ブログ「次世代トッププレゼン」

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トップ会見で企業ブランドを高めるコツ

トップは企業の顔。トップの会見はメディアからの注目度が俄然高まります。

トップが会社をしっかり語ることができれば、多くのメディアに取り上げられ、企業ブランドは高まります。
ただ、注意点があります。

「しっかり語る」とは、必ずしも「理路整然と話すこと」だけではありません。
短い言葉で力強く、会社のことが一瞬で伝わる言葉を語ることです。

鳥取県の平井伸治知事は、ダジャレ知事で知られています。
これまで「地味な県」と思われていた鳥取県を、ダジャレで盛り上げ知名度を上げています。

取材をした時、「鳥取にはスタバはないですが、日本一のスナバ(鳥取大砂丘)があります」を思いつきで言ったことがきっかけとなり、有名になってしまいました。

他にも「カネはないけどカニはある」「星取り県」「とっとりで待っとります」など、多くのダジャレを世に送り出しています。鳥取県の知名度向上ために、県職員さんと一緒にダジャレを考えているそうです。

スティーブ・ジョブズがiPhone4を発表した時の「これは、かつて人類が生み出したモノの中で最も美しいモノだ」という台詞も有名です。
これもジョブズ=アップルという強烈な企業ブランディングです。

企業ブランドを高めるためには、会社を一瞬で覚えてもらえる言葉を、トップに語ってもらうことなのです。

トップは会社の存在意義を情熱持って語れ…ソニーの場合

時々、広報担当者さんがもどかしそうにおっしゃいます。
「トップが社員の前で話したがりません。会社を盛り上げてほしいのに…」

人前で話すのが苦手なトップ、意外に多いですよね。
でも社員からすると、部長経由で間接的に「社長はこう言ってますから、皆さん頑張りましょうね」といわれるよりも、やはりトップ自身のやる気が出る言葉を聞きたいものです。

ただ、やる気といってもEXILEばりの「気合い」は不要。
強いメッセージがあれば、「気合い」や「パフォーマンス」はいりません。
強いメッセージを伝えて社員さんたちを動かすことを「インナーブランディング」と言います。

ソニーの前CEO・平井一夫さんが就任した時、ソニーは業績低迷の真っ直中。
そこで平井さんは徹底的に考え抜きました。
「ソニーの存在意義は、何だろう?」
そして出てきた答えが、これでした。
「ソニーは『感動』KANDOを実現する」

いまやソニー社員は海外の社員数が日本人社員数を上回っています。
たとえば映画「スパイダーマン」は、ソニー製作です。

平井さんは全世界を駆け回り、ソニー社員に「KANDO」という言葉を直接伝え続けました。
平井さんは大変プレゼンが上手な方ですが、もっと大切なことがあります。
それはプレゼン技術をはるかに上回る、ものすごく熱いパッションがあること。
2017年、銀座ソニービルで「ソニービルフィナーレイベント」が行われました。
私はこのイベントを現地で取材しましたが、平井さんが雨の中で放った熱いシャウトは、今でも鮮烈に覚えています。

現在、ソニーの業績は絶好調。利益は1兆円を超え、時価総額は一時期15兆円まで行きました。

インナーブランディングでは、トップの熱いメッセージ力が社員を動かします。
会社の存在意義を考え抜く。そして社員の前で情熱を持って、繰り返し語り続けることが会社を元気にしていくのです。

プレゼンで自社商品の訴求力を上げる出発点は、一つしかない

プレゼンで「自社商品の訴求力を上げたいのですが…」というご質問をいただくことがあります。
カギは、商品の良い面を強くPRして良い印象を残すことに尽きます。では、どのようにすればいいのでしょうか?

私が取材した会見の中でも、「よなよなエール」などで有名なクラフトビールのヤッホーブルーイングとキリンとの資本業務提携会見は、商品ブランディングを際立たせる見事な会見でした。

見せ場は会見の最後でした。ヤッホーブルーイングの井手社長がテーブルの上にあった自社ビール「よなよなエール」を二つ手に取り、キリンの磯崎社長に「では、乾杯しましょう!」と声をかけました。そして乾杯して二人で飲んだ後、井手社長は磯崎社長に「どうですかーっ?!」と聞いたのです。

ビールを飲んで「どうですか?」と聞かれると、ビール会社の人は脊髄反射で言う言葉は一つしかありませんよね。
磯崎社長は思わず「旨いっ!」と返したのです。

ポイントは、これが磯崎さんの自社ビールではなかった点。大手ビールメーカーであるキリンの磯崎社長が、当時今ほど有名ではなかったよなよなエールを「旨い」と言ったのは、ヤッホーブルーイングにとって最高の商品ブランディングとなりました。

井手社長は心の底からヤッホーのビールを愛しています。井手社長の行動のすべては、この真っ直ぐな愛情が出発点。だから真正面から大手ビール会社社長を相手に「乾杯しましょう」「旨いでしょう?」と言えるのです。

このように商品ブランディングの出発点は、自社商品に対する一点の曇りもない愛情なのです。
御社は自社商品に深い愛情を持っていますか?

うまく話すには、文章を書こう

「大事なときに言葉が出てこなくて悔しい思いをしています。言葉がスラスラ出てきて、論理的に話せるにはどうすればいいでしょうか」

このような質問を受けたことがあります。

これは表現法の基礎を磨くことです。そのためには、話すよりもまず文章を書くことをおすすめします。
文章表現が上達するとプレゼンテーションも上手くなります。

記者会見を取材して文字起こしをしますと、書く事が得意ではない人の話しは、思い込みや論理の飛躍が多く、記事にするときに苦労します。

一方、文章の上手い話し手は、話していることを文字に起こせばそのまま本にできそうなくらい話しが論理的に展開されています。
ある多作家の大学教授は、ご自身の講義を録音しながら話していました。出版された本を読むと、講義で聴いた内容がそのまま文章化されていて驚いたことがあります。

文章を上手にするコツは、毎日書く癖をつけることです。
いきなり長い文章を書くのは難しいので、100文字〜500文字くらいの量を書いてみるといいでしょう。
フェイスブックのような人に読んでもらえるような場所で文章を書く習慣をつけるのが継続するコツです。

 

プレゼンが確実に上達する方法

「プレゼンが上達できるコツを教えてほしい」
という質問をよく受けます。

「プレゼンが上手になるには練習しかありません」
「プロは、何十回も練習して本番に臨んでいるんです」

というのは、世の中の定番のアドバイス。
断言しますが、練習していてもプレゼンは上手になりません。

それに、忙しい会社員はプレゼンのための練習なんてできないのです。私のお客様で猛練習をしてプレゼン本番に臨んだ方なんてひとりもいません。

それではどうすればいいのでしょうか。方法は一つだけです。

本番の回数を増やすこと

この本番とは、記者会見の舞台や講演会のことだけを言っているのではありません。会議での説明、朝礼のコメント、宴会の挨拶でも良いのです。機会を作って、出来るだけ数多く人前でお話しすることです。もし本番の回数が少ないなら、知り合いや家族にプレゼンのリハーサルを見てもらうことです。私は「10回の練習より1回の本番」と言っています。

それには理由があります。

学びはアウトプットにより高めることができるからです。料理も同じですよね。クックパッドを眺めているだけでは作れるようになりません。クックパッドで美味しい餃子の作り方を見ながら数回作っていれば、あるとき見なくても上手に作れるようになります。

リクルートワークス研究所の辰巳哲子氏も、現代の学びはインプットからアウトプットに変わり始めていて、アウトプットしさえすれば人は成長できると言っています。

プレゼンを上達させるためのアウトプットには、4つのポイントがあります。

(1)アウトプット
まずはアウトプット。でもアウトプットはひとりではできません。相手の反応を見ることで、自分のプレゼンは良かったか、退屈だったか感じることができます。1人で練習しているだけでは他人が面白いと思うかどうかも分かりませんし、分からなければ面白くないプレゼンの練習をたくさんしてしまうので時間のムダです。

(2)フィードバック
アウトプットすれば、他人からフィードバックをもらうことができます。しかし人は本人を目の前にしてなかなか本音を言わないものです。他人の本音を知りたければアンケートをとることをおすすめします。思いもしないコメントをもらうと視野が広まります。特にネガティブコメントは成長の促進剤。他人が知っていて自分だけが知らないことを教えてくれます。嫌がらずに熟読することをおすすめします。

(3)反省
フィードバックで得た他者のコメントから、今までの自分のやり方が良かったのかどうかじっくり考える時間を持ちます。ここでは自分の思い込みや前提を疑う気持ちも大事です。たとえば、「パッションは伝わるけれど、説明が分かりにくい」などのコメントがあったとしたら、「今までジョブズ風な強い印象を与えるプレゼンが良いと思って空回りしていた。地味でも自分らしく丁寧に話したほうがいいのかな…」などの対応策を考えます。

(4)クリエーション
反省で得た知見から新たな考えを編み出します。
情熱的な言葉で伝えることで人の心が動くこともあります。しかし、人によっては雄弁でなくとも丁寧な説明を行う方が良い場合もあるのです。これまではムリをして派手な身振り手振りで話していたけれども、次のプレゼンからは、静かに語り説明を多くすることで説得力を高める方法を検討します。このクリエーションでは、自分の考え方に他人の考え方が加わり、一段高いレベルに達しています。

ここで大事なのは「カンペキ」を期待しないこと。最も大事なのは、すぐにアウトプットすることです。「(4)クリエーション」のアイデアを反映しながら、もう一度「(1)アウトプット」からやり直してみると、新たな成長フェーズに入ります。

このアウトプット型の学びは、プレゼンテーションだけではなく、営業でも企画でも、すべての学びに応用することができます。

成長はアウトプットすることから始まります。準備や練習に時間をかけ過ぎずに、まずは「ゆるく」でいいのです。ぜひアウトプットしてみてください。

 

【参考文献】
辰巳哲子「学びはアウトプットから始まる〜対話型社会の時代の新たな学び型〜」『Works Review「働く」の論点2019』リクルートワークス研究所(2019年7月)