プレゼン資料を拝見して「いま一つだな」と感じる時があります。
一方で「これはいいプレゼン資料だ!」と思うこともあります。そんな資料は、話し手自身が時間をかけて作っていると
いうことが分かります。
ただ単に時間をかければよいわけではないので、注意が必要です。
英語学者で評論家の渡部昇一氏は、「知的時間で押さえておきたいことは、脳の働きと時間の関係です」と言います。
渡部氏は、英国の詩人・コールリッジの名詩「クラブ・カーン」が未完に終わっている理由を事例にあげて説明しています。
未完に終わっている理由は、コールリッジが作詞を始めて50行目にさしかかった時に突然の訪問者があったためです。客の対応をした後、コールリッジは机に戻りましたが、二度と詩のイメージが戻らず、51行目以降が書かれることはありませんでした。
渡部氏は「脳の働きと時間の関係は溶鉱炉と同じだ」と言います。
溶鉱炉は一度火を消すと大変なので火を消さないようにするといいますが、知的作業も同じで、頭のエンジンが暖まるのに約一、二時間、それからもう二、三時間中断されることなくその仕事を続けると、頭はますます冴えてきて、その仕事にとりかかった時には予想もしなかった展開や思いがけぬ閃きが次から次へと生まれてきます。このフィニッシュの頃が知的作業の最高の時間なのですが、その時間を引き連れてくるためには、絶対に途中で中断しないことなのです。
最も知的生産性が上がりやすい時間は、開始してから2時間以降です。
身体を使うような作業であれば、確かに休憩も良いでしょう。しかし頭のエンジンが暖まる前に知的作業をやめては、知的生産性は上がりません。本当の実力が発揮できるゴールデンタイムは1~2時間後。そこまで待てるか否かがカギです。
まとまった時間をとるのは難しいかもしれませんね。でも中断が入りにくい朝の時間帯であれば、ある程度の時間を確保することは可能です。こうして知的生産性を上げることができます。
つまり単に集中力が高くても、あるいは時間をかけるだけでも、知的生産性は高まりません。まずまとまった時間を確保し、中断せずに作業を続けることで、知的作業効率が上がって良いアウトプットにつながるのです。
よいプレゼン資料づくりに必要なのは、このような時間を創出することです。
これは話す練習をする以上にプレゼンの成功につながります。
プレゼンを控えている方はぜひ「中断しないまとまり時間」を確保して作成されることをおすすめします。