「自然体」の川上元ドワンゴ会長のトッププレゼンから感じたこと

先週もお伝えしましたが川上量生さんがドワンゴの会長を退任されました。

11月28日の会見にはユーザーも来場、客席の前半分がユーザー、後ろ半分が記者席という配置になっていて、「ユーザーファースト」の姿勢を前面に押し出していました。

当日、各席にはノートPCを用意して会見をニコニコ生放送で流し、ユーザーとの対話を「見える化」していました。しかし、新サービスが予定通り動かない状態になり、ユーザーの怒りが爆発。「ニコ動」には罵詈雑言の嵐が流れてしまったのです。

そのとき、川上さんは質疑応答も延長し、ユーザーの声を聞き届けようと一生懸命でした。

多くの企業は、今回と同じ状況に陥ったら、トップを守ろうとして、質疑を早めに打ち切ることがほとんどです。この日も、取締役の夏野剛さんが「そろそろ時間ですので…」と切り出しました。しかし川上さんは「いや、続けましょう。全部聞きます」と即座に言い切り、ストップはかけませんでした。もし、ここで打ち切っていたら、顧客は口を閉ざし、黙って離れていくことをよく分かっていたのだと思います。川上さんの姿勢は「ユーザーファースト」を貫きました。

しかし、課題もありました。

川上会長は会社員時代、「どうしてもやりたいゲームがあったので、社長に提案して会社でゲームし放題にした」という根っからのゲーマーです。川上会長にとってユーザーは自分と同じ仲間なのかもしれません。会見で感じたのは、「自分のプライド」を捨てて、仲間に文句を言われながら一生懸命説明している、一人のゲーマーの姿でした。

そのため、話し方も、仲間に言い訳するような「あのー」「えーと」を多用する言葉使いが多くでていました。

どんなときでも自然体で態度を変えないのが川上さんの良いところ。しかし「ユーザーファースト」を優先しすぎ、ユーザーとの距離感が近くなり過ぎる危険性も感じました。結果、ユーザーは言いたい放題。それが増幅されてネット上も大炎上してしまったのです。

公式なトップ会見で、「あのー」「えーと」を多用しすぎると、決断力が弱い印象を与えてしまいます。シンプルな言葉で毅然と話すようにすれば、内容がストレートに伝わり、今回もここまで荒れることはなかったのではないでしょうか?

「いつも自然体」という川上さんの良さを活かしつつ、話し方も変えることで、もっといいトッププレゼンになったように思いました。

 

詳しくは宣伝会議デジタルマガジンにも掲載されています。

「退任したドワンゴ川上会長 あの『炎上』会見のプレゼン分析」

よろしければご覧ください。

 

 

 

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