No.300 ビッグモーターから学ぶ「内部通報が機能しないと、メディアに公開される」

7月25日、中古車販売大手ビッグモーター・兼重社長は記者会見で憤りの表情を浮かべて、こう述べました。

「6月26日に特別調査から不正行為の報告書を受けて、本当に耳を疑い、愕然とした。お客様の車を預かって傷をつけて水増し請求するなんてあり得ない。(社員には)刑事罰で罪を償ってもらう(※)」

兼重社長は、2時間の会見で「私は不正行為を知らなかった」と何度も主張。
不祥事会見でこの言葉を繰り返すトップ、実に多くおられます。

米国NOx排出テスト・クリアのための不正行為をしたフォルクスワーゲンのCEOも「私は不正行為を一切知らなかった」。
このCEOは、悪い報告をする社員を罵倒する人物でした。

今回の会見で、次期社長は「社長の強すぎるリーダーシップに原因があった」と言います。

同社元社員で店長も務めた人物は、メディアの覆面インタビューでこう語りました。
「社長は本当に知らなかったと思う。誰も言えない。社長以外は皆知ってて、社長だけが知らない」

結果的に、トップが事実を把握できないがために、不祥事は日常的になり放置されたのでしょう。

実はメディアではあまり報道されていませんが、社長会見では、社長宛に数回にわたる内部通報があった事実が語られました。
兼重社長はこう発言しています。

「その人間から何度も報告があった。今回もまたかと。もう仲良くやってくれと。すぐ部長を調査に行かせて内容を確認したところ『仲良くやることになりました』という報告を受けたので、それで解決したなと思った。あの時きちんと対応しておけばと反省している」

この対応は、内部通報の対応としては、最悪パターンと言えます。
内部通報した社員は、社長を信じて現場の問題を報告した訳です。
しかし社長は、部長に対応を任せました。
「仲良くやることになりました」という報告は、裏を返せば「キツく叱って、二度と内部告発するなよ、と言っておきました」ということなのかもしれません。

貴重な内部通報がもみ消された瞬間だったと思います。

最近明るみになる事件の多くは、メディアへのリークで発覚していることをご存じでしょうか?

2020年 2022年には公益通報者保護法が改正され、通報者がより保護され通報しやすくなりました。
しかし現実には、企業は内部通報を積極的に利用しておらず、今回のように内部通報があっても会社が抑え込んでしまうことが多いのです。

そもそも内部通報を行う社員は、会社をあまり信用していない可能性が高いものです。
その結果、不正は内部通報ではなく、行政やメディアに通報されるようになります。
当然ながら、経営トップが不祥事を社員から知らされていません。社外から突如として攻撃を受け、対応が後手に回ります。

今回の不祥事は、6月26日に特別調査から不正行為の報告書がありました。
にも関わらず、会見まで多くの時間を割いてしまいました。
不祥事会見で最も大切なのはスピード感です。会社の正式発表前に報道がなされると、隠蔽が疑われ、SNSで騒動が拡大して炎上します。この結果、信頼回復に時間を要するからです。

組織行動学者のエイミー・C・エドモンドソンは、著書「恐れのない組織」で、「組織の心理的安全性が高まればマイナス情報が経営層に速く伝わり不正隠しは起こりにくくなる」と主張します。
心理的安全性とは、集団の大多数が「皆が気兼ねなく何でも言えて、自分らしくいられる」と感じる雰囲気のことです。

ビッグモーターが今後不正を繰り返さないためには、内部通報制度の仕組みを強化する一方で、言うべきことをトップに言いやすい心理的安全性の高い組織風土への変革が必要です。
新しい経営陣がこの問題に真摯に取り組むことを願っています

※会見最後に社員の告訴は取り下げるとの意向が社長より示されました
※2023/08/03 21:45 公益通報者保護法の改正は2022年に訂正

2023/08/03 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.299 まず結論ではなく、まず強い想い。吉村洋文大阪府知事のプレゼン力

(写真:吉村洋文公式サイト)

昨日の7月26日、大阪府定例記者会見で吉村洋文大阪府知事が登壇しました。
2025年国際博覧会(大阪・関西万博)の準備が遅れつつあり、問題になっていることが注目されています。

吉村知事は、2019年に大阪府知事に就任してからすでに二期目。大阪で多くの支持を得ている知事です。
コロナ渦で強いリーダーシップを発揮していた知事の姿が印象に残っている方も多いのではないでしょうか。

大阪・関西万博の施設は、全部で3タイプあります。
「タイプA」 参加国や地域が、自由にデザインするパビリオン。
「タイプB」 日本が作って渡すパビリオン
「タイプC」 パビリオンの一部を共同利用するタイプ

「万博の華」は「タイプA」です。吉村知事もタイプAでの建設を強く希望していました。
しかし7月26日時点で、大阪市への許可申請の数はゼロ。万博まで工期が間に合わない可能性が発生しているのです。

さらに開催時期「延期論」がささやかれ始めている背景もあり、1時間の質疑応答では万博パビリオン施設への質問が大半を占めましたが、吉村知事は辛抱強く丁寧な説明を展開していました。

多くの政治家は「我々(政党)は」「国では」と組織主語で話しますが、公の前で「私の考えは」と言える政治家は、多くいません。
吉村知事の良い点は、自分自身の想いを明確に表明することです。

記者から「タイプB」「タイプC」への変更の可能性を聞かれると、吉村知事は「僕の考えでは」と前置きした上で、「僕はAタイプでやると言っているので、できる限りAタイプでやりたいと思ってます。今もそう思ってます。2025年4月に必ず開催する。絶対に遅らせることはない」と強い想いを明確に口にしました。

その上で、「ただAタイプに固執しすぎるとできない国も出てくる。無理矢理推し進めるというのは、ちょっとやめたほうがいいと思う。想いはあるけれど、できないところに固執して結局できませんでしたと言うよりかは、できるところに行ったほうがいい」と、冷静に一歩引いた見解を述べたのです。

「プレゼンは、先に結論を述べよ」と言う人がよくいます。
しかし、万博の華であるAタイプを期待している人たちは多くいます。
そんな人に「Aタイプに固執しない」と結論を先に語ると、その人たちを大きく失望させることになります。

一方で、リーダーの強い想いは人々に届きます。
最初に結論を語らず、まずは強い想いを表明することで、相手に「この人は真剣だ。ちゃんと話を聞こう」と聞く姿勢ができます。
同じ結論でも、最初に想いを語ることで、聴き手の受取方は大きく違ってくるのです。

かつて吉村知事が日本経済新聞のインタビューで「首相を目指しますか」と聞かれ、きっぱり「目指しません」と言い切ったコメントを拝見したことがあります。
吉村知事はその理由を以下のように述べています。

知事や市長は選挙で直接選ばれる。腹をくくれば公約を実行できる。首相は国会議員に選ばれる。派閥などに配慮しないとならず、スピードと決定力が圧倒的に欠ける。僕自身は向いているとは思わない。性格上、まとめられない。
(『国会議員は3割減らせる 大阪知事が唱える国政改革 吉村洋文・日本維新の会共同代表』2023年7月15日 日本経済新聞より)

最近、鳥取県の平井伸治知事や、北海道の鈴木直道知事など、人口の少ない都道府県で活躍する知事が目立っています。
今後、吉村知事のように自分の想いを自分主語で語り、日本を地方から変革していく政治家のリーダーが増えていけば、日本ももっと元気になると思います。

2023/07/27 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.298 植田和男日銀総裁のプレゼン力

日本銀行(日銀)は銀行ですが、普通の銀行とはかなり違います。
日銀は、お金を刷る権限を持っています。さらに金利の方向性も決めることができます。
日本銀行は、日本の中央銀行。日本経済の大事な舵取りの一役を担っているのです。

今年4月に、この日本銀行の総裁に就任したのが、植田和男さんです。
日銀総裁でとても大事なのが、今後の金融政策の方向性を語るメディアとのインタビューです。

一般的な話ですが、組織のトップのプレゼンは、市場や組織を動かします。
しかし日銀総裁のプレゼンの影響力は、ケタ違いです。

経済学者のケインズは「中央銀行が金利の誘導目標を明確に示すことで、金利動向の様子をうかがう投資家もそれになびいて行動する」と述べています。

日銀総裁のちょっとした一言、ほんの少しの間、目線で、市場関係者は裏にあるメッセージを読み取って、株式相場や為替相場が大きく動く、ということです。
日銀の施策一つで、金融関係者は大金を稼いだり失ったりします。だから皆、真剣に日銀総裁の話を聞きます。

あなたはプレゼン中に、思わず言葉が詰まって間を取ることってありませんか?
普通のプレゼンなら何の問題もないこんな仕草でも、日銀総裁がやると相場がいきなり下落したり、高騰したりするのです。
想像も出来ないほどすごいプレッシャーですよね。

では新たに就任した植田総裁のプレゼンは、どうなのでしょうか?

6月16日の会見で、植田総裁は、紙を読み上げずに正面を見据えながら明言しました。

「粘り強く金融緩和を継続していく。賃金の上昇と2%の物価安定の目標を持続的・安定的に実現することを目指す」

植田総裁の良い点は2つあります。

1つ目は、大事なメッセージを自分の言葉で話すこと。
紙を見ずに自分の言葉で話すと、自信を伝えることができるのです。

「紙を見ず自分の言葉で語ること」は、人を動かす経営トップにとっては当たり前のことですよね。
「このトップ自信がなさそうだ」と見られると人は動いてくれません。
しかし、日銀総裁が紙を見ずに話すことがいかに凄いことかは、相場の反応を見ると分かります。

会見中、「金融緩和は続く」と判断した円相場は141円台まで円安が進み、輸出関連の株価も上昇。日経平均株価は2日ぶりに33年ぶりの高値更新しました。やはり日銀総裁のプレゼンは、それこそ異次元の重圧なのです。

良い点の2つ目は、明言せずともメッセージ力を強めていること。

「正直、物価の下がり方が思っていたよりやや遅いかなと思う。資産価格の高まりも続いている。行きすぎると金融的不均衡につながり、将来マイナスの影響を及ぼす」
「次の金融政策決定会合までの間に、新しいデータや情報が入る。それに基づき前回とは違ったある程度のサプライズが発生することもやむを得ない」

このように語った植田総裁は、会見で緩和維持を明言する一方、サプライズ修正の可能性も示唆していました。
サプライズ修正とは、「市場関係者が想像もしていない方法で、金融政策をいきなり修正するかもしれませんよ」ということ。
前任者の黒田総裁は、よくこのサプライズをやっていたので、「黒田バズーガ」と言われていたりしました。

植田総裁は、修正について語るときは、紙を見ながら慎重に話していたのも印象に残りました。おそらく執行部との議論を丁寧に伝えようとする意識が働いたと思われます。

緩和姿勢継続を示すと同時に政策とのバランスも保ちつつ、サプライズにも含みを持たせて話しているのです。
市場は「いつ長期金利上限を撤廃するサプライズがあるのか」に大きく注目しています。この注目に最大限応えながらも、含みを持たせることで強く印象に残しているのです。

ビジネスパーソンも学ぶべきことが多い植田総裁のプレゼンですが、一つ異なる点があります。
それは植田総裁が、その場にいる聴き手だけではなく、市場と対話しているということ。

日銀総裁の大事な仕事は、市場の空気を作ること。
植田総裁は市場と対話しながら、市場の空気を作りだしているのです。

いま、日銀は異次元の金融緩和を続けています。

植田総裁は、いつ、どのように金融緩和を終わらせるのか慎重に見極めているのではないでしょうか。今後も植田総裁のプレゼンに要注目です。

2023/07/19 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.297 ウクライナ・ゼレンスキー大統領のプレゼン力

2023年7月11日から12日までNATO首脳サミットがリトアニアにて行われました。
サミット一番の注目はウクライナのゼレンスキー大統領のコメントでした。

「闘う政治家」として今や彼のトレードマークともなった、ピッタリしたカーキ色のカットソーで現れたゼレンスキー大統領。
NATO加盟の時期が示されないことを受け、まずは「前例のない馬鹿げた話だ」と強い口調でNATOを批判。強烈なカウンターパンチを放ちました。

しかしトップとの会談後に行われた共同会見では、複数年単位の軍事支援計画や加盟手続きの簡素化も発表されたためか態度は少々軟化。以下のようにのべました。

「ウクライナの人々に大事なのは、NATO加盟の安全保障」
「他の国々は生活の支援をしてくれているが、私たちは生活をする前に生き残らなければならない」

ゼレンスキー大統領のプレゼンのポイントは、どのような状況であっても首尾一貫して「ウクライナ国民の安全」を強調していること。
「なぜ私はこの話をするのか」という大義名分が明確なのです。

人は、誰もが共感する大義名分を聞くと、自分ごとに置き換えて考えるようになり心が動きます。
だから大義名分が明確であれば、多少厳しい言い方をしたとしても受け容れてもらいやすくなるのです。

ゼレンスキー大統領が大義名分を語るもう一つの理由はウクライナ国内の支持率です。
EU加盟、NATO加盟、核再武装は、ゼレンスキーが支持率を上げるための「3本の矢」。

今回のサミットでは矢の一つ「NATO加盟」に向けての努力を国民にアピールする大きなチャンスでもありました。
ゼレンスキー大統領の政治家としてのしたたかさも感じさせたサミットでした。

No.296 原稿があっても感情を伝える方法

ある企業のメディア会見を取材したときのこと。

トップは冒頭から最後まで、明らかに他人が書いたと思われる文章を読み上げていました。
機械的に話しているだけ。感情が入っていません。言葉が素通りしていくように感じられ、そのトップが何をしたいのか伝わってきませんでした。
これでは人は動きません。なぜなら人は感情で動くからです。

「台本読み上げでも感情が伝わるように話せませんか?」

このような質問をいただくことがあります。
実際には訓練されたプロの役者は別ですが、普通の人が他人が書いた文章を読み上げても、なかなか感情が伝わらないものなのです。

しかし用意された文章でも、感情を伝える方法があります。
それは話し手本人が「書き換え」を行うことです。

ジェフ・ユナイテッド市原・千葉で、オシム監督の通訳を務めた間瀬秀一氏は、「サッカー選手である彼らが理解して、それをできるようにするまでが自分の成果なんだ」と考え、オシム監督の指示を自分なりに「書き換え」て選手に伝えていたそうです。
正確に訳すのではなく、伝える順番を変え、言葉の補足を施し、ときには出身である三重県の方言まで織り交ぜながら伝えたのです。
(参照元『週刊東洋経済 2023.7.1』「ニュースの核心」)

たとえば、誰かが書いたこんな文章があったとします。

「今期の業績は、おかげさまで目標を達成しました。皆様のご尽力に感謝いたします」

これを読むときに、自分の経験を交えてこう書き換えます。

「今期の業績、私は最後まで達成できるかハラハラしましたが…。最終日に○○社の大型案件を受注しましたね。おかげまで目標達成です。
皆さん、本当にありがとう。ご尽力、深く感謝します」

忙しいトップが文章をイチから作成して話すのは難しいでしょう。

しかし元原稿を自分なりに解釈し、「書き換え」を行えば、読み上げより何倍も感情が伝わりやすくなります。

マネジメントの王道は「人に動いていただくこと」。
ぜひ、原稿に手を入れて、ご自分の気持ちを伝えてみてください。

2023/07/06 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.295 鳥取県・平井知事のリスクマネジメント

「断じて許すことができない」

6月15日、午後10時30分。
普段、とても温厚な鳥取県の平井伸治知事は、鳥取県庁の緊急会議で強い口調で言い切りました。

その3時間前。北朝鮮が発射した弾道ミサイルが日本のEEZ=排他的経済水域内に着弾したことを受け、即刻のメディアに向けての発言です。

「私どもの操業しているベニズワイガニのカニかご船、その操業水域で着弾したと考えられます。こういう所で安心して操業できるでしょうか。断固抗議しますし、政府も対策を取って頂きたい。憤りを持って強く抗議をしたいと思います

引用元:『山陰放送』「何か落ちた大きな音がした」北朝鮮ミサイル落下地点から約27キロで鳥取県の漁船操業中

私は2016年、同じ平井知事のメディア会見を取材しました。そのときの愛嬌たっぷりの振る舞いと得意のダジャレを連発している姿とは打って変わって、厳しい平井知事の政治家としての本質を見た思いでした。

「ダジャレ知事」として軟派な印象がある平井知事ですが、実は東大法学部卒→自治省(現・総務省)の官僚→全国最年少副知事を経て、選挙を戦って鳥取県知事に就任した、筋金入りの政治家です。
2007年の県知事就任直後には「机上の理論では100年経っても駄目だ」と鳥取県庁職員を一喝。変革に取り組み続けています。

平井知事の対応は、企業のリスクマネジメントにも大いに参考になります。

今回の平井知事のメディアの発信で良かった点は、何よりも問題発生からのスピード。

6月15日の午後7時30分に事案発生。
迅速に緊急会議を開く段取りを整えて、3時間後の午後10時30分にはメディアの前に立っていました。

加えて素晴らしかったのは、その場で、翌16日には県は漁の安全が確保されるように、国へ緊急の要請を行うことを明言した点です。

通常は「詳細を確実に確認してから」と考えて、発信を遅らせてしまうケースが多くあります。
しかし発信が遅れれば遅れるほど、県民の不安は増大します。

平井知事をつき動かしているのは、鳥取を豊かな素晴らしい県にしたいという政治家としての使命感です。
県民の生命がかかる有事で、何を差し置いても迅速に対応。誠実な行動を首尾一貫しています。

リスクマネジメントにおいても、使命感、目指すべきもの、想い、行動をシンプルに一致させることが、何よりも大切なのです。

2023/06/29 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.294 効果的なプレゼン資料の作り方

「ジョブズのような、写真メインで文字が少し、みたいな資料、かっこいいですよね。こんな感じのプレゼン資料を作るコツを知りたい」

このような質問を受けることがあります。
例えば、「プレゼンテーションZen」であるような、画面全体に美しい写真、巨大な文字と短いメッセージのみの資料はプレゼンの達人を思わせます。

最近拝見したプレゼンで気になることがありました。
その方の資料は、大きな写真の中心に1行、短くシンプルなメッセージのみが書かれている美しいチャートでした。
しかし後から資料を見たとき、何の話をしていたのか思い出せなかったのです。

確かにセンスの良い写真やシンプルなメッセージはプレゼンの説得力を上げてくれます。
しかし写真に力点を置くあまりメッセージを削りすぎると、本当に伝えたい事が伝わりにくくなります。

なぜなら人の見え方はバラバラだからです。
同じリンゴでも、赤く描く人もいれば、緑を使って描く人もいます。人の認知は同じではないので、写真の印象に委ねるとメッセージがぼやけてしまいます。

そこで必要なのが、最小限の研ぎ澄まされたメッセージを考え抜いて、資料に入れることです。

ポイントは2つあります。

1つ目は、そのチャートで伝えたいインサイト(洞察)を書く。
相手に伝えたいインサイトを書かないと、そのチャートで何を言いたいのか分かり難くなります。
ただし文字をぎっしり書くのは見にくくなりますのでNG。研ぎ澄ましたメッセージに磨き抜くことです。

2つ目は、チャートのタイトルをつなぎ合わせると、ストーリーが浮かび上がってくること。
「見た目重視」で、ストーリーの流れと関係ないタイトルをつけているチャートが多く見られます。これはいただけません。そこで資料づくりの際に、全体をサムネイル表示にして、メッセージの流れが首尾一貫しているかを見ると、一目で確認しやすくなります。

プレゼンを控えている方は、ぜひこの2点を確認してみてください。

2023/06/15 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.293 パーパスを語ることの意味

「早く仕事に行きたい」「出勤が楽しみ」

このように思える職場なら、最高ですよね。
ということで今回も前回・前々回に引き続き、パーパスに関するお話です。

従業員60名のある歯科クリニックは、トップダウン経営で離職率が33%。
毎年従業員の1/3が離職するという職場でした。

しかし離職率は、なんと6%と大きく改善。
しかも、診療時間を短縮したにもかかわらず、業績は向上しました。
従業員の皆さんが「仕事に行きたい」と出社を楽しみにする会社に変身したのです。

ポイントは、パーパスです。

このクリニックは、2019年に従業員全員で話し合い、パーパスを決めました。
一人一人の従業員が、お互いに大事にしている価値観や存在価値を徹底的に話し合って決めたパーパスです。
ですから全員が納得しているのです。

現実には、全員がパーパスを話し合って決めるのは難しいかもしれません。

一方で、今の職場には既に何らかのパーパスの原石になる考え方があるかもしれません。
そこでそれをパーパスに見立てて、自分なりのエピソードを交えながらプレゼンで話してみることです。
良いパーパスは、なぜ自分が働くのか「働く意味」を明確にし、プレゼンに首尾一貫性をもたせてくれます。

調査によると、この5年間で転職先を選ぶ際にパーパスを重視するビジネスパーソンは2倍に増え、さらに年収よりもパーパスを優先する人は半数近くにのぼっています。

今の時代、パーパスを語ることは、仕事を語ることそのものでもあるのです。

◆引用記事
出勤が楽しみ」 高い離職率に苦しむクリニックの「働きたい改革」

2023/06/08 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.292 なぜJINS田中仁CEOの前橋プロジェクトに、人が集まるのか?

5月29日のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で、大手メガネチェーン「JINS」のCEO、田中仁さんが出演していました。
田中さんは今、前橋市の再生に取り組んでいます。

前橋市商店街はかつて賑わっていましたが、現在は最盛期と比べての歩行者数は10分の1以下。「シャッター通り」となっていました。
前橋氏出身の田中さんは、こう話します。

「子供の頃、親に連れられて繁盛している商店街を歩いていた。活気に溢れていたあの頃の街を取り戻したい」

そして率先して商店街におしゃれなカフェやレストランを誘致。ホテルや美術館も作り、今、客足が戻ってきています。
さらに前橋市から起業家を育てるために、9年前に「群馬イノベーションスクール」を立ち上げて無料で起業のノウハウを伝えています。教室には大勢の受講生が集まり、卒業生は次々と起業しています。

短い番組でしたが、田中さんが目指すこと、言っていること、行動は、全て首尾一貫していることがよく伝わってきました。
そしてそんな田中さんの志に、多くの人たちが集まり、前橋が盛り上がろうとしています。

田中さんは、相手が共感するWHY=大義名分を出発点に、行動し、語っています。
そして人は「なぜそれをしなければならないのか」という大義名分を聞くと、心が動き、自分ごとに置き換えて考えるようになります。

逆にうまく伝わらない人の多くは、大義名分をあまり重視しません。
そして「大事なのは中身だ」と考えて、製品やプロジェクトの説明、またはハウツーから話し始めてしまいます。
でもその結果、多くの人からスルーされてしまいます。

皆さんも次のプレゼンではぜひWHYを語っていただきたいと思います。

2023/06/01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.291 パーパスをプレゼンで語る理由

先週のメルマガで、パーパスについて書きました。その続きです。

会見でパーパスを語る企業が増えてきました。
パーパスは、企業の本質を表すものです。
新商品や新サービスの発表会見で、会社のパーパスもあわせて語ることで、その企業が何をしたいのか、そしてなぜその新商品・新サービスなのかが、メディアにストレートに伝わります。

そして良いパーパスは、トップだけではなく一般社員さんが語ることでも大きな効果を発揮します。

パタゴニアのメディア会見を取材したときのことです。
試食会でオーガニック食品が提供されました。しかし価格は一般的な商品よりも高額です。
スタッフにその理由を尋ねると「はい。高いんです。私たちは環境を再生する農業や漁業をサポートしていますからね」と、自信を持って説明してくれたのが印象に残っています。

パタゴニアは「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」と宣言しています。
社員さん一人一人がパーパスの内容に腹落ちしているので、何を聞かれてもぶれることがないのです。

しかし実際には、せっかく良いパーパスを作ってもトップだけが語っている企業が多いように感じます。

パーパスは、トップが語るためのものではありません。
企業の関係者全員のものです。

ぜひあなたも、御社のパーパスをプレゼンの内容に入れ込んで語ってみてはいかがでしょうか?

2023/05/25 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.290 額縁パーパスにならないために

「会社のパーパス」を語るリーダーが増えています。
パーパスとは、会社の存在意義のこと。会社の本質を一言で表現したものです。

最近、さかんにパーパスが語られるようになった背景には、働く会社を決めるときにパーパス重視の人々が増えてきているためです。
入社時や転職時に「パーパスを年収よりも重要視する」という方が半分以上いる、という調査もあります。

「ウォンテッドリー、企業のパーパスと採用に関する調査結果を発表」2022年7月11日)

いまやより良い人材に選んでもらうためには、パーパスは不可欠。
パーパスを掲げるトレンドが生まれているのです。

しかしパーパスを作っても、数ヶ月も経つと経営幹部でも「ウチのパーパスなんだっけ」となってしまうケースは少なくありません。本来パーパスは自分の言葉で語るべきなのに、プレゼンでパーパスを読み上げているトップもいたりします。

一橋大学ビジネススクールの名和高司客員教授は、このようなパーパスを「額縁パーパス」と名付けています。
額縁に入れて飾っているだけで、身についていない…。
リーダーが、台本のように額縁パーパスを棒読みしていたら、嘘くささを感じてしまいますよね。

パーパスは会社の本質です。
リーダーが自然に出てくる自分の言葉で語って、伝えていくものです。

パーパスを伝えるときに単なる綺麗ごとではなく、より説得力を高めるには、具体的な言葉を入れると話しやすくなります。

サイバーエージェントは2021年に「新しい力とインターネットで日本の閉塞感を打破する」というパーパスを制定しました。藤田社長は、パーパスを次のように語っています。

インターネット産業は成長を続け、新しい仕事も増えて、若い人が活躍している。しかし自分達の外に目を向けると多くの先送り世代が居座り、若い人の閉塞感につながっている。既得権益も存在する。
ビジネスも日本の閉塞感はこれからも続く。現状の延長線にある限りそれを打破する動きは進みそうにない。しかし民間企業としてやれることはある。情熱を持って、熱狂しながら変えていきたいと思える問題があれば、その状況を打破するのは自分達の役割の一つだ。
(ハーバード・ビジネスレビュー 2022年6月号)

パーパスは飾っておくものではありません。
ましてや暗記するものでもありません。
ぜひ、ご自身が腹の底から信じることを、具体的で力強い言葉で語っていただきたいものです。

2023/05/18 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.289 嗄れをなくす発声法

人前で話すとすぐ声が嗄れてしまう方、結構多くおられます。
それに話している途中で声が嗄れるのは話しにくくて困りますよね。
一方で声が嗄れない人もいます。

声が嗄れる原因は、喉に余分な力みがあるからです。
ただ「つい力が入ってしまう」ということは、醒めていたり、感受性が弱かったりする人よりは何倍も感動する話になって相手に伝わる可能性も高いので、必ずしも悪いことではありません。

ただ、声嗄れを繰り返しすぎるとガラガラ声に移行して定着してしまうことがあるので、要注意です。長時間大声で話す政治家や八百屋さんなどに声が嗄れている方が多いのは、限界を超えて無理に声を出し続けた結果です。

声嗄れは力みが原因なので、声嗄れを防止するには、声帯をリラックスさせるトレーニングをすると良いでしょう。
ポイントは、声帯を緩めるための「息を使う」ことです。方法は以下です。

(1) ガラス磨きや眼鏡を拭くときガラスに「は~」と吹きか
けるような息をはく

(2) 息を吸って話す

(3) (1)(2)を繰り返す

「は~」と暖めの息をはくことで声帯の力みがとれてきます。
簡単ですのでお試しください。

本番中声が嗄れてしまった場合は、水を飲むことで応急処置ができます。
声が嗄れやすい方は、水を用意してプレゼンに臨みましょう。

2023/05/11 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.288 プレゼン苦手の克服法

「私、プレゼンが大の苦手。やったら絶対失敗しちゃいます。できれば一生やらないで済ませたいです…」

こんな方がいらっしゃいました。
でも社会人ならどんな人でもいつかはプレゼンする機会は訪れるものです。

本来は「これやりたい」「楽しそう」と思って取り組む方が成功しやすいと言われています。
では「仕方ないからやる」のは、やっぱり無駄なのでしょうか。

知人に誘われて、田んぼの草取りの手伝いに伺ったことがあります。当時の私は、「庭の草取りだって面倒なのに、なんで田んぼの草取りをしなくてはならないの?」と思いました。
なんとなく草取りを始めましたが、つまらない単純作業の連続です。

でもやっているうちに少しずつ雑草の抜き方や水田の動き方のコツがつかめて、気持ちに余裕が出てきました。そうすると、「どうするともっと効率が良くなるか」、「身体を上手く使うにはどうすればいいか」など、工夫しながら作業するようになります。ふと楽しんでいる自分に気がついたのです。その瞬間、自然への畏敬の念と共に、幸せな気持ちがわき上がってきました。

江戸時代初期の思想家・鈴木正三(すずきしょうさん)は、「何の事業も皆佛行なり」 と考え、「ただ無心に行動することで気づきが得られる」と言います。
正三の時代は、悟りを開こうと思えば寺院にこもって修行しなくてはいけないと考えられてきました。しかし正三は、日々の仕事こそ仏行であり、仕事をすれば自動的に世の中に貢献することになり、ただ仕事に感謝して働けば悟りが開けるということを言ったのです。

自分が見えている世界は、これまでの経験からくる前提や思い込みから出来ています。
新たな経験をしてみると何かしらの「気づき」があって、想像していた世界と違って見えてくるということがあるのです。

プレゼンも、ご縁があったらまずはやってみる。そこから自分が変わっていくということがあるのだと思います。
 

2023/04/27 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.287 プレゼンが上達する人は「頑固」である

コンサルティングで見違えるようにプレゼンが上達する人にはある共通の特徴があります。
それは「頑固な人」です。

これって意外ですよね。
一般的には「素直じゃないと、人は伸びない」と言われています。

でも「素直」とはそもそも何でしょう。ちなみに辞書にはこう書いています。
「飾り気がなくありのままである様子」
「従順で、人の言動を逆らわずに受け入れるさま」

「非を素直に認める」「忠告を素直に聞く」「行為を素直に受ける」とよく言います。
素直さは、どうやら「受け入れる」という要素があるようです。

でもちょっと考えてみて下さい。なんでも「受け入れる」人って、どうでしょうか?

「Aにしたらいいと、思いますよ」
「そうですね。確かに。Aにします」

「それ、ダメですよ」
「そうですか。早速やめるようにします」

(なんだか物足りない)という気がしませんか。
確かに素直です。でも他人の意見を右から左に受け入れ続ける「自分がない人」のようにも見えますよね。

こんな状況を、精神科医の土居健郎はこう表現しています。

「『自分がない』とは、『私は自分というものを持っていない』、『彼は自分というものを持っていない』など、自身の内面を反省的にとらえている自己意識のこと」

よく会議で「彼には、自分の意見がない」「彼は何をやりたいのか分からない」と言われる人がいます。
こんな人も「自分がない」状態に陥っています。

組織の中で「自分がある」状態にするには、勇気が必要です。
他人と対立したくない場合は尚更です。自分の意見を強く主張すると「あいつはKY」とか「あいつは頑固」と言われてしまいますよね。

人は様々な経験を蓄積しています。だから自分なりの持論や前提を持っています。
こう考えると、人は本来「頑固」なものなのです。
この頑固さが、その人の価値観を形作っています。

一方でこの頑固さという価値観は、何か大きな壁に直面して、価値観の限界に突き当たることがあります。
こんな時には、価値観そのものを大きく変えて行く必要もあります。

その時にこそ必要なのが「素直さ」です。
こう考えると人が成長するためには、頑固さを持ちつつ、相反する素直さも持ち続けることが、必要なのです。

最初の話しに戻りましょう。
コンサルティングで見違えるようにプレゼンが上達する人は、アドバイスを受け入れつつ、自分の意見を人前で通す頑固さを持つ人なのです。

2023/04/20 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.286 新しいことをすると成長する理由

「いままでずっとこのやり方でやってきた。だからこれでいいんだ」と言って、プレゼンのやり方を変えない人が多くおられます。

確かに、経験から確立したノウハウは安心感があります。でも、同じやり方ばかりでは成長が停滞してしまいます。

なぜなら、人の脳は新しいものを好む性質があるからです。脳科学者の茂木健一郎氏は「人の脳は100歳まで進化することができる」と言います。これが「オープンエンド」といわれるもので、脳は永遠に完成することがない構造になっているということです。

脳が進化するためには単純な条件があります。「新しいことをする」ことです。新しいことを好む脳に新しいことを提供し、新しいことを達成すれば、脳から「ドーパミン」という報酬物質が出ます。このドーパミンが脳の進化を促進するカギになるのです。

しかも、その「新しいこと」は結果が予測しにくい「不確実」なものほど良いのです。

2003年、ケンブリッジ大学のシュルツらのグループにより、不確実性とドーパミンの関係を調べた実験があります。猿に、スクリーンで様々な刺激を見せて、それぞれの刺激によって異なる確率でジュースがもらえるようにしたのです。刺激と確率は、

① 刺激Aが出ると100%確実にジュースがもらえる。

② 刺激Bが出ると50%の確率でジュースがもらえる。

としました。この実験でドーパミン細胞の活動を調べると、②50%の確率条件のほうが、刺激を見てから報酬がもらえるまで継続的な活動が続いたのです。

つまり、ジュースが確実にもらえると分かれば猿は安心し、ドーパミンの活動は下がります。一方、「ジュースがもらえるか、もらえないか分からない」という方が、より興奮して猿のドーパミンは活動的になったのです。

不確実なことにチャレンジするということは、そこから新しいことを学べるということです。特に経験を重ねた人は、体験や知識が多く蓄積されていて、「これをするとどうせ失敗する」「どうせ大したことはない」と決めつけてしまう傾向にあります。

ではどうすればよいでしょうか?

やり方をすぐに変えようとすると抵抗感があるかもしれません。まずは簡単にできることから始めると良いでしょう。

例えば、いつも演壇で話している人は、演壇から出て全身を見せて歩き回りながら話してみる。
いつもプレゼン資料を読み上げながら話している人は、内容を覚えて話してみる。
いつも質疑応答の時間をとらない人は質疑応答を行い、聴き手とコミュニケーションをとってみる。

知らないことや、気が進まないことでも、まずは行動してみることです。もしピンとこなければやめればよいのです。でも、行動してみれば意外に新しい発見があったりするものです。脳はもともと新しいものが好きですので、それをきっかけに新たな可能性が広がるかもしれません。

2023/04/13 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.285 プレゼンが成功する瞬間「ノウイング」

「しっかり準備しているのに思った通りのプレゼンができなくて失敗ばかり。どうしたらいいんでしょう」

こうして悩む方、多くおられます。
これは、自転車に乗るときと似ています。
私は、逆上がりもできず、跳び箱も跳べず、自転車にも乗れない、かなり鈍くさい子どもでした。

でも自転車の練習を続けているうちに、ある日突然乗れるようになったのです。
言葉にはならないけれども、「ああ、これだったんだ!」という不思議な体験。今でも鮮やかに思い出せます。

ひたすら実践して悩み、あるところで自分自身が新しくつかむ感覚。

これは知の「再創造」といわれます。「ノウイング」(knowing)とも言われます。
北海道大学大学院 経済学研究科教授・松尾睦氏はノウイングを以下のように説明しています。

私たちは結局、膝小僧をすりむきながら自分で自転車の乗り方を習得したのではなかったでしょうか。(中略)内省し、教訓を引き出すことが「ノウイング」にあたります。ノウイングをしていない人は、単に他者の知識を鵜呑みにしているだけで、「内省」や「教訓を引き出す」ステップをスキップしてしまっている人、つまり自分の頭で考えていない人です。
(松尾陸『職場が生きる 人が育つ「経験学習」入門』ダイヤモンド社2011年より)

このノウイングは、プレゼンでもあります。

たとえば、自分の声が自信を持って鳴り響きだしたとき。
あるいは、聴き手の反応が手に取るように感じられたとき。

ノウイングとは、何度も教えられて分からず、悩んだ末、しばらくたってから何かの拍子にその意味がわかるものです。

今分からなくても、出来なくても、1分後に分かるかもしれません。
明日分かるものかもしれません。
もしかしたら1ヶ月後かもしれません。

ですから諦めてはいけません。
淡々と学び続けていることで、ある瞬間に会得できるものなのです。

2023/04/05 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.284 良い資料を作るコツは、まず始めること

「発表資料が上手く作れない」
「内容の台本が書けない」

こうお悩みの方は多いかと思います。

世の中には上手なプレゼン資料が作れるようになるハウツー本が溢れています。

「メッセージは短くシンプルに」
「図表やグラフを入れすぎない」
「文字は大きく」
「結論から始める」

「なるほど」と思うものばかりです。
でも、これでいい資料が作れるかというと、それは全く別問題。
以前は、私もこれらの本を読みましたがなかなか上達しませんでした。

ではどうすれば良いのでしょうか。

それは、まず作業し始めることです。
多くの人は「時間がないし、速くパワポ資料を作らないと」と思いがちです。
でもこれではまずうまくいきません。

まずは始めるべきは、手書きのラフから。
必ずしも順番通り考える必要はありません。
冒頭のアイデアが出なければ、やりやすいところから始めれば良いのです。

これは文章を書く方法と同じです。
文章を書く究極のコツを、英語学者で評論家の渡部昇一氏はこう言います。

とにかく書き始めることだ。構想しているようなことは一枚目を書いたとたん飛び散ってしまうこともよくある

渡部氏は「書き始めるだけ」とおっしゃいます。
あれこれ構想している段階と、書き始める段階は、別次元というわけです。

作業を始める前に、考えを巡らせるばかりで時間が経ってしまう方、多いのではないでしょうか?
資料の一枚目を書き始めるまでが最も難しいのではないかと思います。

資料づくりが上手くなる究極のコツは、「まず思い切って、手書きで始めてしまうこと」。
最難関を乗り越えて手書きのラフで1枚目が書ければ半分以上は書けたようなものです。

まず、アウトプット。
これが大事なのです。

クックパッドで美味しい餃子の作り方を眺めているだけでは、美味しい餃子が作れませんよね。
まず実際に餃子を作ってみることです。これとまったく同じです。

資料作りのハウツー本を見ても、なかなか上手くなりません。
まずは、作業し始めましょう。

2023/03/30 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.283 時間をかけても良いプレゼン資料にならない理由

プレゼン資料を拝見して「いま一つだな」と感じる時があります。
一方で「これはいいプレゼン資料だ!」と思うこともあります。そんな資料は、話し手自身が時間をかけて作っていると
いうことが分かります。
ただ単に時間をかければよいわけではないので、注意が必要です。

英語学者で評論家の渡部昇一氏は、「知的時間で押さえておきたいことは、脳の働きと時間の関係です」と言います。
渡部氏は、英国の詩人・コールリッジの名詩「クラブ・カーン」が未完に終わっている理由を事例にあげて説明しています。
未完に終わっている理由は、コールリッジが作詞を始めて50行目にさしかかった時に突然の訪問者があったためです。客の対応をした後、コールリッジは机に戻りましたが、二度と詩のイメージが戻らず、51行目以降が書かれることはありませんでした。

渡部氏は「脳の働きと時間の関係は溶鉱炉と同じだ」と言います。

溶鉱炉は一度火を消すと大変なので火を消さないようにするといいますが、知的作業も同じで、頭のエンジンが暖まるのに約一、二時間、それからもう二、三時間中断されることなくその仕事を続けると、頭はますます冴えてきて、その仕事にとりかかった時には予想もしなかった展開や思いがけぬ閃きが次から次へと生まれてきます。このフィニッシュの頃が知的作業の最高の時間なのですが、その時間を引き連れてくるためには、絶対に途中で中断しないことなのです。

最も知的生産性が上がりやすい時間は、開始してから2時間以降です。
身体を使うような作業であれば、確かに休憩も良いでしょう。しかし頭のエンジンが暖まる前に知的作業をやめては、知的生産性は上がりません。本当の実力が発揮できるゴールデンタイムは1~2時間後。そこまで待てるか否かがカギです。

まとまった時間をとるのは難しいかもしれませんね。でも中断が入りにくい朝の時間帯であれば、ある程度の時間を確保することは可能です。こうして知的生産性を上げることができます。

つまり単に集中力が高くても、あるいは時間をかけるだけでも、知的生産性は高まりません。まずまとまった時間を確保し、中断せずに作業を続けることで、知的作業効率が上がって良いアウトプットにつながるのです。

よいプレゼン資料づくりに必要なのは、このような時間を創出することです。
これは話す練習をする以上にプレゼンの成功につながります。
プレゼンを控えている方はぜひ「中断しないまとまり時間」を確保して作成されることをおすすめします。

2023/03/23 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.282 良いホラは、命を救うこともある

イーロン・マスクはこんなミッションを掲げてスペースXという会社を創業して挑戦を続ける経営者です。

「火星に人類を送り込み、人類を救う」

このミッションを聞いたとき、私は「とんでもない大ボラを吹く人が現れた」と思いました。
しかしイーロン・マスクはこのミッションを真剣に追求し続けています。
いまやスペースX社は、NASAの宇宙ミッションには欠かせない会社になりました。

まったくやる気もないのに、ウソをつくのはもちろん論外です。
でも時と場合によっては、本気で信じるのであれば「ホラ」を吹くことは大事なことなのです。
人が動くか動かないか、更に言うと、ビジネスで生き残れるか生き残れないかは、ちょっとしたことで大きく差がつくからです。

ここからご紹介するのは、実際にあったお話しです。

ハンガリー軍の小部隊が、軍事機動演習中にアルプス山脈で猛吹雪にあい遭難してしまいました。隊員たちは死の恐怖に怯えて立ち往生してしまいました。すると1人の隊員が、ポケットから地図を見つけました。
「これで山を降りられる」全員が下山を決意し、行動を始めました。そして地図を見ながら帰り道を見つけ、無事下山に成功したのです。
しかし隊員たちの帰還を待っていた上官は、その地図を見て驚きました。
それは、アルプスの地図ではなく、ピレネー山脈の地図だったのです。

なぜまったく別の地図なのに、彼らは全員助かったのでしょうか。

命の危険が迫るパニック状態の中で地図を見つけて、まず全員がこう思ったのです。
「下山できる」→「よかった、命が助かるぞ」そしてこのストーリーを全員で共有しました。
その結果、下山する行動を開始できました。
こうして具体的な行動を開始した結果、一致団結して危機を脱したのです。
もし下山を決意せずに立ち往生したまま行動しなければ、全員遭難して命は助からなかったでしょう。

これは、社会心理学者カール・ワイクが著書「センスメーキ
ング インオーガニゼーションズ」で紹介したエピソードで
す。
ワイクはこの事例を「センスメーキング理論」で説明してい
ます。

センスメーキング理論は「意味をつくり、共有すれば、チームの方向性が与えられる」という考え方です。ここで必要なのは、皆が納得して共感できる、魅力的な「優れた物語」です。

ワイクはこう述べています。
「『優れた物語』には、正確性があればそれにこしたことはない。しかし正確性は必ずしも必要ではない」

人は感情で動きます。
自分が聞いた物語に共感することで、「単に聞いた話」が「自分ごと」となり、行動に変わるのです。

正確性は必ずしも必要ではないとはいえ「ウソ」は御法度です。
不祥事会見で、知っていても「知らなかった」というトップがいます。これは保身のためにごまかす大ウソですよね。

良いホラは、魅力的な物語で人を動かし、組織を成長させます。皆を幸せにするために、リーダーが自らを追い込み、腹を括らせるものでもあります。良いホラは、大きなビジョンなのです。だからホラは大きければ大きいほど良いのです。

イーロン・マスクほどのホラは難しいかもしれません。しかし「自分は仕事でこんなことを実現したい」という思いは、誰でも持っているはずです。
次のプレゼンではそんな大胆に高い目標を語ってみるのもいいかもしれません。

価値観や理念が「優れた物語」によって共有され、納得されれば、人は共感して行動し始めるのです。

2023/03/15 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.281 マスクをつけても表情豊かに伝わる方法

まだまだマスクが取りにくい状況ですよね。
そこで、こんなご質問をいただくことがよくあります。

「対面でマスクを付けたままで、表情豊かに伝えるにはどうしたら良いでしょうか?」

マスクはどうしても声がこもりがちになります。ですので、少し頑張って2割増しに声を前に飛ばすように意識してください。

また、マスクをしても相手の表情が伝わってくる経験をされたことはありませんでしょうか?
そういう方はたいてい表情が豊かです。
つまりマスクをしている時は、ややオーバーな位に表情を作らないと伝わらない、と言うことです。

ですので顔全体の表情筋を鍛えて笑顔のトレーニングをしておけば、マスクをしていても表情が伝わりやすくなります。
今日は直前にするだけでも効果があって誰でも笑顔になれるトレーニングをお伝えしましょう。

【口角アップスペシャル】(1分)

(1)唇をぴったりと閉じ、口角をあげるように笑う。

(2)左右の人差し指を立てて、口角をトントンと軽くたたく

(3)唇の両端に1本ずつストローをくわえ、出来たてのフラペチーノを圧をかけて吸い込むようなつもりで、口角が少し痛くなるくらいに緊張感を持たせる

(4)唇の両端に1センチくらい離して左右の人差し指を立て、口角を持ち上げるイメージで指をゆっくりとあげる。ゆっくり20数える。

これで口角が上がり笑顔が出やすくなります。

さらにマスクをしているときは、表情だけに頼らずに、手振りを加えた表現をするのもオススメです。

2023/03/09 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika