ある経営者から、こんなお悩みを伺いました。
「私、田舎出身で、方言の訛りがちょっと恥ずかしいんですよね。訛りをなくそうと思っているんですけどね」
このように、標準語で話さないといけないのではないかと思っているトップは少なくありません。
確かにビジネスでは相手に伝えることが大切なので、わかりやすい標準語で話すことは必要です。しかし訛りまでなくす必要はありません。むしろ訛りは、その人ならではの武器になるのです。
2017年5月25日、マンダリンオリエンタル東京で行われた、カルビーの「越境EC事業に関する記者会見」を取材で、松本晃 会長兼CEOのお話しを伺いました。
プレゼンと質疑応答でも、”松本節”本音トークが炸裂していました。
「中国でフルグラに勝てるライバル商品は一つもない」
「中国のECと言われても、IT音痴なのでよく分からない。でもアリババさんの話は、なんとなくワクワクする」
「他に興味がある会社もあるが、アリババと比較するとマイナーだ」
「ポテトチップスはかさばる。運んでたらキリない。ほとんど運賃」
松本会長は京都ご出身。言葉は標準語ですが、アクセントは京都弁です。大胆な発言も、はんなりとした京都弁がクッションになり、不思議とすんなり受け容れられてしまうのです。
(詳しくは、宣伝会議デジタルマガジンの記事『カルビー松本晃会長のプレゼン分析「大胆な発言を裏打ちする緻密な戦略」』をご覧下さい)
実は、「方言こそプレゼンの強み」なのです。
聞き手とのハードルを一気に下げて、緊張感を和らげ、暖かみを使えますし、その人ならではの人間性や人柄が伝わってくるからです。
しかしいくら方言がいいと言っても、方言のアクセントを出身者でない人が真似した途端に、バレてしまいます。つまり、方言こそ、出身者ならではの強みになるのです。
「奇跡のりんご」で有名な、青森県の木村秋則さんをご存じでしょうか?世界で初めて無農薬・無施肥のリンゴの栽培に成功した方です。
この方のお話しを聞きに行ったことがあります。
「これならすっぱい(失敗)するごとなぐ、あんすん(安心)」
木村さんの暖かいお人柄が伝わってきて、会場が柔らかい空気感に包まれました。
方言を封印せず、自らの強みとして使うことで、更に良いプレゼンになるのです。
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