ブログ「次世代トッププレゼン」

ブログ一覧

No.295 鳥取県・平井知事のリスクマネジメント

「断じて許すことができない」

6月15日、午後10時30分。
普段、とても温厚な鳥取県の平井伸治知事は、鳥取県庁の緊急会議で強い口調で言い切りました。

その3時間前。北朝鮮が発射した弾道ミサイルが日本のEEZ=排他的経済水域内に着弾したことを受け、即刻のメディアに向けての発言です。

「私どもの操業しているベニズワイガニのカニかご船、その操業水域で着弾したと考えられます。こういう所で安心して操業できるでしょうか。断固抗議しますし、政府も対策を取って頂きたい。憤りを持って強く抗議をしたいと思います

引用元:『山陰放送』「何か落ちた大きな音がした」北朝鮮ミサイル落下地点から約27キロで鳥取県の漁船操業中

私は2016年、同じ平井知事のメディア会見を取材しました。そのときの愛嬌たっぷりの振る舞いと得意のダジャレを連発している姿とは打って変わって、厳しい平井知事の政治家としての本質を見た思いでした。

「ダジャレ知事」として軟派な印象がある平井知事ですが、実は東大法学部卒→自治省(現・総務省)の官僚→全国最年少副知事を経て、選挙を戦って鳥取県知事に就任した、筋金入りの政治家です。
2007年の県知事就任直後には「机上の理論では100年経っても駄目だ」と鳥取県庁職員を一喝。変革に取り組み続けています。

平井知事の対応は、企業のリスクマネジメントにも大いに参考になります。

今回の平井知事のメディアの発信で良かった点は、何よりも問題発生からのスピード。

6月15日の午後7時30分に事案発生。
迅速に緊急会議を開く段取りを整えて、3時間後の午後10時30分にはメディアの前に立っていました。

加えて素晴らしかったのは、その場で、翌16日には県は漁の安全が確保されるように、国へ緊急の要請を行うことを明言した点です。

通常は「詳細を確実に確認してから」と考えて、発信を遅らせてしまうケースが多くあります。
しかし発信が遅れれば遅れるほど、県民の不安は増大します。

平井知事をつき動かしているのは、鳥取を豊かな素晴らしい県にしたいという政治家としての使命感です。
県民の生命がかかる有事で、何を差し置いても迅速に対応。誠実な行動を首尾一貫しています。

リスクマネジメントにおいても、使命感、目指すべきもの、想い、行動をシンプルに一致させることが、何よりも大切なのです。

2023/06/29 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.294 効果的なプレゼン資料の作り方

「ジョブズのような、写真メインで文字が少し、みたいな資料、かっこいいですよね。こんな感じのプレゼン資料を作るコツを知りたい」

このような質問を受けることがあります。
例えば、「プレゼンテーションZen」であるような、画面全体に美しい写真、巨大な文字と短いメッセージのみの資料はプレゼンの達人を思わせます。

最近拝見したプレゼンで気になることがありました。
その方の資料は、大きな写真の中心に1行、短くシンプルなメッセージのみが書かれている美しいチャートでした。
しかし後から資料を見たとき、何の話をしていたのか思い出せなかったのです。

確かにセンスの良い写真やシンプルなメッセージはプレゼンの説得力を上げてくれます。
しかし写真に力点を置くあまりメッセージを削りすぎると、本当に伝えたい事が伝わりにくくなります。

なぜなら人の見え方はバラバラだからです。
同じリンゴでも、赤く描く人もいれば、緑を使って描く人もいます。人の認知は同じではないので、写真の印象に委ねるとメッセージがぼやけてしまいます。

そこで必要なのが、最小限の研ぎ澄まされたメッセージを考え抜いて、資料に入れることです。

ポイントは2つあります。

1つ目は、そのチャートで伝えたいインサイト(洞察)を書く。
相手に伝えたいインサイトを書かないと、そのチャートで何を言いたいのか分かり難くなります。
ただし文字をぎっしり書くのは見にくくなりますのでNG。研ぎ澄ましたメッセージに磨き抜くことです。

2つ目は、チャートのタイトルをつなぎ合わせると、ストーリーが浮かび上がってくること。
「見た目重視」で、ストーリーの流れと関係ないタイトルをつけているチャートが多く見られます。これはいただけません。そこで資料づくりの際に、全体をサムネイル表示にして、メッセージの流れが首尾一貫しているかを見ると、一目で確認しやすくなります。

プレゼンを控えている方は、ぜひこの2点を確認してみてください。

2023/06/15 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.293 パーパスを語ることの意味

「早く仕事に行きたい」「出勤が楽しみ」

このように思える職場なら、最高ですよね。
ということで今回も前回・前々回に引き続き、パーパスに関するお話です。

従業員60名のある歯科クリニックは、トップダウン経営で離職率が33%。
毎年従業員の1/3が離職するという職場でした。

しかし離職率は、なんと6%と大きく改善。
しかも、診療時間を短縮したにもかかわらず、業績は向上しました。
従業員の皆さんが「仕事に行きたい」と出社を楽しみにする会社に変身したのです。

ポイントは、パーパスです。

このクリニックは、2019年に従業員全員で話し合い、パーパスを決めました。
一人一人の従業員が、お互いに大事にしている価値観や存在価値を徹底的に話し合って決めたパーパスです。
ですから全員が納得しているのです。

現実には、全員がパーパスを話し合って決めるのは難しいかもしれません。

一方で、今の職場には既に何らかのパーパスの原石になる考え方があるかもしれません。
そこでそれをパーパスに見立てて、自分なりのエピソードを交えながらプレゼンで話してみることです。
良いパーパスは、なぜ自分が働くのか「働く意味」を明確にし、プレゼンに首尾一貫性をもたせてくれます。

調査によると、この5年間で転職先を選ぶ際にパーパスを重視するビジネスパーソンは2倍に増え、さらに年収よりもパーパスを優先する人は半数近くにのぼっています。

今の時代、パーパスを語ることは、仕事を語ることそのものでもあるのです。

◆引用記事
出勤が楽しみ」 高い離職率に苦しむクリニックの「働きたい改革」

2023/06/08 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.292 なぜJINS田中仁CEOの前橋プロジェクトに、人が集まるのか?

5月29日のテレビ東京「ワールドビジネスサテライト」で、大手メガネチェーン「JINS」のCEO、田中仁さんが出演していました。
田中さんは今、前橋市の再生に取り組んでいます。

前橋市商店街はかつて賑わっていましたが、現在は最盛期と比べての歩行者数は10分の1以下。「シャッター通り」となっていました。
前橋氏出身の田中さんは、こう話します。

「子供の頃、親に連れられて繁盛している商店街を歩いていた。活気に溢れていたあの頃の街を取り戻したい」

そして率先して商店街におしゃれなカフェやレストランを誘致。ホテルや美術館も作り、今、客足が戻ってきています。
さらに前橋市から起業家を育てるために、9年前に「群馬イノベーションスクール」を立ち上げて無料で起業のノウハウを伝えています。教室には大勢の受講生が集まり、卒業生は次々と起業しています。

短い番組でしたが、田中さんが目指すこと、言っていること、行動は、全て首尾一貫していることがよく伝わってきました。
そしてそんな田中さんの志に、多くの人たちが集まり、前橋が盛り上がろうとしています。

田中さんは、相手が共感するWHY=大義名分を出発点に、行動し、語っています。
そして人は「なぜそれをしなければならないのか」という大義名分を聞くと、心が動き、自分ごとに置き換えて考えるようになります。

逆にうまく伝わらない人の多くは、大義名分をあまり重視しません。
そして「大事なのは中身だ」と考えて、製品やプロジェクトの説明、またはハウツーから話し始めてしまいます。
でもその結果、多くの人からスルーされてしまいます。

皆さんも次のプレゼンではぜひWHYを語っていただきたいと思います。

2023/06/01 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika

No.291 パーパスをプレゼンで語る理由

先週のメルマガで、パーパスについて書きました。その続きです。

会見でパーパスを語る企業が増えてきました。
パーパスは、企業の本質を表すものです。
新商品や新サービスの発表会見で、会社のパーパスもあわせて語ることで、その企業が何をしたいのか、そしてなぜその新商品・新サービスなのかが、メディアにストレートに伝わります。

そして良いパーパスは、トップだけではなく一般社員さんが語ることでも大きな効果を発揮します。

パタゴニアのメディア会見を取材したときのことです。
試食会でオーガニック食品が提供されました。しかし価格は一般的な商品よりも高額です。
スタッフにその理由を尋ねると「はい。高いんです。私たちは環境を再生する農業や漁業をサポートしていますからね」と、自信を持って説明してくれたのが印象に残っています。

パタゴニアは「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」と宣言しています。
社員さん一人一人がパーパスの内容に腹落ちしているので、何を聞かれてもぶれることがないのです。

しかし実際には、せっかく良いパーパスを作ってもトップだけが語っている企業が多いように感じます。

パーパスは、トップが語るためのものではありません。
企業の関係者全員のものです。

ぜひあなたも、御社のパーパスをプレゼンの内容に入れ込んで語ってみてはいかがでしょうか?

2023/05/25 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika