ブログ「次世代トッププレゼン」

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No.310 一緒に仕事をしては絶対ダメな人を見抜く方法


人事の専門家から、このようなアドバイスを受けたことがあります。

「永井さん、いい? 絶対一緒に仕事しちゃダメな人はね。
 ウソをつく人だよ」

人を見ていると、「あー、ウソ言っちゃって言い逃れているなぁ」という人、いますよね。
なかには「そんな時は、ウソついちゃえばいいんですよ」と言ってくる人もいます。

しかしそういって他人にウソをつく人は、そのうち「自分もその人から同じことをされる」と覚悟しておくべきなのです。
アドバイスをくださった方は、「あなたもいつかこの人に足を引っ張られるから、そんな人とは一緒に仕事をしないほうがいいよ」ということを教えてくださったのですね。

実際に、自分の計画を有利に進めるために、一緒に仕事をしている人にウソの報告をしている人も見たことがあります。
厳しい状況に追い込まれたとき。あと一押しで夢がかないそうなとき。
ついつい情報を盛ったり改ざんしたくなってしまう気持ちも分からないではありません。

でも大抵のウソは、そのうちバレます。
そしてウソがばれると、計り知れない損失が生じます。
それは、仕事仲間の信頼を失うことです。

サミュエル・スマイルズは著書『自助論」で、「勤勉・実直な人はそれほど早く財を成すことはできないかもしれない。しかし何よりも守り通すのは誠実さである。品性はそれ自体がすぐれた財産。インチキせずに手に入れた成功こそ本物の成功である」と言っています。

不誠実な言動を重ねる人は、じつは本物の成功という大きな財産を失っているのです。

自分を必要以上に大きく見せようとするよりも、むしろ虚勢をはらず誠実な対応をする方が、相手に与える好感度が高いのです。

2023/10/20 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.309 多くの人がレトリックを使いこなせない理由を、孫社長のプレゼンから学ぼう

(ソフトバンク サイトより)

「SoftBank World2023」10月4日、ソフトバンクグループの孫正義さんが登壇し、基調講演を行いました。

冒頭のスライドは、金魚が見つめるABCの文字。

でも、なぜ金魚?
そして、なぜABC?

孫さんはこう切り出しました。

「人間の10倍優れたAGIが、10年以内に誕生する。その次の10年後はどうなるのか?10倍ではなく、1万倍くらいになる」

「金魚のニューロンは人間の1万分の1。1万倍の差とは、人間対猿ではない。人間が金魚になる」

「AIの知能はハードウェアとソフトウェア。ハードウェア=チップでありニューロン。このニューロンに1万倍の差がある。そうなると、ABCを教えたくても無理」

「いろんな屁理屈をつけて、ChatGPTさえもを使ってない人。人生を悔い改めたほうがいい。このままでは『金魚』になりますよ」

これをこう言ったら、どうでしょうか?

「AI活用の問題を議論するレベルを圧倒的に凌駕してしまう世界が、20年以内にやってきます。
AIを禁止している場合ではありません」

なんか今一つですよね。

孫さんは

「あなた、20年後には金魚になりますよ」

ということを、金魚とABCのスライドを効果的に使って、主張したのです。

孫さんがプレゼンで多用するのが、この「誰でもわかり、心にズシンと来るレトリック」。
実は、孫さんは「レトリックの達人」なのです。

レトリックというと「言葉巧みに論点をすり替える技法のことでしょ?」と思われがちですが、本当は違います。

人は、物事を自分の受け取りたいように解釈しようとしがちです。
更に、SNSやメディアにあらゆる情報が溢れている現代では、人は理屈だけで信用しなくなりつつあります。
話し手の主張と、聴き手の思い込みの間に、情報伝達の「ゆがみ」が生じているのです。

そこでレトリックが役に立ちます。

レトリックは、話し手が主張したいことと、聴き手の感情や思い込みの間にある情報伝達の「ゆがみ」を可能な限り解消していくことができるのです。

レトリックの代表的な原則の一つに「比喩を使うこと」があげられます。

比喩は、情報伝達の「ゆがみ」を解消するのに最適です。たとえば、言いたいことを絵や図で表せば一瞬で伝えることができます。

実は孫さんは、ChatGPTを徹底的に使い込み続けて、「AIとは何なのか?」を孫さんなりに考え抜いてきたそうです。

そして今回の講演で、孫さんは冒頭から「金魚とABC」の比喩を用いて、高い説得力を発揮したのです。

このように高い説得性を持つレトリックですが、使い方には注意が必要です。

それは、強い主張と理論を持っていることです。

ちゃんとした理論のないのに、レトリックを使っているケースをよく見かけます。
それは言葉巧みに論点をすり替える「まやかし」でしかありません。
そしてそのまやかしを、聴き手は直観的に、見抜いてしまうのです。

孫さんのこのプレゼンは、SNS上のインフルエンサーの皆さんから大きな反響を受けました。これも孫さんが考え抜いたことを、わかりやすいレトリックで表現したからなのです。

でも、これは決して難しいことではないのです。

皆さんも、いつも考え続けている問題があると思います。その問題をもう少し考えてみて、何かわかりやすいモノにたとえられないかを、考えてみる。

そうしたレトリックが、聴き手に伝わるのです。

2023/10/13 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.308「口ベタでも説得力がある理由」柳井正社長のプレゼン力

私が初めてファーストリテイリングの柳井正社長のプレゼンを取材したのは、2017年3月16日、有明の新オフィスお披露目会見でした。

そのときの柳井さんのプレゼンは、身振り手振りもなく棒立ち。
「お客様。お客様。お客様。お客様と、われわれ。取引先。地域。社会。お客様に対する最高のサービスを提供する。世界とつながる」と、「お客様」を4回も繰り返し、ゆっくりと言葉を紡ぎ出すように話していたのが強く印象に残っています。

その後、別の会見で柳井さんのプレゼンを見る機会を得たのですが、「口ベタなんで…」と言いながら、そのときもゆっくり言葉を選びながらご自身の体験のみから語っていて、高い説得力がありました。

一般的なビジネスプレゼンでは、TEDのように派手なプレゼンスタイルを評価する傾向にあります。しかし、そのようなプレゼンが軽薄に見えてしまうほど柳井さんのプレゼンには重量感があります。

柳井さんは自分を偽らず、常に自分らしく語っています。
自分らしく、嘘偽りのない態度で話すほうが、聴き手は誠実さや信頼感を感じるのです。

アメリカの経営学者・ビル・ジョージは、この自分を偽らずにありのまま振る舞うリーダーシップを「オーセンティック・リーダーシップ」と名付けています。そして人は自分らしく振る舞うリーダーに強い絆を感じるのです。

柳井さんは、いつも正直に「ボクはたくさん失敗している。失敗しても諦めずに挑戦する」と繰り返し語っています。そんな沢山ある失敗の一つが、後継者の育成だったかもしれません。
かつて2002年、玉塚元一氏(現ロッテホールディングス代表取締役社長)に社長を譲ったことがあるのですが、2005年に玉塚氏を更迭。自身が社長に復帰し、そのまま後継者育成という課題を20年間抱え続けています。

しかし、今年8月末、子会社ユニクロの社長に塚越大介取締役(44)が9月1日付で就任することが発表されました。
いよいよ柳井さんの後継者を見据えた経営体制づくりが始動し始めたのかもしれません。

今後を注目していきたいと思います。

2023/10/06 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.307 思いを語れば共感される理由:バルミューダ・寺尾社長のプレゼン力

パンが美味しく焼ける「バルミューダ・ザ・トースター」のヒットで有名になったバルミューダ。

そのバルミューダ・寺尾玄社長の「バルミューダ・ザ・ゴハン 新商品発表会」を取材したときのことです。

寺尾社長は発表会冒頭でこう言いました。

「パンが美味しくなるならご飯も美味しくなるはず。でも家庭だと、美味しく炊ける土鍋炊飯は、コンロを1つ専有してしまう。もっと便利に、土鍋より美味しいご飯を実現したいと思った」

そして、なぜかこのあと、『当初、炊飯器ではなく「冷凍ご飯開発」に走ったのです』と、紆余曲折した失敗談を滔々と語り始めたのです。
新商品に加えて、商品の開発失敗談にここまで多くの時間を割いたプレゼンは初めて見ました。

そして発表直後、メディアでは失敗談も含めて多く取り上げられ、炊飯器は品薄になったのです。

寺尾社長のプレゼンは、「なぜこれをやっているのか」自分が心から信じている思いを重要視しているように思えます。
「商品よりも、思いの方が大事なのでは?」と思えるほどです。
寺尾社長にとって、失敗談は思いを語るうえでの大事な要素なのです。

聴き手は、話し手の「なぜ、これをやっているのか?」という強い思いに対して、興味を持ち共感します。

しかし世の中の多くのプレゼンでは、「なぜ、これをやっているのか?」が不明確。
だから、スルーされやすいのです。

寺尾社長の「自分の思い」を重視する姿勢は、ご自身が書いた自伝『行こう、どこにもなかった方法で』でも、首尾一貫しています。

執筆当時、すでにバルミューダを立ち上げていたにもかかわらず、この本では読み続けても、バルミューダのことがなかなか出てきません。
全11章中、バルミューダが登場するのは、なんと9章から。そこまで「幼少の頃の家族旅行」や「若い時の一人旅」、「ミュージシャンとしての活動」などの話が、延々と続きます。

初期の商品「グリーンファン扇風機」は、書店で流体力学の本を買い、独学で学んで作り始めます。そして寺尾社長の思いに共感した応援者が増えてくのです。

この本では、「なぜやっているのか」の原体験をぶ厚く語ったからこそ、9章以降のバルミューダの話に強い説得力が宿っていました。

以前、ある編集者さんがこんなことを言っていました。

「この前、バルミューダの社員さんたちに取材に行ったんですけど、みなさん寺尾社長のことが大好きなんですよね」

プレゼンでは「自分の思いなんて語らずに、本題から」と思われがちです。
でも実際には、人はその人の本当の思いを知ることで、共感するようになるのです。

今度の勝負プレゼンでは、思い切って強い言葉で自分の思いから語ってみてはどうでしょうか?

2023/09/22 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.306 「パーパスは信頼性を上げる」麻生副総裁のプレゼン力

一昨日に岸田文雄首相が発表した内閣改造・自民党役員人事では、麻生太郎副総裁の続投も決まっていました。

麻生さんは元内閣総理大臣であり、安倍政権では戦後最長の財務大臣も務めた方ですが、無類のマンガ好きでも有名で政治に興味のない世代にも人気がありましたね。

麻生さんの政治的な方向性については賛否両論あるかと思いますが、コミュニケーションで学べる点が多く、私は以前より注目していました。

この麻生さんが議員として駆け出しだった38歳の時、路上で突撃取材を受けたときの動画があります。

記者から「どんな政治家になりたいですか」と聞かれて答えたのが下記のコメントです。

日本の方向を間違えないような政治家になりたい。いくら嫌われてもいい、石もて追われるがごとくなってもいいけど、国会議員として日本の方向を世界の中の日本という立場で間違えずにやりたい

38歳にしてすでに貫禄十分の話しぶり。現在の雰囲気とまった変わりません。

「政治家として日本のために戦う覚悟を固めてるって感じで格好いい」
「ズバッと忌憚なく答えてて今の若い政治家には感じられない気概がある」
「国のことを本気で考えてない人には嫌われてもいいなんて言葉は出てこない」
など、SNSでも好意的なコメントが多く見られました。

麻生さんの良い点は、政治家として駆け出しの頃に自ら定めていた「嫌われてもいい。日本の方向を間違えないような政治家になる」というパーパスを実践し続けていることです。

最近、8月に台湾を訪問した麻生さんは、中国が軍事的圧力を強めている中、「日本、台湾、アメリカをはじめとした有志国に強い抑止力を機能させる覚悟が求められている」とコメント。当然ながら中国側の反発や、与野党からも懸念の声が上がり、大きく話題になっていました。
関係筋によると、「外務省と相談した上での発言であり、岸田総理の口から言えないから麻生さんが言うべきだと判断した」とのことですが、岸田さんが言えない状況で「嫌われても自分が言う」という姿勢を首尾一貫していることが感じられました。

パーパスは企業が語るものと思われていますが、企業だけのものではありません。
個人が自らのパーパスを定め、語り続けることで、何を聞かれてもぶれることがなくなり、信頼性が上がります。

それは時に嫌われることもあるかも知れません。
しかしその首尾一貫している姿勢が、信頼を獲得するのです。
ぜひ、個人のパーパスを仕事の中で語ってみることをおすすめします。

2023/09/15 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika