No.308「口ベタでも説得力がある理由」柳井正社長のプレゼン力

私が初めてファーストリテイリングの柳井正社長のプレゼンを取材したのは、2017年3月16日、有明の新オフィスお披露目会見でした。

そのときの柳井さんのプレゼンは、身振り手振りもなく棒立ち。
「お客様。お客様。お客様。お客様と、われわれ。取引先。地域。社会。お客様に対する最高のサービスを提供する。世界とつながる」と、「お客様」を4回も繰り返し、ゆっくりと言葉を紡ぎ出すように話していたのが強く印象に残っています。

その後、別の会見で柳井さんのプレゼンを見る機会を得たのですが、「口ベタなんで…」と言いながら、そのときもゆっくり言葉を選びながらご自身の体験のみから語っていて、高い説得力がありました。

一般的なビジネスプレゼンでは、TEDのように派手なプレゼンスタイルを評価する傾向にあります。しかし、そのようなプレゼンが軽薄に見えてしまうほど柳井さんのプレゼンには重量感があります。

柳井さんは自分を偽らず、常に自分らしく語っています。
自分らしく、嘘偽りのない態度で話すほうが、聴き手は誠実さや信頼感を感じるのです。

アメリカの経営学者・ビル・ジョージは、この自分を偽らずにありのまま振る舞うリーダーシップを「オーセンティック・リーダーシップ」と名付けています。そして人は自分らしく振る舞うリーダーに強い絆を感じるのです。

柳井さんは、いつも正直に「ボクはたくさん失敗している。失敗しても諦めずに挑戦する」と繰り返し語っています。そんな沢山ある失敗の一つが、後継者の育成だったかもしれません。
かつて2002年、玉塚元一氏(現ロッテホールディングス代表取締役社長)に社長を譲ったことがあるのですが、2005年に玉塚氏を更迭。自身が社長に復帰し、そのまま後継者育成という課題を20年間抱え続けています。

しかし、今年8月末、子会社ユニクロの社長に塚越大介取締役(44)が9月1日付で就任することが発表されました。
いよいよ柳井さんの後継者を見据えた経営体制づくりが始動し始めたのかもしれません。

今後を注目していきたいと思います。

2023/10/06 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika