山本太郎は、非顧客層を狙ってプレゼンを行い、成功させた

戦略とプレゼンは一心同体です。
戦略を実行するには、人々に動いていただく必要があります。
プレゼンは人々に動いていただくための大きな手段です。
しかしいい戦略を立てても、プレゼンがダメだと、戦略は上手く実行できません。

れいわ新選組代表山本太郎氏は、2019年7月、第25回参議院議員通常選挙において、その卓越したプレゼン力から「れいわフィーバー」「れいわ旋風」を巻き起こし、一気に注目される存在となりました。

しかし、山本氏が注目された理由はプレゼン力だけではありません。したたかな戦略を持ち、戦略とプレゼンがガッチリかみ合っているのです。
(※なお、本日のコラムはあくまでプレゼンの観点での分析であり、筆者の政治的な信条とはまったく関係がありません)

実は山本氏の戦略は、政界の「ブルーオーシャン」を狙っています。
激しく競争する市場を、サメがお互いに食い合い海が真っ赤な血で染まる様子を例えてレッドオーシャンと言います。
一方、競合のいない新しい市場は、食い合うサメもいないため真っ青な海。これをブルーオーシャンと言います。

ブルーオーシャン戦略で大事なポイントは、「非顧客層」の苦痛を解決することがポイントです。
この非顧客層には、3種類あります。
(1)潜在的非顧客層→ 仕方なく今の商品やサービスを使っている
(2)断固たる非顧客層→ 今の商品やサービスを、あえて「使わない」と決めている
(3)未開拓の非顧客層→ 今の商品やサービスを使うなんて考えたこともない

山本氏の場合、「選挙には必ず行く」という顧客層は捨て、非顧客層にターゲットを定めました。

山本氏が狙った非顧客層
(1)潜在的非顧客層→ 選挙に行くのは面倒だけど、行く
(2)断固たる非顧客層→ 選挙に行ってもどうせ変わらない。だから選挙には行かない
(3)未開拓の非顧客層→ 選挙に行くの?考えたこともない。

そしてこの非顧客層を徹底的にプレゼンで攻めました。

ここでプレゼンの大事なメッセージとなるのが、次の三点です。

①非顧客層の苦痛を解決するメッセージを訴求すること
徹底的に弱者の立場に立って、「あなたたちは搾取されている」「力を持てばできる」ということを叫び続けました。

②本気を示すこと
「このままでは国が壊れていく。自分のキャリアを捨てて、自由党を出た。ここに来るのも数百万円の借金を負っている」と訴えました。

③自分の勝てる土俵で戦う
山本氏の恐るべしはその計算の高さ。誰と勝負すれば確実に勝てるか計算して場を作っています。
街頭演説では、意見する「ネット右翼」と言われる人たちを次々と論破し、聴衆が拍手喝采している様子がネット動画で拡散しました。世の中に味方を増やせるような相手を狙って議論を行っています。

周到に考え抜かれた戦略と、それを実現する手段としてプレゼンを駆使している様子を見ると、今後も力を得ていく可能性は高いと思います。

山本氏が話している内容が「良い・悪い」に関わらず、その戦略とプレゼンの方法論は、ビジネスパーソンが学ぶべきところは多いと思います。