プレゼン技術をいくら高めても、説得力は上がりません

ニューヨーク証券取引所で、岸田首相が英語のスピーチを行いました。これに対してある有名コメンテーターがこう発言していました。

「説得力が弱い。プレゼン力を上げないとだめ。中曽根元首相はスピーチのとき分かりやすくフリップボードを使って説得力があった」

このコメンテーターは、パワポ資料の作り方やしゃべり方など、話し手のプレゼン技術の弱さを指摘しています。
では、本当にプレゼン技術を駆使すれば人を説得できるのでしょうか?

人は自分が納得しなければ行動しません。
つまり説得とは「(自分が)される」ものです。「(誰かが)する」ものではありません。

たとえば小さな会社で「自動掃除ロボットがほしい」と社長を説得するときのことを考えてみましょう。

「自動掃除ロボットはゴミがよくとれる」「世界最高性能」と言っても、社長は納得しませんよね。「今の掃除機じゃダメなの?」と言われて、そこでおしまいです。

「社長は定時退社を推進していますよね。自動お掃除ロボットにすれば時短になるので、定時退社に貢献できますよ」と言えば、社長は「いいね、買おうよ」と言いたくなります。

聴き手は納得すれば、喜んで行動するということです。

そのためには「大義名分=なぜこれをするのか」、つまり「WHYから話すこと」が何よりも重要なのです。
このWHYがないまま、しゃべり方の技術やパワポ資料の作り方をいくら向上させても、人は納得して行動しないのです。

最近、巷でいわれるようになった「パーパス」も、「会社がなぜ存在するのか」というWHYそのものです。

ユニチャームの高原豪久社長は「パーパスは『腹落ち』だ」と語っています。

もし本当に納得し、共感していたら、社員はパーパスの実現に向けてあらゆる機会を活かして、他者から求められる以上の努力をするはずです。上司に言われたからやるのではなく、みずからがそれを機会としてとらえて挑戦するのです。ですから、リーダーは部下から「説得された」と思われないように、むしろ部下が「納得した」と思えるように、何ができるのかを考えなくてはなりません。パーパスを「腹落ち」させることが何より重要なのです。
(「ハーバード・ビジネスレビュー 2022年6月号」より引用)

リーダーが大義名分である「WHY」から話していくことで、聴き手は「説得され」「納得して」行動し始めるのです。

2022/09/28 | カテゴリー : 未分類 | 投稿者 : nagaichika