神戸製鋼のデータ改ざん問題。いま日本中を揺るがしています。
もしあなたがトップの立場で、いまこの場で、データ改ざんの事実を知らされたとしたら、次のどちらを選ぶでしょうか?
【選択肢1】ほとんどわからない状態だけど、まずは手持ちの情報ですぐに記者会見を開く
【選択肢2】何もわからない状態で記者会見するのは不誠実だと思う。できるだけ情報を揃えた上で、記者会見を開く
神戸製鋼が選んだのは、選択肢2でした。
10月08日 データ改ざんが発表
10月13日 川崎博也会長兼社長が正式な会見の場に現れる
5日間が経過していました。この間に経済産業省の「ゆゆしき事態だ。神戸製鋼にはしっかり対応して欲しい」という会見もありました。さらに川崎会長が経済産業省に謝罪会見した後、翌日に正式に記者会見。また「鉄は問題ない」と言った翌日に、「鉄にも問題の可能性がある」と、言っていることが変わってしまうのもよくありません。
不祥事が起こった際に、何よりも優先すべきことはスピードです。選択肢1で行くべきなのです。
しかし何もわからない状態で記者会見するには、どうすればいいのでしょうか?
私が今まで見てきた中で特に印象に残っているのは、2007年12月14日に長崎県佐世保市のスポーツクラブ「ルネサンス佐世保」で発生した銃乱射事件のトップ会見です。
当時、午後10時にテレビをつけたところ、ルネサンスの斎藤社長が記者会見している映像が流れていました。
事件発生が、14日午後7時15分。
斎藤社長の記者会見開始が、同日午後9時30分。
事件発生から記者会見まで、わずか2時間15分での会見でした。
斎藤社長は、2時間15分で、想定できなかった事件を知らされ、そのとき分かっている事実を把握した上で、記者会見をマスコミ各社に通知し、ご自身の言葉で記者会見に臨まれたのです。
当時、ネットでも「この社長すごい」という書き込みが多く見られました。
斎藤社長はこの後責任をとって辞任されました。トップのリーダーシップのあるべき姿を見た思いがしました。
しかし多くの企業では、不祥事が起こると次のように考えています。
「何もわからない状態で会見をしても責められるだけだ。トップの面子もある。データが揃ってから、会見をセットしよう」
しかし最優先事項は「時間」です。
すべてのデータを揃えてから会見をセットしようとすると、広報担当者がどんなに不眠不休で頑張っても、数日後あるいは1週間後になります。
不祥事が起こった際に、何よりも不安なのはお客様です。その不安なお客様に応えるためには、何よりもスピードが大切です。遅くなればなるほど、不安は急拡大します。しかし時間をかけても得られる情報は実はそれほど多くありません。
一方でタイミングを失えば失うほど、市場の信頼が落ちてしまうのです。
では、どうするか?
トップが限られた情報の中で判断し、公開できることは隠さずに話し、不安な顧客に応えることです。そして、「現時点で入手可能な情報で、憶測は排除し、語るべきことは何か」を考え抜いた強いメッセージが必要です。
ルネサンスの斎藤社長は、言葉には出しませんが、覚悟ある態度から、
『私は逃げも隠れもしません。任命責任も含め、すべて自分の責任です』
という覚悟が強く伝わってきました。見事です。
トップの謝罪会見は、「事実」よりも、「誠実」かどうかの姿勢が求められます。そして最後に「トップとしてお客さんにどうしたいか」をポジティブに伝える場でもあるのです。そのために「トッププレゼン力」が必要なのです。
一方で川崎会長の会見を見ると、技術面で今すぐ出来る「トッププレゼン力」の改善点が4点あります。
(1)低く落ち着いた声でゆっくり話すこと
声が弱く、頼りなく感じられてしまいます。呼吸を整えて、ゆっくりと低い声で話すことです。会見直前に「悪代官スペシャル」を行うと、トップとしての覚悟と胆力が伝わります。
(2)水を飲んでおく
会見中、頻繁に舌を出して唇をなめていました。唇をなめると、落ち着きのない印象になります。原因は緊張して口が渇いているからです。会見直前にしっかりと水を飲んでおくことでほとんど解決します。
(3)髪を整える
髪の毛が乱れていました。余裕がないように見られます。お忙しかったのかもしれません。特に、前髪がたれて目線にかぶっていました。アイコンタクトは大事なコミュニケーションの武器になります。会見前、2分でも時間をとって、目にかぶらないよう前髪は後方にセットすると印象が良くなります。
(4)まばたき
まばたきが多く、後ろめたい印象を与えています。人は、緊張しているときや、おびえているとき、目が乾燥しているとき、まばたきの回数が増えるのです。逆に、深く集中しているときほどまばたきの回数は少なくなります。直前に、目が乾かないよう潤いを与えるような目薬をさしておくと、まばたきが軽減されるかと思います。
■当コラムは、毎週メルマガでお届けしています。ご登録はこちらへ。
■Facebookページで「いいね」すると、さらに色々な情報がご覧になれます。