人前で緊張してしまって辛い思いをしている方、多くおられるのではないでしょうか。
最近、私が講演した「緊張しても話せる面接セミナー」で、下記メッセージをいただきました。
「私は人前で話すのが得意で、よく周りから『緊張してなさそうだね』と言われます。しかし、話し出す前はお腹を下し、字が書けないくらい緊張してしまいます。でも、始まってしまえば、たとえミスってもなんとかなっていました。私は場数を踏んで、やっとこの形ができるようになりました。でもなぜ本番前に緊張してしまうのか不思議でした。今回の講演で『緊張するのはいいこと』だとわかり、ポジティブになれました」
他の人からは「人前で話すのが得意だ」と思われて、緊張してなさそうに見えるのに、お腹を下し、手が震えて字が書けないくらい緊張している…。こんな方、実は意外に多いのです。「才能がある」と言われているような人たちにもしばしばこんな方が見られます。
私の知り合いでも、プレゼン本番前は落ち着きがなくなり、トイレを往復して、リハーサルの出来はイマイチ、でも本番が始まると凄いプレゼンを成し遂げる、という人がいます。聴き手の皆さんは、その人の控え室の姿を知りません。だから話す姿を見て「プレゼンの名手」と思っています。
彼らは「しっかりと緊張をしている」のです。
人間には自律神経があります。自律神経には2種類あり、活発な活動を行うときに働く交感神経と、リラックスしたときに働く副交感神経があります。
緊張は交感神経が活発になった状態です。交感神経は、アドレナリンを分泌させて、血中をアドレナリンが巡ります。アドレナリンは血糖量を増やし、心拍と血圧が上昇します。さらに、副腎皮質刺激ホルモンの分泌が増加し、副腎皮質から糖質コルチコイドが分泌され、身体を動かすエネルギー源の生成を促進し、血流を増加させます。
だから緊張すると心臓がドキドキして落ち着きがなくなり、汗が出たり、顔が赤くなったりするのです。
言い換えれば、人は緊張することで「戦闘開始態勢」が整います。「いざ」という時に、意志とは関係なく緊張するのは、人が太古の昔から獣や敵と闘って生き延びてきたDNAの中に組み込まれている反応なのです。
そして激しく緊張をしていても、緊張を活かす方法がわかれば、人は本来持っている潜在力を呼び起こすことができます。
緊張を否定する必要はありません。
緊張は最高のパフォーマンスを発揮するための味方であり、大きな武器なのです。
大事なプレゼンや面接の前に緊張しそうになったら、ぜひこのことを思い出してください。
【参考資料】
久谷眞理子(2016)『「生物基礎」の授業をとおして伝えたいこと』2016年3月 研究紀要 第11集 P41-56