「多大なご迷惑をおかけし、深くおわび申し上げます」
7月3日午前。KDDI高橋誠社長が都内で記者会見し、深々と頭を下げました。
7月2日未明に発生した大規模な通信障害に対する謝罪会見でした。
私は、2018年に高橋社長の会見を取材したことがあります。当時は業界有名人の田中孝司社長から突如トップの襷を引き継いだばかり。しかし堂々としたプレゼンや、メディアとも和気藹々とコミュニケーションしていた姿が印象的でした。
今回の謝罪会見は、現時点でベストな会見だったと考えます。特に良かった点が、下記2点です。
①問題発生から会見までのスピード
7月2日深夜1時35分に問題が発生。25分後の午前2時に社長に報告が届き、すぐに事故対策本部を立ち上げ。問題発生30分以内でトップに報告が届くのは、リスクマネジメントの仕組みがしっかりと動いています。
そして障害の最中の翌日午前11時に、会見を行いました。
会見では記者から「復旧前の会見は珍しい」との質問がありました。高橋社長は「影響範囲が広い。社長からいち早く伝えた方がいいと判断した。復旧対応中でまだ詳細を分析できていない。最終的な結果については改めてお伝えする」と答え、迅速性を重視した判断を行ったのです。
②分かりやすさと正確性・ストーリー性ある説明
記者会見で大事なことは、記者に正しく理解をしてもらった上で、できる限りありのまま報道してもらうこと。
高橋社長は事実確認した上で、「事象の概要」→「事象による影響」→「事象の原因」→「一次処置対応状況を時系列で説明」→「検討している再発防止策」などを、分かりやすくプレゼン資料にまとめて、一人で説明しました。技術者出身とはいえ、ここまで全ての状況を詳細に把握した上で説明するのは、簡単なことではありません。会見後、SNSでは高橋社長の評価は急上昇しました。
「この社長すごい。1人で説明し、質疑応答している。ちゃんと把握して話してる。日本の企業でこれだけできる社長は、どれほどいるのだろうか」
「技術面でも誰のサポートも受けずすらすら回答してるし、障害発生からの流れも全て把握してて正に上に立つ人って印象」
「引責辞任なんて、古臭い変な慣習。あれほど能力の高い経営者は珍しい、大切にした方がいい。どうか、やめないでくれ、高橋社長」
謝罪会見で評価を上げるトップ、なかなかお目にかかれません。隠し事をせずにあるがまま、分かりやすい説明を心がける姿勢から誠実さが伝わり、信頼感が上がったのです。
今後、今回の通信障害の調査やヒアリングも進み、第二回目、第三回目の記者会見も行われると思います。人間ですから、間違うことはあります。しかし有事においては、何をさしおいても初期対応を迅速に実施し、誠実・オープンに行うことであると、KDDIの通信障害の事例は教えてくれます。