No.296 原稿があっても感情を伝える方法

ある企業のメディア会見を取材したときのこと。

トップは冒頭から最後まで、明らかに他人が書いたと思われる文章を読み上げていました。
機械的に話しているだけ。感情が入っていません。言葉が素通りしていくように感じられ、そのトップが何をしたいのか伝わってきませんでした。
これでは人は動きません。なぜなら人は感情で動くからです。

「台本読み上げでも感情が伝わるように話せませんか?」

このような質問をいただくことがあります。
実際には訓練されたプロの役者は別ですが、普通の人が他人が書いた文章を読み上げても、なかなか感情が伝わらないものなのです。

しかし用意された文章でも、感情を伝える方法があります。
それは話し手本人が「書き換え」を行うことです。

ジェフ・ユナイテッド市原・千葉で、オシム監督の通訳を務めた間瀬秀一氏は、「サッカー選手である彼らが理解して、それをできるようにするまでが自分の成果なんだ」と考え、オシム監督の指示を自分なりに「書き換え」て選手に伝えていたそうです。
正確に訳すのではなく、伝える順番を変え、言葉の補足を施し、ときには出身である三重県の方言まで織り交ぜながら伝えたのです。
(参照元『週刊東洋経済 2023.7.1』「ニュースの核心」)

たとえば、誰かが書いたこんな文章があったとします。

「今期の業績は、おかげさまで目標を達成しました。皆様のご尽力に感謝いたします」

これを読むときに、自分の経験を交えてこう書き換えます。

「今期の業績、私は最後まで達成できるかハラハラしましたが…。最終日に○○社の大型案件を受注しましたね。おかげまで目標達成です。
皆さん、本当にありがとう。ご尽力、深く感謝します」

忙しいトップが文章をイチから作成して話すのは難しいでしょう。

しかし元原稿を自分なりに解釈し、「書き換え」を行えば、読み上げより何倍も感情が伝わりやすくなります。

マネジメントの王道は「人に動いていただくこと」。
ぜひ、原稿に手を入れて、ご自分の気持ちを伝えてみてください。

2023/07/06 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika