不祥事会見は、ある日突然やってくる

不祥事会見、増えていますよね。
つい先日の8月3日にも、日野自動車の謝罪会見がありました。

日野自動車のエンジン不正は2003年以前から長期間にわたって行われていたことが明らかになりました。
記者との質疑応答で、小木曽社長は「経営は直接関与はないが責任がある。失敗を認めて共有し、職場で何が起きているのかを確認すべきだった」と答えています。これはつまり、経営トップが「何があったのか、全く知らなかった」ということです。

多くの謝罪会見に共通するのは、経営トップが「知らなかった」という点です。これは理由があります。現代の日本企業の不正の多くが、外部の告発で不正が発覚するからです。

不正発覚には、「社内」「行政機関」「報道機関」の3パターンがあります。
しかし社内の内部通報システムは機能不全に陥っているのが現実です。
内部通報者が保護されやすい仕組みがあっても、不祥事が多発する企業ほど、通報者名がいつの間にか漏洩し、内部通報が途中でもみ消されがちです。
社内通報が機能しないので、不正発覚の多くは外部経由になります。
この結果、経営トップは突然不正を社外から知らされ、対応が後手に回り、騒ぎが大きくなるのです。

そんな中で見事だったのが、KDDIの大規模通信障害の謝罪会見でした。
問題が発生して次の日の午前に行われた謝罪会見では、高橋社長は、事実関係・影響の及ぶ範囲・原因・時系列での対応・再発防止策まで一人で説明しました。
リスクマネジメントの視点で高橋社長の会見は高く評価できます。

数年前、私は社長就任直後の高橋社長の会見を取材したことがあります。その頃から、技術的な知識の深さに加えて、分かりやすい説明とプレゼン技術の高さが強く印象に残っています。高橋社長の見事な謝罪会見は、この日々の積み重ねの賜物です。

謝罪会見では、ほとんどのトップは冒頭で謝罪をした後、説明を担当役員に任せます。
残念ながら日本の多くの経営トップは説明が苦手。大事な謝罪会見で安心感を与えることが出来ていません。

「その日」は突然やってきます。
説明の練習をする時間はありません。
経営トップは、普段から「その日」に備えて準備しておくことが必要だということを、KDDI高橋社長の謝罪会見は教えてくれていると思います。

2022/08/16 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika