「失敗こそ財産」と信じているキングジム宮本社長のトッププレゼン

「失敗したらどうしよう」
「失敗したら責任をとらされるかもしれない」

そう考えると、仕事でもプレゼンでも萎縮してしまいそうです。でも人間ですから常に完璧にはいきません。特に、新しいことにチャレンジしようとすれば失敗はつきものです。

最近、デモで失敗しても堂々と乗り切ったプレゼンを取材してきました。

キングジムの宮本彰社長です。キングジムは、「キングファイル」「テプラ」「ポメラ」のように、ニッチな「やってそうでやってない」市場でのシェアをとるのがうまい会社です。

この日は、対話型翻訳機「ワールドスピーク」の発表会でした。プレゼンのデモでは、翻訳機の誤訳や発音ミスが続いたのですが、宮本社長はまったく動じません。それどころか質疑応答で突っ込まれると、満面の笑みで「まだまだ完成されていません」「これからです!」「お客さんの声を聞きながらやっていくんです!」と、腹の底から言い切り自信満々でした。

宮本社長は、「10個に1個成功すればいい。ある意味失敗するのは当たり前、売れないことに慣れている。売れないことは恥ずかしくない。良い勉強をしたということ」と言い続ける真のイノベーターです。

イノベーターは「未熟な技術にこそ可能性がある」と考えます。未熟な技術は、大きく成長していく可能性があるからです。スマホカメラは登場した頃は未熟な技術で、「誰もがオモチャだ」と思っていました。しかし急速に技術が成長して、いつのまにかコンパクトデジカメを駆逐してしたったのは、その典型的な例です。

ここで大切なのは、市場が立ち上がろうとしている時にいち早く参入すること。なぜなら誰も勝者がいない成長期に参入して、未熟な技術を高めていけば、市場の勝者になる可能性が大きくなります。逆に市場が立ち上がってから参入すると、なかなか勝てません。

今回発表されたワールドスピークは、すでに競合の「ポケトーク」がヒットしている中での参入でした。しかし、宮本社長は「翻訳機市場への参入という形ではあるが、先行するポケットタイプとはだいぶ違う。本格的な法人向けのサービスとして差別化できている」と言い切ったのです。

だから宮本社長は、プレゼンのデモで失敗しても全く気にしません。そして社員さんたちは、失敗しても嬉しそうに笑っているのです。これは数々の失敗を乗り越えてきたからこそ培われてきたキングジムの企業文化でもあります。

それでは、宮本社長の「どんな失敗も乗り切るコツ3点」をお伝えしましょう。

その1:常にワクワクしている目
目は心の窓と言われます。いつも新しい発明・発見に興奮し高揚している目。それが周囲にも伝わり、やる気になるのです。

その2:会心の笑顔
まるで打者がホームラン打ったときのような笑顔です。この笑顔で空気が明るくなります。

その3:「これからです」
イノベーターの真骨頂。どんなときでも、自信を持って「これからです」「お客様の声を聞いてやっていくんです」と言い切ることで、乗り切れます。

宮本社長の記事はこちらに詳細が掲載されています。

広報会議10月号 キングジム宮本彰社長のプレゼン分析「企業文化を育むイノベーター」

もしご興味ありましたら、ぜひその豪快な失敗っぷりをご覧下さい。