先日、あるアパレル業界のトッププレゼンを聞いてきたときのことです。口をハキハキと開け、次世代を担う経営者らしい明るく若々しい声質で話していました。
ただ、こんなにハキハキ話しているのに、なぜか声が響かないのです。
大きな声を出そうと思ったら「口を大きくハキハキと開けなさい」と良く言われていますよね。
これは間違っていません。口を開けることは大事です。
ただし「開け方」が問題なのです。
あまり口を開けると声は響かず、かえって滑舌も悪くなってしまう、ということをほとんどの方が知らないまま一生懸命口を開けて話しています。
口が大きく開きすぎていると、唇を閉じて言う[m]や[p]などの子音で時間のロスがあったり、[t]や[d]、[n]などの子音を言うときに舌が上顎に届かず空振りしてしまい、大抵滑舌が悪くなってしまいます。
そして、あまり口がパクパクしているのは、ビジネスやフォーマルなシーンでは見た目がエレガントではありません。
声の良い人をよく見てみるとほとんど大口を開けていませんし、声で仕事をしている一流のボーカリストでさえ「ここぞ」という超高音以外はあまり開いていません。
それでは、良く響く声を出すためには、どうやって口を開けたら良いのでしょうか?
口ではなく、「口の中」を開けることです。
なぜでしょう?
口の中を良く響くホールや教会のようなものとイメージしてみてください。
よく響くホールや教会は天井が高いですよね。そして、クラシックの歌手はどんな音楽ホールでもたいていマイクなしで歌いますが、大きな野外劇場の場合はマイクを使います。それは、野外ホールでは音が散ってしまうからです。
口の中も同じです。
口の中を開ければ声は響きますが、口の前を開けすぎてしまうと口が野外劇場のようになり、声が散ってしまって響かなくなるのです。
むしろ、口をあまり開けずに息を多く送り込む方が、響く声になります。
開け方のポイントは、口の前はあまり開けずに、アゴを下げることです。口の中にゆで卵を入れているようなイメージでしょうか。そして、息をたくさん吸って強めに空気を送り込みます。
こうすると、声帯は疲労しませんし、頑張って声を張り上げなくても声はエレガントに響き、迫力と説得力を持って聴き手に届きます。専門的には、これを「共鳴」と言います。共鳴を使えるようになると、響きを自在にコントールし、表現豊かなプレゼンができるようになるのです。