大間違いの腹式呼吸「お腹をへこますと、いい声は出ません!」

Kids soccer penalty kick

世の中の腹式呼吸は、「おなかを凹ませろ」と言いますよね。
私も漠然とそう思っていました。
でも、初めて音楽でボイストレーニングを受けた時、とても驚きました。

「息を吐くときは、おなかをふくらましなさい」

と言われたからです。

お腹といっても、下腹のへそ下9㎝にある「丹田」という場所を思い切り張ります。息をはいたとき、何も意識しなければ自然にお腹はへこみます。へこむのに抵抗して思い切り張るのですから、今までの腹式呼吸と動作があべこべ。最初のうちは大変でした。しかし、あるとき、雷に打たれたようなショックを受けました。一生懸命お腹を張りながら発声しているうちに、いきなり信じられないような声が出たのです。

「火事場の馬鹿力」という言葉があります。火事になったとき、非力な女性が普段は持てないような重い箪笥を抱えて、家の外に持ち出す様子を言っているのですが、それと似た感覚を覚えました。

「自分にこんな力が眠っていたのか」

これが私の原体験でした。

以前、TOKYO FMのラジオ番組「クロノス」で、”元Jリーガーでスポーツジャーナリストの中西哲生さんを「ミラクルボイス」にするためにボイトレを行う”という企画コーナーに出演したときのことです。

「声を出すときにしっかり下腹を張ってくださいね」とアドバイスしながらボイストレーニングを行うと、中西さんは「これって、サッカーのシュートするときと同じですね」とおっしゃいます。

シュートの瞬間は最高の勝負所。一気に持てる力を存分に出し切るには、下腹を張るのだそうです。また、「ここぞ」というチャンスには、「力み」も来やすいものです。でも、下腹に力を込めてを張ると、逆に余分な力みが抜けて、リラックスしてプレーができるのだとか。中西さんはジュニアのサッカーチームも指導しているそうですが、いつも「下腹を張って、内臓をふくらますようにと指導している」とおっしゃっていました。

スポーツも声も同じなのですね。