くなる。自分の魂胆を隠して、企業トップや政治家を利用しようと思っている人は、嘘がばれることをひそかに恐れているため、無意識に早口になるのだ。

・・・・(以上引用)・・・・

実際には、人間は自信があっても人前に出るとテンションが上がり、いつもより声が甲高くなり、早口になるという傾向もあります。

早口だからと言って、その人が「信用できない」「自信がない」とひとくくりに決めつけるのは、ちょっと難しいかもしれません。

しかしこの記事の通り、甲高い声で早口は、一般的には信用できないと受け取られてしまいがちです。

ゆっくりと良く響く低い声で話した方が、確実に、安心感があり信頼されやすくなります。

人前で話すときは、できるだけゆっくり堂々と話すように心がけたいものです。

 

 

何度言っても意外と伝わらない。だから繰り返す

 

「『これは大事だ』と思っていることを、ミーティングでメンバーにいつも同じことばかり話している。でも退屈されてないだろうか。ちゃんと聞いてくれているだろうか。何か良い方法があれば教えてほしい」

こう心配するリーダーからの質問をいただくことがよくあります。

答えは「同じメッセージを繰り返して大丈夫です」。

特にリーダーが強い意志を持って組織を良い方向に変革しようとするならば、同じ内容を繰り返すことが必須です。
メッセージの内容を変えれば組織は混乱し、進むべき方向を見失ってしまいます。
そもそも人は、一回言っただけで内容を理解して行動に移すことはありません。

新しいことを始めようとする場合はなおさらです。古い習慣が身についてしまった組織の人たちは、リーダーの言う変革で目指す姿をなかなか頭でイメージできません。だから何度でも、しつこく繰り返すこと。そして、毎回心をこめて話すことです。

最近、「米海軍で屈指の潜水艦艦長による『最強組織』の作り方」(L・デビッド・マルケ
著)を読みました。
これは、アメリカ海軍でダメな艦として有名だった潜水艦「サンタフェ」の乗組員を、わずか1年で海軍トップのチームに生まれ変わらせたリーダーシップの話しです。

中でも、組織開発を行うために、艦長が同じメッセージを繰り返す場面が印象に残りました。

・・・・(以下、引用)・・・・

それからは、くる日もくる日も、ミーティングを開くたびに、何かを行うたびに、同じメッセージを繰り返した。
(中略)
艦での働き方をどう変えるかの説明を私がしているとき、乗員は耳で聞きながら心ではこう考えている。「はいはい。わかってますよ。前の艦のときと同じだろ」
聞きながら何の話しかわかっている気になっているが、じつは分かっていない。聞いた内容を自分の頭に思い描こうとはしない。わかったふりをして私を騙そうというわけではなく、私が思い描いていることを、自分で思い描こうとしないのだ。
(中略)
彼らが思い描いたリーダーシップや働き方は、「かつて乗っていた艦」で目にしたものだった。過去に見たものを思い描いただけだったから、この艦でわれわれが成し遂げようとしていることをうまくイメージできなかったのだ。

・・・・(以上、引用)・・・・

古い習慣をなくし、組織開発を行うことの難しさが理解できる名著だと思います。

ただ皆さんが、もし飽きずに話しを聞いてもらい、説得力を高めたければ、内容は変えずに、観点を変えて話すことが有効です。

例えば、「従業員から見た観点」「顧客から見た観点」「サプライヤーから見た観点」など、観点を変えながら話すことで、より共感してもらえるようになります。

朝礼やミーティングでメンバーに話す機会のある方、話しが繰り返しになって悩んでいる方は、ぜひお試しください。