お腹を張りながら息をはくことで声がよくなり力も発揮できる

今私が皆さんにお伝えしているボイストレーニングの方法は、自分自身が初めてボイストレーニングを習ったときと違っています。

ここ数年、外に勉強に行ったり、新しく開発したりしたものを、私の経験からできるだけわかりやすくアレンジしてお伝えしているものです。

私はこれを「次世代ボイストレーニング」と呼んでいます。

昔は、良い声を出すための「腹式呼吸」は、お腹をへこまして息をはいて,お腹を膨らませて息をはく、という方法を教えてもらいました。しかし、この方法でトレーニングしても、健康には良いですが、お腹をへこましては声は充実してきません。

次世代ボイストレーニングの呼吸方法によって出す良い声のためには、「お腹、特にへそ下9センチの場所を意識して下腹ををふくらませながら息をはく」ということを練習してもらいます。

これが出来るようになると、声が力に満ちて、身体全体を楽器のように響かせながら声を出せるようになります。

小さな声でも、大きな声でも、同じように豊かな響く声になるので、1000人のホールでもマイクなしで隅々まで声が届くようになるのです。

これは狭い会議室のようなところでも同じです。
「狭い部屋だから声を小さくしよう」と思ってしまうと、モゴモゴと声が響かなくなり、聞いている方が不安になってしまい、説得力が落ちてしまうのです。
小さな声でも、豊かに響かせることが信頼感には必要なのです。

また、お腹を張って声を出すということは、横隔膜も使えている証拠になりますから、息が良く流れます。

息が流れると滑舌も良くなります

滑舌は、主に子音のさばき方です。子音をさばくには、舌が口の中をこすったり、たたいたりしながら発音します。
息によって舌や口の中の抵抗感が増し、舌のさばきが改善されるので、自然に滑舌が良くなるというわけです。
[m]や[p]など、子音で唇を閉じたとしても、息が流れていなければ声は聞こえなくなります。

ただ、「お腹をはって息をはく」ということの意識は、ほとんどの方は出来ていません。
慣れればすぐに出来るものなので、ボイストレーニングをするならぜひここからスタートしてください。

先日、ラジオで元Jリーガーでスポーツジャーナリストの中西哲生さんの番組に出演させていただきました。
そのとき、中西さんも「サッカーでゴールするときは、今練習した発声のお腹の使い方と同じです」とおっしゃっていました。
「子供達にもサッカーを教えていますが、そのときも、いかに内蔵を張るか、という方法を伝えています。」と真剣な表情でお話くださいましたのが印象に残っています。

「息をはきながらお腹を張る」ということを覚えると、声だけではなく、何かのとき、力を最大限に発揮することができるのです。