発声トレーニングにおける腹式呼吸はやればやるほどダメになる

テレビを見ていましたら、サービス系のお仕事の研修場面が映し出されていました。
ちょうど発声のトレーニングをしていたのですが、お約束の「息を吸って〜、お腹をふくらまして〜、息をはいて〜、お腹をへこませて〜」を行っています。

腹式呼吸としては悪くないのですが、この方法では良い声は出るようにはなりません。
良い声を出そうと思ったら、お腹はへこましてはいけません。
張りっぱなしなのです

他にも、足に力をいれたり、腹筋運動をして頑張ったり、うるさいところで聞こえるように思い切り声を張り上げたりするようなトレーニングも、声帯に力みがいってしまい、良くありません。

声帯とは、なかなか思い通りに動いてくれない場所です。だからこそ無意識に行った間違った法からなかなか抜けられないのです。やればやるほど声帯に悪い癖がついてダメになります。
声帯はとてもデリケートですので、無理矢理大声を出したりすれば、すぐに疲労しますし、聞いているほうからすると、実際声は通らずうるさいだけで良い結果につながりません。

発声をするときは、横隔膜という肺の下にある呼吸をつかさどる筋肉だけが頑張るのであって、他はすべてリラックスさせたいのです。

それをするには、力を入れずに自然にまっすぐに立って、おへその下9センチあたりのお腹を張るだけ。

人は「リラックスしましょう!」と言われても、本当にリラックスさせることは大変難しいのです。
ただ、このへそ下9センチの場所を張るようにすると、横隔膜が使いやすくなり、身体の他の部分がリラックスやすくなります。

最近、大きな冷蔵庫から、巨大なプリンが出てくるCMがありますね?
お皿の上にプリンが乗っていてプルプルとしているあれです。
お腹はお皿で、身体はプリンになっているイメージです。

それを考えると、一般的な発声方法は、本当にいろいろなところが力みすぎていて、わざわざ悪い癖をつけているようなものです。
発声の悪い癖は一度身につくとなかなかとれません。

私も以前は、古い発声方法を習っていました。それが良いとばかりに、ひたすら信じてやっていたのですが、後になって悪い癖をとるのに長い時間かかってしまったのです。
最初からリラックスする発声方法を行っていれば、こんな時間の無駄はなかったと思います。

それでは、本日は、まず一番の基本である良い発声のための呼吸トレーニングをお伝え致しましょう。

この方法を行って、力まず下腹を張る感覚を覚えてくださいね。

プレッシャーのかかる場面だったら、もう少し頑張ってバンッと下腹を張るようにできると、気持ちも安定し、声もよくなって力を発揮できます。

(1)壁に背中をつけて立つ(座ってする場合は背もたれに背中をつけて)

(2)顎を下げて口を開ける。肩を上げずに、下腹を張りながら「はあっ」と大きく息を吸う。
(もしわからなければ誰かに軽く下腹を軽く押してもらい、それを張り返すつもりで行うとよい)

 ☆ポイント:下腹はしっかりと前に出て、さわるとパンと張っている。このとき、下腹を無理に出そうとして壁から背中が離れない 

(3)そのまま息を5秒とめる

 ☆ポイント:下腹は張ったまま。

(4)下腹を張りながら「はーっ!」と一気に息をはく。(そーっとはいてはだめです)

 ☆ポイント:息をはくとき喉で小さく「あ”っ」という言う音がしたら喉でとめているのでよくありません。「喉止め」しないコツは、お腹の頑張りに集中すること。喉の周辺がリラックスしやすくなります。いくら良い呼吸をしていても、「喉止め」をしている限り良い発声はできません。喉で音がしないようになるまで練習すること。
 
(5)(2)~(4)を何回か繰り返す。慣れてくればお腹を押してもらわなくてもできるようになります。息を吸っているときもはいているときも、出来るだけ下腹は「パン」と張った状態を維持するように。