講演後の質問で多いのが、「ドキドキして仕方ないんですけど…」「人前に出ると硬くなってしまい思うように話せない」という、あがり症に関するものです。
どんな人でも大なり小なり緊張するものです。緊張しない方が逆に問題です。ただ、緊張のために大事なプレゼンで実力が発揮できないのは、話したご本人はもちろんのこと、聴衆にとっても残念なことですね。
今回は、この「何とかしたい、あがり症」についてご紹介します。
こう言うと「まさか〜」と驚かれるのですが、実は私も、あがり症です。
そのため、音大出身にもかかわらず、子どもの頃から人前でピアノを弾くのが苦痛でした。ピアノは特に大変です。ピアノは音が多く、しかも全て暗譜という決まりがあり、楽譜を舞台に持ち込めません。すべて記憶して一人で20分〜30分は弾き続けなくてはいけないのです。アドリブも出来ません。そして、お客さんの8割が曲に詳しい人ばかりで、ちょっとカスったり、音を外しただけでもすぐに分かってしまいます。間違えたときの、瞬時に起こる「あ〜あ…」という空気感は、正面を向いていなくても強く感じてしまうほどです。
ただでさえあがり症の上、このプレッシャーは、大変厳しいものでした。
ですから、子どものときから「このあがり症を何とかできないものか」と、何十年も考え、工夫し続けてきたのです。「聴衆をカボチャと思え」とか、「手に『人』と書いて飲め」とか、「縁起かつぎ」とか、ありとあらゆるものを試しました。よくある「ぜったい治るあがり症」とか、「スポーツで実力を発揮するメンタルづくり」などの本もたくさん読みました。
…しかし全然効きませんでした。
ただ、長い年月、人前でもがき苦しみ、涙ぐましい工夫し続けるうちに、自分なりに少しずつ、緊張への対処方法が分かってきたのです。
そして、このピアノでの緊張対策は、プレゼンにも簡単に応用できるものでした。
今日は「あがり症対策」の第一弾として、緊張を克服し、実力を発揮するための、プレゼンの練習方法のポイントをお伝えいたしましょう。
緊張が激しい人ほど、リハーサル回数を重ねておけば心配ありません。
しかし、どうしても忙しいというのであれば、前の日に一回でも良いので通してスマホで録画し、自分で見て確認しましょう。約束しますが、本番でガタガタになることはありません。極度に緊張するという方の多くは、この録画の確認をしていないのです。
ただ、リハーサルをしていても、やはり怖いものです
乗り越えるための大事なポイントがあります。緊張には、ピークというものがあります。最初から最後まで、常に強いレベルで緊張し続けるということはありません。
緊張が最高潮に達するのはどこかでしょうか。
それはプレゼン冒頭です。
本番で、最初の3分を確実に乗り切ることです。
だから、他がそれほど上手に出来なくとも、最初の3分だけは、何度も何度も練習しておきましょう。10回続けて完璧に話せるまで練習しておくことです。
この3分を失敗すると、取り戻すのは最後まで困難を極めます。
逆に言うと、この3分さえ成功させれば、全体はほぼ成功すると言っても良いと思います。
最初の3分を何とか乗り越えれば、その後は少しずつ極度な緊張からは解放され、緊張が心地よい集中力に変わっていくことが感じられるようになっていきます。