ブログ「次世代トッププレゼン」
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伝わるプレゼンになる「決め台詞」のポイント

「一生懸命プレゼンしているのになかなか伝わらない」
こんなお悩みをお持ちの方が多いかと思います。
なかなか伝わらないプレゼンの多くは、メッセージの作り方に原因があります。
伝えたいことを一言で言い表せる「決め台詞」を首尾一貫して伝えれば、メッセージが強まり、信頼感が高まって、伝わりやすくなるのです。
多くの方々は、プレゼン直前まで資料づくりに奔走しています。しかし、プレゼン本番で「首尾一貫した決め台詞」を言えるビジネスパーソンは、残念ながらほとんどいないのです。
決め台詞とは「自分は、自社は、何のためにこれをやっているのか」というビジョンや哲学を練り込んだメッセージのこと。
どんな素晴らしいテクニックでプレゼンしても、首尾一貫したメッセージがなければ、人は無意識に「この人、ちょっと信用できない」と感じてしまい伝わらなくなるのです。
例えばバミューダの寺尾玄社長は、手元に影が出ずブルーライトもカットするデスクライト「BALUMUDA THE LIGHT」の会見で、「子供たちの目を守りたかった。だからBALUMUDA THE LIGHTを作った」と言い、それを常に首尾一貫して語り続けていました。
また最近では、羽生結弦選手のプロ転向記者会見のメッセージが、ビジネスパーソンにも参考になります。
羽生選手は常々「僕の原点は絶対勝ち負け。何のためにスケートをやってるか。それは勝ちたいから」と言い続けています。
だから、“これは引退会見ではない。これからも勝負は終わらない”というメッセージを込めた「本当にありがとうございます。『ました』ではなく『ます』にさせてください」という言葉がほとばしるのです。
次回のプレゼンでは、ご自身の決め台詞を考えてみてはいかがでしょうか。
確実に伝わるメッセージになります。
詳しい決め台詞の作り方は以下の執筆記事にも書いていますので、ご興味ある方はご覧ください。
社員が動く社員教育資料の作り方

プレゼンは、この順番でストーリーを作れば、聴き手が共感して行動につながりやすくなります。
①WHY(なぜ、これをやるのか)
②HOW(どのように、実現すればいいのか?)
③WHAT(結果、何が出来るのか?)
このWHY→HOW→WHATの順番で伝える方法論は、記者会見、発表会に限らず、多くのプレゼンで大きな力を発揮します。こんな感じです。
WHY
「若い頃、貧乏旅行をしてイタリアで食べたトーストが、涙が出るほど美味しかった。同じ味を再現したいと10年考え続けた」
HOW
「雨の日の社員とのバーベキューで、思いがけず同じ味のパンが焼けた。ヒントは、蒸気だった」
WHAT 「そこで作ったのが、BALMUDA The Toasterです」
多くのプレゼンでは、冒頭で製品紹介をしますが、この構成で紹介する製品やサービスを最後にした方が共感が伝わるのがおわかりになったでしょうか。
ただし、研修資料の場合は、少し工夫が必要になります。
①WHY(なぜ、これをやるのか)
②WHAT(これを学ぶと、何が出来るようになるのか?)
③HOW(どのようにすればいいのか?)
このように順番を変えてWHY→WHAT→HOWの流れで伝えた方が、受講生は関心と集中力を維持して実践しやすくなります。
WHY 「『お客様志向』といっても、実はあまりできていないのが現実」
WHAT「マーケティングを学べば、お客様志向が実践できる」
HOW 「そこで具体的に学ぶ方法は、こうすればいい」
企業では、社内で社員教育を行うケースも多くあります。
教育資料は、WHY→WHAT→HOWの順番で資料をつくってみることをおすすめします。
岸田総理の記者会見から見る危機におけるリーダーの言葉

7月8日、安倍晋三元総理が奈良市内で街頭演説中に襲撃された直後、岸田総理が官邸で記者会見を行いました。
おそらく状況を突然知らされ、ご自身が大きなショックを受けた直後だったのではないでしょうか。
私自身でさえ、このニュースを聞いてショックを受け、仕事に手が付きませんでした。
まして、一緒に長年仕事をしてきた安倍さんの悲報です。
恐らく、意識不明で助からないという状況も聞かされているはずです。
会見では涙ぐんでいましたが、感情を抑えながらギリギリの精神状態で話しているのが伝わってきました。
一国の首相として会見しなければならない、究極の状況での会見だったと思います。
しかし見事に岸田さんは会見を終えました。
今回の会見のポイントは、一切憶測を交えず、あくまで知り得ていて、国民と共有できる事実に基づいて話していたことです。
・動機はまだ十分に把握されていないこと
・選挙中に行われた卑劣な蛮行であり、決して許せることでなく、最大限の厳しい言葉で非難すること。
・政府としてあらゆる場面を想定して万全の用意をすること
・現在、懸命の救命措置を行っていること
あらゆる質問に対し、首尾一貫してこの姿勢で臨んでいました。
「今後の政局について」や「戦前的な社会的状況では」という質問に対しても、
「まだ触れる状況ではない」という姿勢を貫きました。
涙を堪えながらの会見でしたが、見事にやりきったのはリーダーとしてあるべき姿です。
カンペを手にしていましたが、ほとんど見ずに、自分の内なる声を言葉にしていた点も素晴らしかったと思いました。
ここ数日、何か大事な物を失ったような喪失感を抱いています。
安倍さんのご冥福をお祈りいたします。
KDDI通信障害にみるリスクマネジメント

「多大なご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」
7月3日午前。KDDI高橋誠社長が都内で記者会見し、深々と頭を下げました。
7月2日未明に発生した大規模な通信障害に対する謝罪会見でした。
私は、2018年に高橋社長の会見を取材したことがあります。当時は業界有名人の田中孝司社長から突如トップの襷を引き継いだばかり。しかし堂々としたプレゼンや、メディアとも和気藹々とコミュニケーションしていた姿が印象的でした。
今回の謝罪会見は、現時点でベストな会見だったと考えます。特に良かった点が、下記2点です。
①問題発生から会見までのスピード
7月2日深夜1時35分に問題が発生。25分後の午前2時に社長に報告が届き、すぐに事故対策本部を立ち上げ。問題発生30分以内でトップに報告が届くのは、リスクマネジメントの仕組みがしっかりと動いています。
そして障害の最中の翌日午前11時に、会見を行いました。
会見では記者から「復旧前の会見は珍しい」との質問がありました。高橋社長は「影響範囲が広い。社長からいち早く伝えた方がいいと判断した。復旧対応中でまだ詳細を分析できていない。最終的な結果については改めてお伝えする」と答え、迅速性を重視した判断を行ったのです。
②分かりやすさと正確性・ストーリー性ある説明
記者会見で大事なことは、記者に正しく理解をしてもらった上で、できる限りありのまま報道してもらうこと。
高橋社長は事実確認した上で、「事象の概要」→「事象による影響」→「事象の原因」→「一次処置対応状況を時系列で説明」→「検討している再発防止策」などを、分かりやすくプレゼン資料にまとめて、一人で説明しました。技術者出身とはいえ、ここまで全ての状況を詳細に把握した上で説明するのは、簡単なことではありません。会見後、SNSでは高橋社長の評価は急上昇しました。
「この社長すごい。1人で説明し、質疑応答している。ちゃんと把握して話してる。日本の企業でこれだけできる社長は、どれほどいるのだろうか」
「技術面でも誰のサポートも受けずすらすら回答してるし、障害発生からの流れも全て把握してて正に上に立つ人って印象」
「引責辞任なんて、古臭い変な慣習。あれほど能力の高い経営者は珍しい、大切にした方がいい。どうか、やめないでくれ、高橋社長」
謝罪会見で評価を上げるトップ、なかなかお目にかかれません。隠し事をせずにあるがまま、分かりやすい説明を心がける姿勢から誠実さが伝わり、信頼感が上がったのです。
今後、今回の通信障害の調査やヒアリングも進み、第二回目、第三回目の記者会見も行われると思います。人間ですから、間違うことはあります。しかし有事においては、何をさしおいても初期対応を迅速に実施し、誠実・オープンに行うことであると、KDDIの通信障害の事例は教えてくれます。
プレゼンで信頼性を高める方法

浅田真央さんがブランドアンバサダーになっているエアウィーヴという寝具メーカーがあります。
私は数年前に、エアウィーヴの高岡会長と浅田真央さんの記者会見を取材したことがあります。
しかし当初、エアウィーヴは寝具を新発売した最初の数年間は、あまり売れなかったのです。
これが売れるようになったきっかけがあります。
「シナトラ・テスト」をご存じでしょうか?
シナトラとは、アメリカの歌手フランク・シナトラのこと。シナトラの歌に「ニューヨークでうまくいけば、どこへ行ってもうまくいくさ」という一節があります。ニューヨークは世界で恐らく最も競争が激しい場所です。ここで成功すれば、恐らく世界のどこでも成功しますよね。
このようにシナトラ・テストは、聴き手に「ここで使っているから大丈夫」と思わせて説得力を高める方法論です。例えば、コンサルティング会社から「グーグルも当社のクライアントです」と言われれば、たとえその会社のクライアントがグーグル1社だけだったとしても、「ここのコンサルティングは絶対大丈夫だな」と感じさせることができます。ちなみに「シナトラ・テスト」は、チップ・ハースとダン・ハースが著書「アイデアのちから」で提唱した考え方です。
エアウィーヴも、まさにシナトラテストを活用して成長した会社です。
当初売れなかったエアウィーヴでしたが、一部に熱狂的な愛用者がいました。オリンピックを目指すアスリートたちです。
常にトレーニングを欠かさない彼らは、「これは睡眠で疲れが取れる」といって愛用していたのです。実は浅田真央さんもその一人。
質の高い睡眠を求めるアスリートに集中して製品開発を進め、彼らが愛用していることをアピールしたことで、エアウィーヴは爆発的に成長したのです。
プレゼン資料を作るとき、さりげなくシナトラ・テストを使ってみると信頼性を獲得しやすくなります。
ぜひお試しください。